ひとりごと ~Music & Life-Style~

HR/HMを中心としたCD感想、足を運んだライヴの感想をメインにひとりごとをブツブツつぶやくブログです。

Graupel 『Bereavement』

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  • 叙情的メロディーを纏う爆走モダンメタルコア
  • 頻繁に挿入されるDjent的ヘヴィパートの攻撃力大
  • "次世代No.1メタルコア" これウソじゃないよ!

 

ここ最近の日本のインディーズメタルシーン、特にメタルコア・ハードコア・ラウドロック界隈において、頻繁に名前を目にするようになった、2014年結成の若手メタルコアバンドの1stフルアルバム。

 

メンバーも若く、まだそこまで長いキャリアを積んでいるわけではないバンドですが、その実力の高さから早い段階で注目を集めていたようで、coldrainやCRYSTAL LAKEなどの日本の人気バンドのゲストアクトに迎えられたり、海外アーティストとの共演も果たしているらしい。

 

本作の帯にもわざわざ"次世代 No.1メタルコア"と記しており、新進気鋭のバンドとしての自負が見え隠れするわけですが、確かにそんな強気な文句を書きたくなるほどに本作の内容は強烈。

 

近年の若手バンドがやるメタルコアということで、やはりモダンなサウンドだったり、Djentのようなヘヴィサウンドが聴けたりと、今風な音楽性ではあります。AS I LAY DYINGやKILLSWITCH ENGAGEのような、保守本流のメロディックメタルコアとはやや趣が異なるのは間違いないです。

 

しかしポストハードコアやスクリーモというよりは、激情ハードコアやニュースクールハードコアと言った方が通りが良いような、「硬派さ」というべきスタンスを貫いているのがポイント。爆走パートとリズム落ちパートを双方積極的に取り入れ、頻発するテンポチェンジを難なくこなすヘヴィな演奏、ほぼデスヴォイスのみで攻撃的な印象を強めるヴォーカルが実にパワフル。ひ弱でナヨっとした印象は皆無。

 

そして何といっても嬉しいのが、サウンドのパワーを一切邪魔しない範囲で、ギターフレーズや一部のヴォーカルにて、激情に満ちたエモ的キャッチーさを生み出している点。ひたすらアグレッシヴなだけでなく、しっかり耳に残るメロディアスさを描き出しているのが強いですね!近代の叙情メロデスにも通じるような哀愁が素晴らしい。

 

さざ波とピアノによる静かなイントロからM2「Bereavement」と差し掛かると、早速彼らの強みである、馬力と叙情性を両立した強靭なリフで疾走!ヴォーカルも見事なブチギレっぷりで熱量バツグン!途中急に挿入されるDjent的ヘヴィパートも、サウンドのパワーが充分すぎるからか、せっかくの勢いが削がれてしまう印象も無い。

 

そしてM3「Departure」はイントロから早速メロウなギターで疾走し、本作中最もメロディアスなサビも登場。どこか青臭くも泣かせてくれる旋律は実に魅力的で、そんな中にも怒涛の勢いで押し寄せる叙情ヘヴィリフ、超速バスドラ連打がエクストリームメタルらしい攻撃性をしっかりと演出。

 

とにかくアルバム全体通して、ハードコアらしいシンガロングや破壊力充分なデスヴォイス、荒々しくもタイトでヘヴィな演奏、疾走部とモッシュパートを複雑に織り交ぜた曲展開を貫き通し、強固で叙情美溢れるモダンメタルコアを徹底している。最もストレートな疾走感に溢れ、バッキングのリードギターがエモーショナルなメロをかき鳴らすM9「Towpath」で締めくくるおかげで、聴き終えた後の気持ち良さも文句なし。

 

"次世代No.1メタルコア"という文句が決して大げさにはならない、モダンメタルの魅力に満ちた強力盤と言えるでしょう。どうやらメンバーの脱退が多く、なかなか安定していないっぽいんですが、どうにか盤石の体制になって国産メタル・ラウドシーンの最前線を走り続けて欲しいバンドです。

 

YouTubeにある「Departure」のMVのコメント欄に"日本の若手メタルコア・シーンを引っ張っていってほしいランキング堂々の第1位過ぎる"というのがありましたが、僕も全く同じ意見。

 

 

個人的に本作は

"次世代No.1の自称に偽りなし。激情ハードコア的疾走とDjent的ヘヴィさを巧みに使い分けるハイクオリティーなモダンメタルコア"

という感じです。

 


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DISMEMBER 『Death Metal』

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  • ピュアな疾走メロデスを貫き通す
  • 禍々しくもエモーショナルなリフとヴォーカル
  • ここぞという時飛び出すダイナミックなツインリード

