ひとりごと ~Music & Life-Style~

HR/HMを中心としたCD感想、足を運んだライヴの感想をメインにひとりごとをブツブツつぶやくブログです。

4/19 CARCASS / Japan Tour 2024 at 渋谷TSUTAYA O-EAST

リヴァプールの残虐王・CARCASSのライヴに行ってきました。前日の東京公演がソールドアウトしたため、追加公演となった日に会社の有給を取って出陣!

 

ここ最近ヒジョ〜にめんどくせー案件の管理を任されており、残業しない日が消滅してしまっている状況。この日の前日なんか、いつも遅くまで残っているマネージャーよりも帰りが遅くなり、フロアに一人ポツンと置いてけぼりにされ、家に帰れたのは日付を越えてましたからね。なんなんだよマジで。いい加減にしろ。

 

そんなわけで、休みの日は12時近くまで爆睡。オフの渋谷を満喫するということもできず(タワーレコードディスクユニオンは行きました。ここに行くのは義務ですから)、開場時間過ぎにTSUTAYA O-EASTへ到着。この日はソールドはしていないものの、やはり一時代を築いたベテランはさすがの人気。ギチギチというほどではないものの、結構な客入りとなってました。

 

ワンドリンクのカシオレを片手に、フロア後方の真ん中あたりに位置どり。周りが長身の人が前に立っていて、下手側の方が若干遮られてはいるものの、全体的に見渡しやすくて視界良好。LOUD PARK 23の時はだいぶ距離があっただけに、しっかりと視認できるのはありがたいわい。

 

開演時間ちょうどくらいに暗転し、荘厳かつ不気味なSEと共にメンバーが登場。ブロンドの髪を靡かせ、ピチッとした白Tシャツに身を包んだビル・スティアーは、あまりアングラなデスメタルっぽさはないかも。シュッとしててカッコいいね。

 

そんなビルとは対照的に、デスメタルらしい汚らしさ(褒めてるつもり)を体現しているジェフ・ウォーカーは、左足を立てて腕を広げ、堂々とオーディエンスを扇動する。最初の「Buried Dreams」から、しわがれたデスヴォイスは近代的なエクストリームメタルではなく、あくまでデスメタルであることを主張するかのよう。

 

サウンドはなかなか良好で、ベースの音が少々聴こえにくく感じたものの、キモとなるツインギターの絡みに、疾走するドラム(スネアの音が抜けが良くて気持ちいい)がどんどんと押し寄せてくる様は、一種の快楽とも言える。

 

最新作『Torn Arteries』の雑誌ヘドバンのレビュー記事にて、現在のCARCASSの音楽性を「エクストリームハードロック」と形容していましたが、その言葉通り、彼らのサウンドからは、正統派HR/HMの要素が色濃く感じられますね。近代エクストリーム/ヘヴィミュージックとは異なる、メタルらしい響きのギターリフの連続が、ヘッドバンギング欲を刺激される。

 

特にツインギターのリードフレーズが良いんですよね。ARCH ENEMYのようなクッサクサのメロディアスさがあるわけでもないんですが、正統的なメタルの旨みが活きたメロディックフレーズ。アグレッシヴなリフの波と相まって、サウンドの快感度は非常に高い。ほぼノンストップで、明確な違いが見出しにくい楽曲のスタイルが続いているにも関わらず、不思議と飽きが来ないんですよ。

 

この無機質になりそうなエクストリームサウンドに、生々しい血流をドクドクと流し込むギター、これこそがCARCASSの強みですね。

 

ただ、正統派のメタル要素が感じられるとはいえ、ジェフのダークなデスヴォイスにより、質感はしっかりとデスメタルしている2曲目の「Kelly's Meat Emporium」で疾走すると、フロア前方にてモッシュピットが発生して、エクストリームなノリを存分に見せつけていました。

 

バンドのパフォーマンスは終始安定していましたが、近くで観るとわかるのが、メンバーのスタンスが結構フレンドリーだったこと。ジェフはモッシュピットを見下ろして満足そうに微笑み、曲間には大盤振る舞いという表現が相応しいほど、ペットボトルの水をフロアに投げ込んでいました(先日観たDES-KONTROLがビールを投げ込んでいたのでデジャヴを感じた)

