BATTLE BEASTの中心人物でありながら、他メンバーに疎まれ解雇されたギタリストのアントン・カバネンが結成した正統派メタルバンド・BEAST IN BLACKの3作目のフルアルバム。前作『From Hell With Love』をから2年、METAL WEEKENDによる来日公演も挟んでのリリースです。
語りによるイントロを経て、静かなヴォーカルパートからシャウトと共にヘヴィリフで疾走するM2「Welcome To Horrorwood」が、本作の路線を象徴する名曲。実に美しくキャッチーなサビを持ちつつ、緊迫した映画のBGMごときスリリングさを併せ持ち、度迫力のリズム落ちパートも存在。クリーンとシャウトを巧みに使い分けるヴォーカルの実力も充分以上に発揮されています。シネマティック・メタルコアの本領発揮と言うべき素晴らしきオープニング。
そして圧巻だったのは後半。「TONIGHT, TONIGHT」の爆発力で一気に熱量を回復させたあと、彼らの新たなスタンダードとなり得る名曲「NOTHING BUT MY HEART」、ポップさと哀愁のバランスが絶妙な「NOW IS FOREVER」、さらにさらに「NEVER ENDING STORY」をやったあと、「心の中で歌ってくれ!」と呼びかけての「STAY YOUTH FOREVER」と、彼らを代表する名曲を惜しげもなく連発。
「NOTHING BUT MY HEART」の時点で、「あ〜〜これがクライマックスでもいいな!」と思える楽曲なのですが、そこからさらにこれだけノーザンらしい叙情性抜群の楽曲のオンパレードですからね。名曲をいくつも持つバンドのライヴはすごいと再認識できました。
...が、そんな僕の考えに反し、案外すぐにメンバーが戻ってきて「まだ時間あるから、あと一曲だけやります!」とすぐさま準備に取り掛かり、オーラスとして飛び出したのは「CRAVE YOU」。出だしの"There's my heart is beating"のフレーズからタカが外れたかのような爆走を見せる曲で、一段落ついたテンションを一瞬にして爆発させてしまう。いや〜やっぱこの曲の最大瞬間風速は圧巻です。
本作はタイトルとジャケット、及び右下に書かれている"...WHERE THEY'RE GOING, THEY DON'T NEED ROADS..."というフレーズから分かる通り、映画『バック・トゥ・ザ・フューチャー』をテーマとしたコンセプト作。僕ももちろん観たことはあるんですが、最後に観てから何年も経ってるんで、内容は断片的にしか覚えてないかも...
M2から少し"陽"の雰囲気を強め、相変わらずの疾走感で突っ走るメロスピの王道M3「Outatime」、ポップさと哀愁の共存した歌メロのセンスを遺憾なく発揮したバラードM6「Enchant Me」、雰囲気を強めたイントロからの攻撃的リフ、及びシンガロングを誘発する爆発力のあるサビで一層勢いづくM7「We Don't Need Roads (The Great Scott Madness)」、メロディー・スピード・ハイトーンの三拍子全て揃ったこれぞメロスピ!なナンバーM9「The 4th Dimensional Legacy」と、頭からラストまでテンションが落ちない構成が素晴らしいです。
前作『Gravity』は、客観的なアルバム自体のクオリティーが低いとは思いませんが、正直彼らに求めているサウンドが提供されているとはとても言い難い作風で、「Don't Need You」という目立ったキラーもあることはありますが、全体的にかなり不満の強い、彼らの作品中最も張り合いのないアルバムになってしまっていました。
エクストリームさ重視で「軟弱なキャッチーさなんかいらないんだよ」という人にとっては、吹っ切れたかのような勢い抜群の本作を高く評価するかもしれませんが、「Scream Aim Fire」「The Last Fight」のような曲にこそ魅力を感じていた僕からすると、やっぱり物足りなさが目立っちゃうかな。
ちょっとネガティヴなことを書き連ねてしまいましたが、何度も言うようにシャープで突進力あるサウンドの力強さはバッチリなので、カッコいいことは間違い無いですよ。特にM8「Shatter」という彼らとしてはかなりヘヴィなリフを強調させた曲から、M9「Paralysed」〜M10「Death By A Thousand Cuts」という殺傷能力抜群の疾走曲の連打へと繋がる終盤は文句なしにカッコいいです。
民族音楽ライクの響きを常に奏でるギターリフと、そこに重なるパーカッシヴなリズム。静かな出だしから加速していき、ラストのサビで爆発する展開には鳥肌と興奮を禁じ得ません。前作シングル『CLASTER BLUSTER / BACK TO LIFE』がハードコア要素の薄い(ある意味ハードコア的な曲ですが)楽曲だった反動とでもいうように、初期から続けてきたBRAHMANの原点とも言えるスタイル。
これについてはもう実際に見てもらうしかないですね。怒涛の勢いで目の前でこんだけのことをやられてしまうと、本当に耳も目も心も奪われてしまいます。過去最大級の怒りが炸裂する「不倶戴天」に、ライヴハウスへのメッセージを真っ直ぐに伝える「ANSWER FOR•••」からの「BACK TO LIFE」、そしてその後のILL-BOSSTINOさんの人を想うMCは必見です。
ラウドな要素を薄めて、繊細な叙情美が前に出るようになった3rdアルバムの方向性を象徴する名曲「FAR FROM...」がここにきて投下される。「A WHITE DEEP MORNING」と同様スモークが照明に照らされて一層幻想的な雰囲気を醸し出す。泣き叫ぶようなヴォーカルと激しく打ち付けるドラムが重なり、最後のメランコリックなサビへ突入し、曲が終わる頃にはゆっくりと幕が下りていきました。