 

前回純正かつ高品質なデスメタルの感想を書いたので、その流れに乗って本作についても取り上げてみます。スウェーデンデスメタルバンド・DISMEMBERの4thフルアルバム。

 

禍々しいバンドロゴ、いかにも邪悪な雰囲気をプンプン漂わせるジャケット、そしてアルバムタイトルは『Death Metal』!ここまでわかりやすく"デスメタルであること"を表現している作品もなかなかないでしょう。

 

エクストリームメタルが盛んなスウェーデンという国において、デスメタル創世記からシーンで活躍していたというDISMEMBER。スウェディッシュ・デスメタルの典型的な音楽性を確立したという、メタルシーンの在り方にも大きな影響を与えたとされています。

 

もともとはひたすらにアンダーグラウンドデスメタルをプレイしていたようですが、本作において一気にメロディックな旋律を増量。メロディックデスメタルへと姿を変えたそうです。"そうです"と伝聞調なのは、僕がまだ過去作を聴いていないからですね。

 

そんな本作に込められた音ですが、まさしく北欧由来の叙情性を感じさせつつ、ブルータルで禍々しいリフ、メロディアスなリードギターで哀愁を表現する北欧メロデスそのもの!初期ARCH ENEMYにも通じる(アルバムデビューはDISMEMBERの方が先だけど)おどろおどろしさがいかにもデスメタル。「エクストリームメタル」ではなく「デスメタル」という呼称がよく似合う。

 

正直言って音はだいぶ悪めで(時代を考えればある程度はしょうがないですが)、ゴチャッとしていて音の分離はイマイチ、奥に引っ込んだようなサウンドはなかなか輪郭がつかみにくい。しかしこの悪めな音質が逆にデスメタルらしいとも感じるので、一概に悪いとは言えないかも。

 

ズルズルと不穏な雰囲気を引きずり、濁ったような汚いリフにも、どこか悲哀・叙情性が感じられる。At The GatesやARCH ENEMYにも勝るとも劣らない、メロデスというジャンルでしかなしえない慟哭リフが濁流のように押し寄せ、泣き叫ぶデスヴォイスと疾走感により、さらに哀しさと攻撃性を表現。

 

そんなアングラ臭漂うブルータルサウンドに飲まれていく中、ところどころに配された非常にメロディアスなリードがかなり印象的で、随所でハッとさせられるのが強みですね。初っ端のM1「Of Fire」から、超ドラマチックなリードギターが大暴れする様がインパクト絶大。M5「Live for the Fear (Of Pain)」、M7「Killing Compassion」といった、哀愁のリードと共に疾駆するスピードナンバーはメロデスの王道と言えましょう。

 

M6「Stillborn Ways」やM8「Bred For War」のようなスピードを落とした曲(後者はテンポアップするところもあり、そこが最高にクール)でも、メロデス特有の慟哭リフは鳴りやまず、終始退廃的なムードを醸し出しているのもポイントです。スローでも退屈な瞬間が無い。

 

M11「Silent Are The Watchers」は、本作中最もわかりやすくリードギターが乱舞、開幕するやいなやメロディアスにいななくギターが強烈に印象に残るナンバーです(バッキングのリフが無いからちょいと音圧は足りなくなるが) 中盤からのギターソロがまた情感に満ちていてドラマチック!

 

今の耳で聴くとだいぶ古めかしい音質ではありますが、それでもこのメロディックデスメタルというジャンルだからこそ表現できる、この慟哭ぶりは一切色褪せない。近代メタルにはない、古き良きメロデスの正しき姿です。いや、近代メタルも好きなんだけどさ。

 

 

個人的に本作は

"スウェディッシュデスらしさ全開のリフ、悲哀に満ちたデス声、超メロディアスなツインリードによる慟哭疾走デスメタル"

という感じです。

WORLD END MAN 『USE MY KNIFE』

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  • 世界標準のブルータル・サウンド
  • 勢い任せにならない展開の巧さ
  • 王道デスでも不思議と聴きやすい

 

つい先日HER NAME IN BLOODとの対バンで、強烈・残虐・爆音なアクトを見せてくれたWORLD END MANの1stフルアルバム。

 

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本作以前より自主制作でEPなどを出していたようですが、全国流通音源は本作が初。リリースされた当初、渋谷のタワーレコードにJ‐PUNK系統のバンドの音源と一緒に、本作が陳列されているのを見てあまりの浮きっぷりに驚いたものです(笑)

 

日本のエクストリームメタルといえば、人気があるのはメロディックデスメタルメタルコアで、メロディアスな要素を削ぎ落とした純正デスメタルが話題になることはそうそうありません。