 

ビルは終始冷静さを保っていながら、時折にこやかな笑顔を浮かべ、サポートギター(ジェームズ・ブラックフォードでいいのかな?)は、笑顔でサムズアップしてみせ、ダニエル・ワイルディングはバスドラ連打を繰り出しながらも、これまた笑顔。もともとアングラの極みみたいな出自のバンドが、こんなに笑ってていいんだ。

 

そんなバンドの姿により、聴こえるサウンドデスメタル以外の何物でもないのに、あんまり凶悪・キワモノのライヴには感じない。まあ会場が1000人以上入るデカバコだから、というのもあるのでしょうけど。

 

90分に渡り、時折ドラムソロを挟んだりはしたものの、そんな感じで起伏小さめにガンガンに進んでいったのですが、やはりというかなんというか、明らかなハイライトとなったのが「Heartwork」。この曲のツインリードギターの旋律はやはり極上で、メロディアスな泣きとはどういうものか、一発で会場にいる人全員に知らしめるようなメロディー。ここぞとばかりにヘッドバンギングしつつ、堪能させてもらいました。

 

 

MC控えめ、ほぼノンストップの強力なデスメタルの応酬、それでいてヘヴィメタルとしての普遍的カッコよさも潤沢にある、充実のライヴになったかと思います。LOUD PARKだけでは摂取しきれなかった分、しっかりと間近で味わいましたよ。

 

ちなみに、バックスクリーンに映ったイメージ映像は、過去作のジャケットをコラージュしたものになっていましたが、後半になってからLOUD PARKと同様に、死体写真と思しきグロテスクな画像が、うっす〜く見えるものになっていました。過去のライヴレポートとかを読むと、堂々と病気したチ◯ポを映してたらしいのですが、幸か不幸かそれはなかった(笑)

4/1 RADICAL MUSIC NETWORK SP春 at 新宿MARZ

前回のブログ8周年の記事で、「ブログ更新の頻度を上げていく」と書いてから2週間経ちました。

 

いや、違うんですよ。書こう書こうとは思っていたんですけどね。いつのまにやら仕事がどんどん溜まってて定時帰りが夢のまた夢になってですね。土日も何かとやることがあって、気づいたら夜になってたりですね。うん、まあそんな感じです。

 

さて、遡ること4月1日。

進級・進学、就職に転職と、生活がガラッと変わって、これからの未来への期待と不安に胸を膨らませている人も多い日でしょう。

 

そんな新年度スタートの日の僕が何をしていたのかというと、小っさいライブハウスにいました。

 

バスクから来たパンクバンド・DES-KONTROLのツアーの一環にもなっているライブイベント・RADICAL MUSIC NETWORK。会場は新宿MARZで、かつてEarthists.を観に行ったこともあるハコ。

 

イベント自体は20年以上の歴史があるらしいのですが、僕はこのライヴの開催告知があるまで知らず、さらにDES-KONTROLも名前すら知らなかったバンドです。

 

新年度のスタートでの日であり、さらに週初めの月曜日。できることなら疲れたくない日であるにも関わらず、何故わざわざ足を運んだのかというと、理由は簡単、BRAHMANが出演するからですね。

 

新宿MARZはキャパ300人という小バコで、アマチュアバンドの出演もあるような場所。そんな会場でBRAHMANが観られるなら、月曜だろうがなんだろうが行くっきゃないでしょう。仕事には着替え一式を持ち込んで、定時になるや否やさっさと退勤。足早に歌舞伎町へと向かいました。この時間帯の新宿は激混みですね〜。ここ最近残業ばっかりで、すっかり遅い時間に退勤することがデフォだったから、この人混みは久しく経験してなかったぜ。

 

さすがに開演時間には間に合いませんでしたが、15分ほどの遅刻で済む。最初はDJが異国の民謡ロック(?)を流していて、BRAHMANは19時ごろの出演になるらしい。今日持ってきた上着が、VIRGOwearworksの2万くらいするジャケットだったので(何でライヴの日にンな高えモン着てくんだよと自分でも思いました。何でだよ)、さすがにこれでモッシュピットに入るわけにはいかない。

 

しかし30個しかないコインロッカは当然全て使われている。ジャケットはなるべく汚したくないが、狭小なライヴハウスBRAHMANモッシュ無しはイヤだ。

 