 

そんな商業性の見込みにくい音楽をやる覚悟、そして海外での活動経験を持ったメンバーがやっているわけですから、当然ながらそのサウンドからみなぎる本格感はかなりのもの。完全に世界レベルのサウンドなのではないでしょうか。

 

ヴォーカルのKiyoさんは、もともとデスメタル一辺倒の人間ではなく、Limp BizkitKoЯnといったニューメタルに傾倒していたそうで、その感覚があるからなのか、楽曲通しておどろおどろしいという印象は意外にも希薄。

 

デスメタル」という言葉からは、ドロドログチャグチャした汚らしい音質、徹底してアンダーグラウンドな世界観というのをどうしても想起しちゃうんですが(ジャケットもそんな感じのグロテスク加減ですし)、本作で聴ける音は残虐で凶暴ではあるものの、それと同じくらい骨太でしっかりとした演奏力、パワフルな印象がある。

 

これはやっぱりギターリフがしっかりとした輪郭を持って、どっしりヘヴィに刻まれているから感じるのかもしれません。勢い任せの熱量でジャカジャカ弾き倒すのでなく(それはそれでカッコいいのでしょうけど)、あくまでメタリックな質感を損なわないパワフルなリフこそがキモ。ライヴでもそのピッキングの豪快さに魅せられたものです。その分速弾きソロの類いはまったくと言っていいほど無いけど。

 

また、疾走しっぱなしではなく、曲によってヘヴィなリズム落ちパートを積極的に設けたり、勢いを控えめにした楽曲を前半から中盤に配したりするなど、曲単位でもアルバム単位でもストップ&ゴーを意識して作られているのも、本作の完成度の高さを底上げしているように感じます。全方位隙が無く、高水準にまとまっている。

 

しかしいくら演奏面や完成度がしっかりしていても、そこはやっぱり残虐なデスメタル。Kiyoさんの地獄の底から湧き上がってくるような凶悪無比なグロウルは、それを高々に主張してくれています。華やかなメジャー感なんぞは微塵もない、本当に人間が出しているのか疑わしいエグい声は迫力抜群。

 

王道を行くデスメタルなので、当然ながらメロディアスさやドラマチックさなんてもんは無し。僕の好みからするとちょっと凶暴すぎるきらいはありますが、上記したような全体的な完成度の高さと、25分程度に収まったコンパクトさのおかげで、思っていた以上に聴きやすいな、と思わせてくれるのはありがたかった。

 

ピックスクラッチから一気に爆走し、リズミカルなリフでも聴かせるM6「Feed the negative」と、さらにそこからノンストップで駆け抜け、驚異のバスドラ連打を披露する超攻撃的なM7「Blackest end」の二連打は爆アガリタイムですね。理屈抜きにカッコいいです。

 

甘さ一切なしの残虐なデスメタルでありながら、邪悪なアングラ感以上にメタルとしてのパワー、爽快感すら感じさせるサウンドを持った、なかなか稀有な作品なのではないでしょうか。

 

 

個人的に本作は

"メロウな要素をかなぐり捨てた超ブルータルなデスメタル。パワー漲るメタリックな演奏と、曲展開の巧みさは聴き応えあり"

という感じです。

 


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HER NAME IN BLOOD 『THE BEAST EP』

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  • デスコアからメタルコアへのキッカケ
  • バンドを代表するキラーを収録
  • メチャクチャヘヴィ、けど聴きやすい良質なバランス

 

前回久々のライヴハウスで、激熱ライヴを見せてくれたHER NAME IN BLOOD。彼らがテクニカルなデスコアから、現在のメロディックメタルコアへと音楽性を変容させるターニングポイントとなったアルバムを取り上げます。

 

ギタリストとしてTJさんが正式に加入し、さらにフロントマンであるIkepyさんが髪を伸ばす&トレーニングを積むことによって、現在のような屈強で男臭い見た目に変化したのも本作から。まさに今のハーネームへの足掛かりとなったアルバムと言えましょう。

 

本作を作成するにあたり、メインソングライターであるDAIKIさんは「今までのアルバムは難解でとっつきづらい」ということに気づき、音楽的な芯はブレずに、よりシンプルでわかりやすくしようという意志があったんだとか。

 

その結果デスコアからメタルコアへと楽曲の骨組みが若干変化するに至ったわけですが、これは難解で複雑なものより、わかりやすくキャッチーである音楽の方が好きな僕のようなリスナーには好ましい変化でした。アングラな音楽シーンのみに目を向ける人にはガッカリな路線変更なのかもしれないけど。

 