そんなダイブルバインドに悩まされた僕は、2万のジャケットをパーカーみたいに腰に結びつけるという暴挙に出ることにしました。着たままよか幾分マシだろ!うん!ちゃんと洗濯しよ。

 

 

BRAHMAN

これまで異国情緒溢れるエスニックなポップスをDJがかけていたのですが、それが登場SEに切り替わると歓声が上がり、グイグイとオーディエンスが前に詰めかける。

 

メンバーが登場し、ドラムのシンバルをRONZIさんが静かに鳴らし始めると、すぐに最初にナンバーがわかる。これは「初期衝動」だ。

 

ズンズンと響くギターリフが刻まれ、シンガロングとTOSHI-LOWさんの魂のヴォーカルが繰り出されると、早速強烈なモッシュピットの登場。僕は少々後ろの方にいたので、発生したピットにもみくちゃになるということはなく、台風の目のちょうど後ろくらいの位置どり。そのためモッシュしつつも後ろからの圧迫がなく、比較的体の負担が小さい※(注)

(注)「あくまでBRAHMANのライヴとしては」「Hands and Feet 9のツアーと比べて相対的に」の意

 

そのため普段のBRAHMANのライヴに比べて、多少はステージ上を見る余裕が生まれるのですが、本日のライヴの仕上がりはややラフな感じか。スピードも音源に比べて遅めて、ギターの密度もちょっと軽め。良くも悪くも荒々しい印象。

 

まあこのバンドのライヴの丁寧さは求めちゃいないので、このくらいガツガツで全然問題なし。

 

今回は異国から来たバンドとの対バンということもあり、なんとなく予想していましたが、カバー曲が多いセットリスト。2曲目から「MIS 16」のベースラインでミステリアスな空気を醸し出し、ド定番の「CHERRIES WERE MADE FOR EATING」(ゴダイゴは日本だけど)、激しいライヴハウスがいったん静かな空間へと切り替わった「FROM MY WINDOW」と、ハードコアの中に海外民謡の空気感が漂わせる手腕が光ります。

 

今回のハイライトになった楽曲は、極初期の楽曲である「晴眼アルウチニ」でした。この曲もLes Négresses vertesというグループの日本語カバーなので、やってくれるのでは?という淡い期待は抱いていたのですが、いざ実際に不穏なベースイントロが流れ出したら、「マジか!?」という驚いてしまう。

 

もちろんライヴで聴くのは初めてなので、一音一音耳に刻みつける気持ちで浸りつつ、「我を償え!」のシンガロングをキメる。この呪詛的なムードで会場の空気がまた一段階変わった感じです。

 

後半はバラード調の楽曲を多めに配して、落ち着いたひとときに。ここでボロボロになった体を少し休めることに成功。なお「鼎の問」はDES-KONTROLのドラマーの彼女のリクエストなのだとか。良いセンスしてるな!

 

その後は少し長めのMCタイムで、2019年にバスクBRAHMANがツアーへ行った際のエピソードを語る。「現地のオッチャンに散歩に連れて行ってもらえると思ってついていったら、30分くらい経った段階で「これ登山してねえか?」と気づいた」「往復4時間かけて帰ってきたら、その夜にライヴがあって、終わった後は動きがロボットダンスみたいになってた」という、聞いてる方は笑えるものの、当時は大変な思いをしたであろうお話。

 

登山中に先導してくれたオッチャンが「疲れてないか?」「水飲むか?」と、言葉は何にもわからなくても、不思議と何を言ってくれてるかがわかる。住む場所も言葉も文化も違うが、根底にある気持ちは同じだということがバスクのツアーで分かったと語った後の「Slow Dance」。これまでBRAHMANの「静」の楽曲が続いてきた中で、徐々に徐々に熱を帯びていくフロアの空気。

 

この空気に僕も当てられてしまい、モッシュのスペースが生まれたのだから、ここで一気に前に行くべきでは?という思考に。覚悟を決めて前方に突っ込むと、疾走パートでクラウドサーファーがバンバン降ってくるモミクチャタイムへ。一発脳天に強い一撃をもらっちゃったよ。

 

どこかに俺が映ってるよ

 

そしてダメ押しのラストナンバーは「The only way」で怒涛のクライマックス。僕はこの時点で前から2列目くらいの激近場所にいたので、この時点でステージの状態をしっかり見ることは諦めて、クラウドサーファーを裁きながら、大声を上げてバンドのパフォーマンスに応えることに専念しました。TOSHI-LOWさんの鬼神っぷりはやはりいつ見ても迫力満点だぜ。

 

 

DES-KONTROL

正直なところ、全然知らないバンドでした。バスクから来たパンクバンドという事だけ調べていましたが、楽曲は聴いておらず。

 

新年度スタートの月曜日で、この後4日間仕事が待っていると考えると、この時点で帰った方が賢い選択かも、という思いもあったんですが、こんな機会でもない限り観ることはできないバンドですからね。遠路はるばるやってきてくれたのに、少しも観ないというのも失礼な話ですし。

 

やはり今回のお客さんは9割方BRAHMANのファンだったようで、先ほどのギチギチフロアとは打って変わって、だいぶスペースには余裕がある。そんな中にもAUTORITY ZEROのTシャツを着た人や、鋲ジャンを着たハードコアなパンクスがいたりと、このバンド目当てと思しき人もいる。

 

海外のパンクバンド、それもアメリカとかイギリスとかとは異なる国からということで、フォーキッシュというか、異国情緒を活かしたバンドなのかなと思っていたのですが(開演前のDJが流してる曲もそんな感じだったし)、歌詞が英語ではない(スペイン語なのかな?)ことを除けば、オーソドックスなファストコア。

 

ヴォーカルパートがほぼ全部シンガロングというか、メンバー全員で歌い上げる、というか叫び上げる感じで、サウンドから感じられる勢いはかなりのもの。ベースの音がかなり目立ってブリブリしているのがハードコア的ですね。

 

メロディーをかなぐり捨てたハードコアというほどではないものの、メロコアというほど叙情性があるわけでもない。めっちゃシンプルなハードコアパンクで、ライヴで聴く分にはかなり盛り上がる。

 

そのバンドの熱がフロアにも伝わってきたのか、大半の人は様子見のような感じだったのですが、ライヴが進むごとに体を揺らし手を挙げる人が増えていく。人数こそ少ないながら、バンドに煽られる形でモッシュピットも発生していました。

 

バンド側もどんどんオーディエンスをノせていきたいのか、缶ビールを何本もフロアに投げ渡すサービスも披露。酒好きにはたまらん時間ですね。僕は酒はほとんど飲まず(今日のワンドリンクはカシオレだったけど)ビールはあまり好まないから、特に受け取りませんでしたが。

 

しきりに「どうもありがとう!」「サンキューBRAHMAN!」と呼びかけてフレンドリーな印象を強めつつ、ステージにTOSHI-LOWさんを呼び込んで、肩を組みながら共にシンガロング。おそらくTOSHI-LOWさんも酒が入ってるんでしょうか、かなり笑顔を浮かべてご機嫌な様子でした。

 

 

楽しめることが確実に分かっている狭小ライヴハウスBRAHMANに、シンプルでアグレッシヴなパンクの何たるかが伝わるDES-KONTROLと、2時間半ほどのライヴハウスの醍醐味をしっかりと味わえました。特にDES-KONTROLは思った以上に楽しかったので、わざわざ日本まで来てくれたお礼も兼ねて、物販でCDを購入しました。

 

狭いライヴハウスならではの光景として、普通に通路にTOSHI-LOWさんとKOHKIさんがいて、「うおっ、間近にいる!?」というミーハー心に火がつきかけるのですが(笑)、さすがにライヴ終わりで疲れている中絡んでも迷惑だろうと思い、横目で見る程度にとどめながら会場を後にしました。

 

タバコ臭い階段をのぼっていく中、「TOSHI-LOWお疲れ!」と酒のカップを受け取るTOSHI-LOWさんを見て、改めてライヴハウスって良いねと思いましたね。アングラな空気の中で、横のつながりが垣間見える感じは、大会場やフェスでは体感できないので。

8周年

2016年4月1日よりFC2ブログからスタートした当ブログ、本日で8周年を迎えました。

 