音楽性としてはヘヴィな部分ではしっかりとリフが重く刻まれ、極悪なメタルコアとしてのアイデンティティーは保ちつつ、合唱しやすいキャッチーなサビを導入。タフでマッシヴな王道を行くメタルコアを貫いています。充分に攻撃的で凶悪、それでいて安くならないキャッチーさを導入したサウンドは実に魅力的。

 

Ikepyさんのヴォーカルスタイルも、今のような整合性ある声とは違い、かなり荒々しい獰猛な叫びを披露していて、単純な勢いだけなら今以上かもしれない。とにかくアルバム全編に渡って、まさにBEASTという名に相応しい猛り狂う音の潮流が止まらない。マジでド迫力。

 

この頃はまだデスコア時代の名残みたいなものが残っているようで、ハードコアモッシュ誘発のメチャクチャ強烈なリズム落ちパートも所々で聴ける。特にM4「CUTS INTO PIECES」は随一のヘヴィさを押し出した楽曲で、のっけから野太いシャウトと共に爆走し、ラスト付近の極悪ヘヴィパートは、リスナーを脳天から叩き潰してしまうかのような豪快さ。エグい。

 

M1「UNSHAKEN FIRE」やM5「DANCING WITH THE GHOST」はゴリッゴリにヘヴィなリフで畳みかけ、鈍重なモッシュパートも存在するものの、それを邪魔しないメロディアスな要素をブレンドした楽曲。彼らの変化を端的に表している、これまた非常にカッコいい曲。M2「THE PIERCING EYES」も、彼らに期待される速さと重さを両立して破壊力バツグン。

 

M6「WE REFUSE」はリードトラックとなった楽曲。重く速く激しく進み行く出だしから、一気に解放感溢れるスケール感大のサビへと繋がり、そこからさらにヘヴィパートへと続いていく展開が気持ちいい。ラストのクリーン寄りなギターフレーズがまたクールなんですよ。ベスト盤で再録されたバージョンに慣れた耳だと、ラストのヘヴィパートがちょっと速めに聴こえるな(笑)

 

そしてM3「GASOLINES」はライヴでもキメ曲となっていてお馴染みですが、やっぱり圧倒的なカッコよさですね。怪しいギターリフからシャウトでアップテンポに展開し、リズミカルなAメロパートでは体を揺らさざるを得ず、そこからメロディアスなギターフレーズへと流れ、爆発力満点のサビへ!わかっていても気分が高揚する名曲中の名曲!

 

今のハーネームに通じるキャッチーなメタルコアの歩みを進めるも、初期のアンダーグラウンド臭漂うヘヴィさも色濃く残っている、ヘヴィなメタルコアとして非常に充実した内容になっていると思います。時間も6曲20分程度と短めでサクッと聴けるから、聴き疲れと無縁なのも嬉しいですね。

 

 

個人的に本作は

"ダークでヘヴィ、マッシヴでキャッチーなメタルコア。バンドのターニングポイントとなった充実作"

という感じです。

 


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5/16 HER NAME IN BLOOD VS WORLD END MAN / HEAVY WEIGHT TOUR at 渋谷 clubasia

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新型コロナウイルスの流行以降、どうしても足が遠のいていってしまった規模の小さいライヴハウスにようやく行くことができました。

 

日本が誇るメタルコアバンド・HER NAME IN BLOODが、ゲストアクトとして超実力派デスメタルバンド・WORLD END MANをゲストに迎えての強力ツーマン。ライヴの日程が発表されてすぐにイープラスでチケットを取っていました。

 

しかしコロナの影響で2度も日程の延期。結局本来やる予定だった日から1年も待つハメになってしまったライヴ。いろいろと調整も難しかったでしょうに、よくぞここまで引っ張ってくれたものです。

 

そんなわけで3度目の正直となった本公演、以前もHER NAME IN BLOODを観た渋谷のclubasiaへ。例によってアルコールは提供できないため、ドリンク券をオレンジジュースに引き換えて掻っ込み、フロアの方へと足を運ぶ。入場者数を絞っているため当然満員になることはありませんが、開演直前にもなるとそこそこの入りだったように思います。

 

WORLD END MAN

リリースした音源こそ少ないものの、既に海外でのライヴ活動の実績を豊富に積んでいる真正のデスメタルバンド。そして元HER NAME IN BLOODのドラマーであるUmeboさんが在籍していることでも知られています(むしろ僕はUmeboさんがハーネーム抜けてから、またバンドやりはじめたという点からこのバンドを知りました)

 