丸8年ずっと続けることができたものって、自分史上で何があっただろうな...?今の仕事ですら17年入社だから、ブログ歴より短いしな。

 

どうやら今年度は、キャリアが少しずつ長くなってきたが故に、めんどくさそ〜な内容の仕事を押し付けられる気配が、徐々に迫ってきています。あ〜やだやだ。マジでやだ。若手社員のように前衛でやっていきたいのにさ。重い責任なんて担いたくないよ。責任は放棄したまま給料だけ上がってほしい。

 

去年、一昨年とブログ更新頻度が下がってきていたので、今年からはちょっと頻度を上向かせようと思っているのですが、プライベートな時間がゴリゴリ削られると思うと、なかなか厳しくなるかもしれません。

 

まあそんな状況にもめげず、今まで通りマイペースに音楽聴いて、ライヴ観に行って、フェスを味わって、ブツブツ感想という名のひとりごとをつぶやいていこうと思ってます。

 

継続的に見にきていただいている方も、たまにフラッときてくれる方も、たまたまネットサーフィンしてたらブチ当たった方も、よろしければ今後ともお付き合いいただけると幸いです(90°礼)

 

そんなブログの周年記念日、および新年度スタートの日ですが、さっそくBRAHMANのライヴを全身全霊で楽しみ、身体がバッキバキになったわたくし。

Judas Priest 『Invincible Shield』

  • メタルゴッドの風格は未だ健在
  • 正統派メタルらしいソリッドで攻撃的なサウンド
  • オープニングを飾る3曲の畳み掛けが圧巻!

 

ズバリ、力作だと思う。

 

デビュー50周年を迎えた大ベテランにして、ヘヴィメタルというジャンルを象徴するメタルゴッド・Judas Priestが放つ、19枚目のフルアルバム。

 

50周年ですってよ。すごいですね。当時生まれた人がすでに会社の重役とか、偉い立場になっているような年月。なんかあんまりピンとこないな。「当時小学生だった人がもう成人に〜」みたいな表現よく聞くけど、ここまで長い年月になっちゃうとイメージがつかん。

 

当然メンバーももういい歳...というか、絶対的フロントマンであるロブ・ハルフォードは72歳ですからね。もう完全に「おじいちゃん」と言っていい年齢。それでまだ現役ロックバンドのヴォーカリストやってるってのがすごい。

 

ロブ以外ももちろん高齢となってて、メンバーとしてクレジットされているものの、グレン・ティプトンはパーキンソン病によりツアーから離脱、相対的に若手の部類に入るリッチー・フォークナーは大動脈瘤をライヴ中に発症するなど、そろそろ厳しい立ち位置になってきているな...と感じていました。

 

しかしどうでしょう、本作から放たれるオーラは。

 

名手アンディ・スニープによりプロデュースされたサウンドは、メタリックな音色感を強く押し出しながら、シャープで切れ味鋭く差し迫ってくる。ロブのヴォーカルもハイトーンのロングシャウトこそほぼ無いものの、中音域で堂々と歌い上げ、高音域ではカミソリのごとく鋭く尖った声を響かせる。

 

この研ぎ澄まされたギターと、メタルゴッドによる歌声。この二つの充実度が素晴らしく、圧巻の説得力を持って"ヘヴィメタル"であることを堂々と提示してくる。様々なサブジャンルが台頭しているメタルの世界において、「これがヘヴィメタルだ」と言わんばかりのようです。

 

近代的なメタルほどヘヴィでアグレッシヴでもなく、フック満載の芳醇な歌メロが聴けるわけでもない。いたって普通の正統派ヘヴィメタル。だからこそメタルゴッドとしてのオーラというか、風格めいたものを感じさえてくれるのでしょう。

 

50年のキャリアを持つだけある、熟練のオーラが際立つと同時に、本作のなにが良いかっていうと、勢いのある楽曲をまず頭に持ってきたことじゃないでしょうかね。M1「Panic Attack」、M2「The Serpent And The King」、M3「Invincible Shield」の3曲が、ソリッドなギターで畳み掛ける、アップテンポのヘヴィメタルで非常にカッコいい!