Ikepyさんにも負けないような屈強な肉体を持つ大男たちがSEも無くステージに上がり(特に上手側のNaotoさんの上腕筋がハンパない)、ズンズンとしたヘヴィなブルータルリフを繰り出していく。

 

そしてしばらく重たいリフで焦らしてから、ヴォーカルのKiyoさんがセンターへ登場。インタビューの画像などから、大変失礼ながら"陰"の雰囲気を漂わせている人だと感じていたのですが、髪をバッサリ切ったことが影響して、かなりサッパリしたルックスになってたのがちょっと意外。「好青年」なんていうデスメタルとはほぼ無縁の言葉すら想起したほどです。

 

しかしライヴが始まると一変。両手でマイクをガッチリと握りしめ、ステージ上をゆらゆらと蠢くように回りながら、極悪のグロウルを連発。ステージからの距離が近かったのもあって、凄まじい音圧に打ちのめされましたね。ハードコア成分のない、純然たるデスヴォイスでここまでの破壊力を感じ取れるのはなかなかない経験でした。

 

そんな凶悪ヴォーカルが目立つ中、バックの演奏はテクデスのようなピロピロしたスイープなどは皆無で、ギターソロらしいソロもまったくない。楽器陣が「ここが見せ場だ!」と言わんばかりに前へと出てくるといったこともなく、あくまでヴォーカル主体のライヴパフォーマンス。

 

しかし勢いよくプレイすれば突進力である程度ごまかせるわけではない、デスメタルという確かなテクを持っていなければできないジャンルを標榜し、海外でも揉まれてきたバンド。もちろんソロが無いからといってバンドサウンドに物足りなさは全くない。恐ろしく速いピッキングでヘヴィリフを刻み、ハードコアばりのシャウトコーラスで攻撃性を高め、少ないドラムセットながら高速のビートを叩きだす。ライヴのクオリティーの高さという点ならハーネームを凌駕していたのではないかと思います。

 

ただ途中でUmaboさんがセットリストの曲順を思いっきり間違えるというハプニングが発生。しばし演奏が停止し、リハーサルのようにみんながドラム周りに集まって音を確認していくという時間が挟まれる。「スタジオでやれ!」とヤジが飛ぶなど、極悪な時間の中で唯一のホッコリタイムになっていました。

 

「こいつ(Umeboさん)ハーネームにいたときもやったんですよ。みんなでLamb of God合わせようってスタジオ入ったのに、全然練習してなくてタジ君とケンカになったって」と裏エピソードも暴露されたりする中、調子を取り戻してすぐさまデスメタルの世界へ。

 

正直メロディックデスではない、純正のデスメタルを聴くことはほとんど無いので、ライヴを100%楽しめるのかという懸念がちょっとあったんですが、これは予想以上に良い物を観られましたね。どうしても似たような曲調になりがちなのに加え、Kiyoさんの曲名コールもデスヴォイスのため聞き取るのが難しく、明確に分かったのは「Use my knife」くらいでしたが、難しいこと考えずにひたすらヘッドバンギングする良き時間でした。

 

HER NAME IN BLOOD

お次はお目当てであるHER NAME IN BLOOD。何気に僕がライヴを観た回数トップクラスなんじゃと思えるほど観てきているバンドですが、今回は間が開いたのもあり、さらに期待感は増している。

 

いつものロッキーの登場SEは無く、ツラツラとステージに上がって来て、おもむろに演奏を開始。相変わらずド迫力の屈強な肉体を前面に押し出したIkepyさんが真ん中に登場して、「BEAST MODE」~「LET IT DIE」という幕開け。

 

先ほどのWORLD END MANと比べると、全体的に音響がゴチャッとしていて、各楽器の音がちと聴き取りづらい。僕がかなり右端の方にいたからというのもあるのでしょうが、クリーンヴォイスによる歌唱はIkepyさんもMAKOTOさんも通りが良くなく、イマイチ音程が伝わらない。DAIKIさんのギターソロは埋もれながらもなんとか聴けましたが、TJさんのソロはタッピングがまるで聴こえず。ちょっと音響面で損をしてしまっていたかな。

 

ただやはりバンドのパフォーマンスはさすがと言える安定感で、「ZERO (FUCKED UP THE WORLD)」のシンガロングパートは、気圧されるほどのド迫力、「POWER」はバンドの持つ明朗な部分が強調され雄々しいことこの上ない。メタルコアらしいヘヴィリフでリードしつつ、サビは3拍子で非常にキャッチーになる「Calling」も堂々たる迫力で迫ってくる。

 

先ほどのWORLD END MANが徹底的に残虐なデスメタルで、アンダーグラウンドな雰囲気を醸し出してたのに対し、やはりハーネームはどれだけグロウルに破壊力があっても、どこか健康的ともいえるムードがありますね。

 

MCでは今回共演したWORLD END MANのドラムのUmaboさんについて触れ、「時間が解決してくれるから。今日こうやって一緒にやれて嬉しいです!」とかつてのバンドメンバーとの対バンに思いを馳せる。あの不祥事が発生したときはHER NAME IN BLOOD・GYZE・NOCTURNAL BLOODLUSTという超強力3マンライヴがキャンセルとなってしまい激しくガッカリしたものですが、シチュエーションは違えどまたこうやって彼らの勇姿を観られて僕も嬉しい。

 

そして「俺らの昔の曲を聴きたいか!?」とIkepyさんが煽り出す。Umeboさんがいる中で昔の曲をやるということは「Unexpected Mention Effected Big Offer」か?あの極悪デスメタルナンバーを今のハーネームがやるのか?と期待しましたが、プレイされたのは「Invisible Wounds」。もちろんこれはこれでカッコいい曲ですが、ちょっと当てが外れた感じ。

 

ライヴ定番であるキラーチューンの「GASOLINES」では、ラストのリズミックなリフと共に会場を揺らす。これまではヘドバン&メロイックだった僕も、ここぞとばかりに思いっきりジャンプ!サビで「イェェェェェーーーー!!」と叫べないのは若干もどかしいですが、生で体を揺らしながらこの曲を爆音で浴びれるのは、やはりエクスタシー以外の何者でもないな!!

 

本編終了後のアンコールでは(これも声は出せないため手拍子のみでしたが)、またまた「昔の曲を聴きたいか!?」と訊ねてきたため今度こそ「Unexpected~」かなと思ったけれど、ライヴでもプレイされやすい「Decadence」。不規則なリズムで繰り出される不穏なリフ、途中で挟まれる不気味なベースソロと、彼らの楽曲の中でもかなりアンダーグラウンド寄りの楽曲で、WORLD END MANとのツーマンの締めくくりとしては相応しいでしょうか。

 

コロナの影響により延期に延期を重ね、集客数を搾り、さらに密集したモッシュピットは作れないという状況下でしたが......いやいや、これほど熱量の高いライヴになるとは思いませんでしたよ。モッシュができず声も出せずという制約こそあったものの、ステージから発せられるエナジーに打ちのめされまくり、非常に満足度の高いライヴになりましたね。

 

しいていえばHER NAME IN BLOODのときの音響に若干の難がありましたが、そんな小さな不満を吹き飛ばしてしまうほどのライヴパフォーマンスでした。小さく薄暗いライヴハウスで、バンドの生パフォーマンスを間近で観る。この久しく経験できなかった体験を、今一度させてくれたバンドマンに心から感謝を伝えたい。ライヴ後の耳鳴りも久しぶりだな!

 

そんな満足感と共にフロアを出ると、恰幅の良いお兄さんが、WORLD END MANのタンクを着た気合いの入ったお兄さんに「外タレのライヴによく行ってますよね?」と話しかけているのを発見。僕はいつもライヴは一人で観て、終演後は一目散に帰ってしまっているので、こういう「ライヴハウスの中での人との繋がり」みたいなものが皆無なんですよね...。友達作りたくてライヴに行ってる訳ではないのでいいんですけど、ちょっと寂しさを感じてしまったのも事実だったり......(笑)

ATHENA 『Twilight Of Days』

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  • クサメタル界の金字塔的アルバム
  • 他を圧倒するクサメロスピの大名曲が強い!
  • スカスカ音質、細いハイトーンで雰囲気は見事にB級

 

2021年にもなってコレ!?とか思わんでください(笑)

 

先日日記でも書きましたが、最近になって部屋の掃除と模様替えを行いましてですね。CDの整理とかもガッツリやってみたんですよ。

 

もう聴かなくなって久しいアルバムや、聴いたけどさほど心が動かなかったものをまとめてディスクユニオンに預けて、多少なりともスッキリはしたのです。それでもまだまだ量は多いんですけどね。

 

その作業を通して「ああ~~!昔買ったけど最近聴けてなかったヤツだ!これ良かったよな~~!」と改めて目に留まった旧譜が結構な数にのぼりました。新譜を買うにつれて奥へ奥へと追い込まれてしまったかわいそうなヤツらなのです。

 

部屋に余裕が生まれたことによって、ゆったりと音楽に浸ることがしやすくなった今現在、せっかくだから長い間積んだままになっていた過去作も積極的に聴いて、なんだったらこのブログに感想文でも書いてみよっかな~と思い立ったわけです。

 

その第一弾として、知る人ぞ知るクサメタルの名盤をここで取り上げます。イタリアが生んだプログレッシヴ/メロディックスピードメタルバンド・ATHENAの3rdフルアルバムです。

 

イタリアのヘヴィメタルといえば、世界にも名を轟かすLACUNA COILが有名ですが(僕はあまり馴染みがないのですが...)、日本のメロディックメタルファンが「イタリアン・メタル」という言葉を聞いて、真っ先に想起するのはやはりクサメタルスタイルだと思うんですよ。そうですよね?違います?そうでしょ?