 

やはり第一印象というのは大きいもので、最初にここまでアグレッシヴなスタートを切ることで、本作が良作であることを決定づけてくれた感じですね!M3の後半のメロディックなギターソロを聴く頃には「これは名盤では...!?」という期待感が大きく膨らみました。

 

残念ながらこの3曲以上のインパクトを与えてくれるような曲は(少なくとも僕にとっては)なく、少々地味めな曲も散見されることにはなるのですが、全体通して神としての厳かな雰囲気や風格を損ねることのない、充実したメタルチューンが続く。初っ端のピックスクラッチから意識をグッともっていくパワフルなM7「As God Is My Witness」、神格化されたロブの叫びが非常にドラマチックなM11「Giants In The Sky」あたりが特に好き。

 

なおデラックスエディションは、ブックレット仕様のパッケージとなり、ボーナストラックが3曲追加されていて、全14曲1時間以上の大ボリューム。曲数が増えてお得ではあるのですが、まあボートラゆえそこまで突き抜けた出来ではなく、本編ラストの余韻をかき消すように流れるので、正直そこまで嬉しいオマケではないな(笑)

 

頭3曲に匹敵するようなキラーが後半にもう1曲くらい入ってたら、もしくは前作の「Rising From Ruins」のような、様式美センスが炸裂したキラーがあれば、さらに印象が底上げされたかと思われるので、そこは惜しい点でしたね。しかしそれを含めても、ヘヴィメタルとして高いクオリティーを誇る、充実のアルバムであることに違いはありません。

 

しかし、もうとっくにドロップアウトしてもおかしくない年齢になっているというのに、ここまでキレある作品を生み出すとは、メタルゴッド恐るべしですね。まだまだやれるぞこの人たち。

 

 

個人的に本作は

"メタルゴッド健在を証明する、堂々たる正統派ヘヴィメタル。冒頭3曲で名作確定したくなる"

という感じです。

 


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PENNYWISE 『Land Of The Free?』

  • 姿勢からサウンドまで真のパンクロック
  • キャッチーだが甘く楽しいポップパンク臭は皆無
  • Fuck Authority!

 

SUM 41、BAD RELIGIONときて、さらにもういっちょパンクロックのアルバムについて書いちゃおう。

 

アメリカのパンクバンド・PENNYWISEの2001年発表のフルアルバム。現在は離れていますが、本作発表時はBAD RELIGIONのブレット・ガーヴィッツが代表を務めるエピタフレコードからのリリースです。

 

PENNYWISEは、ジャンルとしてはメロディックハードコアに区分されるのかなと思うんですが、このアルバムは(というかこのバンドは)、明るくピョンピョン飛び跳ねて楽しめるポップパンク的サウンドではまったくなく、モッシュやサークルで暴れながら中指を立てることができる、徹底した反骨心溢れるパンクサウンドに仕上がっています。

 

歌メロはキャッチーでメロディアスではあるのですが、決して"ポップ"には行ききらない。ヘヴィではないがペラくもない、適度なハードさを持ったサウンドが疾走し、社会や権力への怒りを吐き出すリリックが載る。まさにファッションやフェイクではない、正しきパンクロックの姿がここにある!

 

怒号とサイレンの音色で緊迫感を演出するM1「Time Marches On」から、PENNYWISEらしさ満載の疾走パンクが炸裂。そこからテンションを落とさぬまま、ザクザクとしたアグレッションを持つギターに、地を這うハードコアテイストあふれるベース、タイトな疾走を繰り出すドラムと、甘さの無いパンキッシュな躍動を楽しめます。

 

疾走する曲からミドルチューンまで、テンポの差はありますが、基本的に大体どの曲も熱量は変わらないまま突っ切っていく構成なので、単純で聴きやすい分飽きがくるのも早そう...って、同じこと『Never Gonna Die』の感想文でも書いたな。昔から曲の方向性にブレが無いんでしょう。

 

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捨て曲なんぞはなく、どの曲もPENNYWISEらしい硬派一徹のパンクが堪能できますが、やはり際立ってカッコいいのは、タイトルトラックとなる疾走ナンバーM2「Land Of The Free?」、サークルピットとシンガロング不可避なアップテンポパンクM4「Fuck Authoity」、"Yeah! Yeah!"の激アツシンガロングでメチャクチャテンションが上がるM5「Something Wrong With Me」の3曲ですね。

 

まあ曲がどうこうというよりは、曲名をそのまんま「WTO」にして、怒りと疑問を直球で歌詞にしたり、「クソ権威」なんてワードを使った曲がリードトラックになったり、徹底して社会や政治に中指を立てる姿勢そのものが、このバンド一番の武器でしょう。

 

格好だけではなく、スピリットに至るまで反体制を貫く、シリアスなパンクロックを聴きたいなら迷わず聴きましょう。そしてFuck Authorityの叫びを共に上げるのです!

 

 

個人的に本作は

"怒りと反抗の意思を突き通す本物のパンクロック。一本調子ながらタイトな勢いを感じさせる痛快さと、ポップにならないキャッチーさ"

という感じです。

 


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BAD RELIGION 『The Empire Strikes First』

  • BAD RELIGIONらしさ溢れる円熟味と叙情性
  • 疾走曲で特に光るエモーショナルなメロディーの数々
  • 最初のコーラスを聴いた時点で名盤確定

 

前回SUM 41について書いたので、続け様にパンクロックのアルバムについて取り上げてみましょう。アメリカンパンクの重鎮であり、メロディックハードコアの始祖とも言える大ベテランバンド・BAD RELIGIONの、2004年発表のフルアルバム。

 

前作よりギタリストのブレット・ガーヴィッツが復帰、古巣であるエピタフレコードに戻った彼らが、そのままの勢いで放った1枚。内容としては、BAD RELIGIONらしさが何ら損なわれていない、円熟味と土臭さを併せ持つ哀愁疾走パンクロックです。

 

本作にはバンドの代表曲として名高いM6「Los Angeles Is Burning」が収録されているのが、一般的なポイントでしょうか。ややポップなフィーリングが強調されたミドルテンポナンバーで、メロディーのフックはかなりのもの。

 

ただ個人的にはこの曲に抜きん出た魅力があるとは、あんまり思わないかな。印象に残る楽曲ではありますが、アルバムを象徴するキラーって感じではないかも。

 

本作において最大のインパクトを誇る瞬間は、やはり冒頭。イントロのM1「Overture」から一気に突入するM2「Sinister Rouge」、これが一発で名曲だとわかるキラーチューンで素晴らしい!

 

のっけから現れるのが、涙腺をブチ抜くコーラスですよ。"アーーーーアーーーーアーーアアッアーーアッ!!"の衝撃たるや絶大。この絶妙に胸を締め付ける哀愁の叙情旋律を撒き散らしながら、ハードに疾走する展開がたまんねぇのなんの!!後半に唸りを上げるリードギターと、グレッグ・グラフィンの激情のヴォーカルもカッコいい!!

 

本作を最初に聴いた時、この曲が流れた瞬間「こりゃ名盤だな」と確信を持ちましたからね。これぞBAD RELIGIONに期待されるエモーショナルパンク。

 

この曲を超えるほどの楽曲こそ収録されていないものの、バンドのスタンスには微塵もブレがなく、特に疾走曲における叙情性はさすがの一言。ギターフレーズにもヴォーカルにも、漢の哀愁がプンプン漂うM4「Atheist Peace」、M5「All There Is」の二連発は文句なしに最高だし、M10「The Quickening」のサビのヴォーカルと、バッキングコーラスの重なりも胸打つ哀しさに満ちてます。ギターソロも気合が入ってて大きな聴きどころ。

 

アルバムのラストを飾るM14「Live Again (The Fall Of Man)」のサビも良いですね!郷愁を感じさせるような切ないメロディーが疾走し、それに合わせてお得意のコーラスも合わさる様が、エモーショナル極まりない!クライマックスにふさわしい叙情性を醸し出しています。

 

国内盤ボートラとしてM15「The Surface Of Me」が収録されてるのですが、M14で聴ける哀愁で胸をいっぱいにした状態で、ややカラッとしたパンクナンバーがすぐさま来るのは、アルバムの余韻という点ではちとマイナスだな…。曲単体で考えれば悪くないんですが。

 

疾走曲からミドルチューンまで、BAD RELIGIONという名に求められるパンクロックをしっかりと踏襲した作品です。まあ彼らのアルバムはどれもブレ無しで一貫性があるので、他作品の明確な差分があるわけではないんですが。