 

キング・オブ・シンフォニックメタルであるRhapsody Of Fireに、ヴォーカルが出戻りしたSECRET SPHERE、現代のメタルシーンで最もクサいとされるDerdian、聖闘士星矢ドラゴンボールなどの日本のアニメのテーマソングをカバーしまくるHIGHLORD、そしてクサメタルというジャンルをこれ以上ないほどわかりやすく体現したSKYLARKなどですね。

 

今回取り上げるATHENAも、そんなクサメタル一派の一つとして数えられるバンド。

 

元々はイタリアの至宝であるファビオ・リオーネをヴォーカリストに迎え、プログレッシヴメタルの要素の強いパワーメタルをプレイしていたんだとか(僕は未聴)

 

しかしファビオは2ndアルバムのみ参加して脱退。後続としてフランチェスコ・ネレッティという人物(今はDEEP PURPLEのカバーバンドやってるらしい)を加えて、何を思ったか、これまでの作品で強かったプログレッシヴメタル的要素を減退させて、一気にメロディックスピードメタル路線に舵を切ったのが本作。

 

以前のアルバムは国内盤が出ていたようですが、本作は輸入盤のみ。まず何よりも音質がかなり悪めで、かなり隙間の多い印象のスカスカ加減になっている。必ずしもヘヴィで攻撃的な音を求められるジャンルではないとはいえ、いかにも辺境の国のB級バンドですってな感じのサウンドに。演奏自体はしっかりしているんですが。

 

そしてファビオの後任というキツいポジションを任せられたフランチェスコは、まさにクサメタル的といえるヘナチョコハイトーン型。か細く、もうちょっと力んだらひっくり返ってしまいそうなハイトーンシャウトは、これまた音質に輪をかけてB級の空気を演出しています。歌えていないわけではないし、アルバムの雰囲気にはマッチしていると思うので個人的には嫌いじゃないけどね(笑)

 

しかしタイトルトラックのM1「Twilight Of Days」を聴いた瞬間、そんなショボい要素はどこ吹く風。一気に彼らの放つ劇的なメロディーの前に心を奪われてしまうのです。

 

そう、このM1こそクサメタル史に名を残す超名曲として、クサメタラーから愛され続ける至高のメロスピナンバー。イントロのツインリードから、Aメロ、Bメロ、サビ、ギターソロ、ラストに至るまですべてが劇メロに彩られていてクサすぎる!!必死に振り絞るようなフルパワーのヴォーカルが細くも熱い!!

 

強烈な泣きに満ちたサビ!ツインリードで大仰に盛り上げるツインギターソロ!

これぞクサメロスピアンセム!!!

 

その名曲M1にも匹敵するであろうキラーチューンがM6「Falling Ghost」。どこまでも高く伸びゆく飛翔系メロスピのサビも素晴らしいのですが、キャッチーなキーボードと共に、ハイトーンの限界へ挑戦しようとするラストのヴォーカルパフォーマンスが圧巻!!

 

この2曲が圧倒的な名曲オーラを放っているためか、どうしても他の曲が見劣りしてしまう感があるのですが、キーボードとギターのソロタイムが非常にメロディアスで、サビも文句なしのクサさを誇るM3「The Way To Heaven's Gates」や、ヴァイキングメタルっぽく勇壮に進み行き、突如として疾走するパートのキーボードソロが熱いM4「Hymn」、バスドラ連打の激走でストレートな勢いを見せつつ、サビ終わりではシンフォニックなクサメロで優雅に魅了するM9「Lord Of Evil」など、クサメロ乱舞の名曲・佳曲で、メロディックメタルファンのツボを容赦なく刺激してくれます。ラストのM12「Making The History」もポジティヴなクサさが溢れたサビで疾走する名曲!