 

まずはなんと言ってもド頭から聴いて、BAD RELIGION節100%のコーラスに撃ち抜かれる感覚を味わってほしいですね。

 

 

個人的に本作は

"一切変わらぬ哀愁を振り撒く、叙情性抜群のメロディックパンク。疾走曲の哀愁度が特に高い"

という感じです。

 


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SUM 41 『Does This Look Infected?』

 

先日のPUNKSPRINGで一応のライヴ見納めを済ませたSUM 41。これをもって解散してしまうのか...と思うと、やはり寂しいものがあります。

 

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青春時代に刻まれたバンドだけに、ライヴ後に何かブログで取り上げたいと思い、本作の感想でも書いてみようかと思いましてですね。2002年発表の2ndフルアルバムです。「SUM 41を語る上で、まずフルアルバム1枚を挙げて!」と言われたら、恐らく大半の人がこの作品名を挙げるのではないでしょうか。

 

前作『All Killer No Filler』からわずか1年で発表された1枚ですが、その作風から明らかにサウンドの質が変化。SUM 41サウンドのイメージは本作で作り上げられたようなもの。

 

SUM 41のサウンドイメージである「パンク×メタル」。前作の時点でも「Pain For Pleasure」のようなモロにメタルな楽曲はあったものの、どちらかというとジョークというか、ボーナストラックに近い感触のものでした。

 

翻って本作はというと、メロディアスなパンクロックという骨格はそのまま保持しつつ、グッとタイトでメタリックな演奏の比重が増しています。メタルヘッズであるデイヴ・バクシュの本領発揮と言わんばかりに、ハードなギターワークが支配的。それに合わせてポップパンク然とした、底抜けに楽しいムードもかなり減っており、全体的にシリアスです。

 

このデイヴのメタルギターこそが、SUM 41を「その他大勢のポップパンクバンド」ではなく、「SUM 41」たらしめるものですね。このサウンドに当時のパンクキッズはどっぷりバンドにハマったようですが、そうなるのも頷ける魔力がこのアルバムにはあります。

 

まあ、このメタル好きが行きすぎてしまって、次作『Chuck』ではパンク要素よりメタル要素の方が濃いのでは?と思うようなアルバム(それはそれで良い!)になって、他メンバーと軋轢が生じてしまい、その後脱退することになってしまうようですが...

 

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本作の時点ではメタル要素の馴染み具合、バランス感が非常に良い塩梅で調整されていて、前述した通り主軸となるのはメロディックなパンクです。M4「Still Waiting」は、そんな本作の路線を象徴する名曲。メタリックかつ疾走感のある演奏、パンクらしい衝動を感じるシャウトに、涙腺を刺激する哀愁たっぷりのコーラスと、聴きどころ満載のメタルパンクアンセム

 

「Fat Lip」で聴けたようなラップが繰り出されるM9「Thanks For Nothing」も、メロディアスながら弾けるポップなムードはなく、パンキッシュながらシリアスなのも、路線変更を強く感じさせますね。

 

アルバムの幕開けとしてこれ以上ないほどの役目を果たす、ハード&キャッチーなM1「The Hell Song」、非常にメロディックでキャッチーなサビ、キレのあるギターソロが大きな魅力となるM6「No Brains」、本作中特にメタルの要素が強い疾走ナンバーM8「Mr. Amsterdam」あたりは、ポップすぎる楽曲が苦手な人にすらアピールするであろうメタルパンクですね。

 

キッズを熱狂させるメロディー、パンクらしい破壊的エナジー、そして大きな個性となるヘヴィメタリックな演奏。これらが全て取り揃えられた00年代を代表するパンクロック大名盤。

 

脱退したデイヴ・バクシュが戻ってきてからの近年の作品も、メタリックなパンクロックという路線は貫いているのですが、本作ほどの中毒性あるキャッチーさは控えめになっているというのが本音ですね。やはりこの作品はバンドが波に乗り、脂も乗り、最高潮に高まった時だからこそリリースできた、奇跡の一作だったのでしょう。

 

 

個人的に本作は

"メロディックなパンクにメタルなサウンドを絶妙なバランスでブレンドし、バンドの"パンクメタル"イメージを作った名盤"

という感じです。

 


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