 

中にはM2「Till The End」やM10「Take My Life Away」のように、以前やってたプログレッシヴメタルの面影を残す楽曲も配されていますが、個人的には疾走曲でここまでクサメロスピを突き通す作風にしたのなら、潔く100%パワーメタルスタイルにシフトしても良かったんじゃないかとは思うかも。

 

前述の通り音質のせいでどうもショボいメタルに聴こえてしまうものの、クサメロリスナーの秘部を執拗に撫で回すツインリード、ときにシンフォニックな味付けをしながら、確かなクサさを彩ってくれるキーボード、限界ギリギリになりながら、魂の叫びで熱量を沸点まで持っていくヴォーカルと、まさにクサメタルというジャンルに求められる要素を濃縮した楽曲の嵐。

 

あと今回感想書く際に、The Metal Archivesの彼らのページを見てみたんですが、なんと2019年になって再結成してるではないですか!ヴォーカルは違う人みたいですが、これからアルバム作ったりとかすんのかな?

 

 

個人的に本作は

"スカスカな音質というハンデを負いながら、クサメタラーを悶絶死させる超キラーを携えた「THE クサメタル」"

という感じです。

THOUSAND EYES 『ENDLESS NIGHTMARE』

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  • 獰猛さも感情もさらにレベルアップした強烈なサウンド
  • ミドル曲、インスト曲を交えつつアグレッションは進化の一途
  • 圧巻のクライマックスでバーンザスカイ!

 

前回の感想でデスラッシュの大御所THE CROWNを取り上げたので、その流れに乗って日本のデスラッシュメサイアについても触れてみます。1stと3rdについて書いてて、2ndだけ抜けてるっていう状況がなんとなく気持ち悪かったので。

 

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デビュー作である『BLOODY EMPIRE』の時点ですでに音楽的に完成されていた彼ら。そんな前作で感じさせた鋭利かつ猪突猛進なアグレッションがさらに冴えわたり、それに負けじと涙腺を絞りつくし、滂沱させる泣きまくりのギターも変わらず自己主張。収録時間をそれほど多くとっていない作りも功を奏して、極めて高密度なメロディックデスラッシュサウンドを形成しています。

 

M5「DEAD SOLLOW OF ME」、M10「DARK SLAYER'S REQUIEM」といった比較的スピード感を落とした楽曲も顔を出しますが(リフの緊張感やアグレッションはキープしているので、出来が劣って聴こえるようなことがないのがポイント)、基本的には破壊的な慟哭リフと共に爆走するファストな作風を徹底しています。この焦点の絞れた潔さもサウンドの爽快感・高揚感を増強していますね。あまりの激しさ、獰猛さ加減に眩暈がする。

 

峻烈さを極めていくかのような研ぎ澄まされた音は、やはりドラマーがFU=MINことFUMIYAさんに代わっているのが要因でしょうか。もちろん前任者のプレイも何一つ物足りなさの無いものでしたが、ブレーキがブッ壊れてしまったかのようなフルスロットルの連打、凄まじい音数でスピーカーから飛び出してくる高速のブラストビートは、まさに彼の真骨頂といった具合。スロー寄りになった場面でも緊張感が薄れず、リズム面での聴きごたえが大幅に増しているのが強い!

 

シンフォニックブラックメタルのごとく、壮麗さと凶悪さを同居させた突進でM1「ENDLESS NIGHTMARE」が始まった瞬間、リスナーの鼓膜はノンストップで繰り出されるリフというリフ、リードというリード、咆哮という咆哮で容赦なく圧迫されていく。尋常ではない快感指数の高さは、アルバムの最後まで納まることを知りません。

 

1曲ごとに取り出して聴くというよりは、とにかくこの超攻撃的音塊をド頭から浴びて、ひたすら暴れる!ひたすら泣く!咽び泣く!!という味わい方が正しいです。哀しみと怒りの感情の渦に飲まれながら、快感に身をゆだねるべき。

 

ただあえて"この1曲!"を選ぶとするなら、アルバムのラストを飾るM12「ONE THOUSAND EYES」になりますかね。前述のM1や、泣きまくりうねりまくりのギターが本領を発揮するM2「BLEEDING INSANITY」なども捨てがたいですが、やはりバンド名を冠するこの曲を外すわけにはいかない。

 

極上の慟哭リフとサビの泣きメロの時点で素晴らしいのですが、ラスト1分半ほどから聴けるKOUTAさんとTORUさんによる、圧倒的な構築美を見せつけるツインギターソロ!互いに泣き合い、絡み合い、空を炎に染めんがごとく、エモーショナルなんて言葉では足りないほどの熱量でクライマックスを彩っていく。言葉にならない圧巻のエンディング。

 

一切の隙を見せない47分30秒もの慟哭疾走。激情のエクストリームメタルの完成系がここにある。

 

 

個人的に本作は

"破壊的アグレッションと抑えきれないほどの悲哀。感情的な熱量の高さを求めている人は必ず聴くべきマストアイテム"

という感じです。

 


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