ひとりごと ~Music & Life-Style~

HR/HMを中心としたCD感想、足を運んだライヴの感想をメインにひとりごとをブツブツつぶやくブログです。

BEAST IN BLACK 『Dark Connection』

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  • モダンなシンセで彩るサイバーパンク
  • 根底の80年代型メタルは一切ブレない
  • 相変わらずのキャッチーなメロディーセンス

 

BATTLE BEASTの中心人物でありながら、他メンバーに疎まれ解雇されたギタリストのアントン・カバネンが結成した正統派メタルバンド・BEAST IN BLACKの3作目のフルアルバム。前作『From Hell With Love』をから2年、METAL WEEKENDによる来日公演も挟んでのリリースです。

 

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このバンド、正統派好きのメタルヘッズからは非常に評価が高く、実際に音源・ライヴ共に、その評価に見合ったクオリティーの高さを提示してくれているのですが、本作もその流れをしっかりと汲んだ出来。

 

シンセがかなり幅を利かせた音作り、正統派然としたエネルギッシュなサウンド、金属的スクリームと女性的ソフトな歌唱法を武器としたヴォーカル(ライナーノーツでは「一人男女デュエット」と称される)、非常にキャッチーなメロディーを取り揃えた一作。前作を気に入った人であれば、きっと本作でも同様に気に入るはず。

 

ジャケットやブックレットの写真から伝わるように、本作はややサイバーパンク的世界観をテーマとしているようで、時にはギター以上と言ってもいいくらいにモダンなシンセが目立つ。曲によっては「ダンサブル」なんて言葉すら浮かんでしまうほどですが、それでもモダンメタルとしての空気感は無く、80年代型ヘヴィメタルのスタイルを一貫しているのがこのバンドらしいところ。

 

M1「Blade Runner」の、正統派然としたリフと近未来的シンセの音色が加わり、アップテンポに駆ける曲調、続くM2「Bella Donna」のよりキャッチーでフックあるサビメロの展開で、過去作と変わらぬ完成度を確信させてくれます。

 

ヴォーカルのヤニスが器用に柔らかな歌い回しを披露するM6「Moonlight Rendezvous」のような曲も彼らのお得意ですが、やはり僕としてはパワーメタリックな疾走感を演出し、よりメタルとしてのエネルギッシュさを全面に打ち出したM7「Revengeance Machine」のような曲に耳を惹かれますね。

 

正直に言ってしまうと、80年代を原体験していない僕としては、彼らの音はちょっと80年代的ポップさ、ダサさが強く、どちらかというとBATTLE BEASTの方が好きです。音楽的方向性が変わっていない本作においてもその感覚は払拭されず「良いアルバムだけど、そこまでガッツリとはハマらない」という感じ。

 

しかしこのバンドが普通の正統派メタルバンドと差別化されているのは、まさにその強烈なまでにポップでキャッチー、かつメタルらしいダサさが顕著であることだと思うし、ファンはそういった要素を好んでいるはずだと思うので、この方向性を強化していくのがバンドにとって最善であるとは思います。

 

エクストリームメタルが主食である人は「メタルにこんなポップな音求めてねーんだよ」という感じなのかもですが、メロディックメタルを好む人には変わらず歓迎されること請け合いの、良質ポップメタルの宝庫ともいうべきアルバム。ボーナストラックはMANOWARとマイケル・ジャクソンのカバーの二曲で、これはちょっとばかし蛇足かも。

 

 

個人的に本作は

"近未来的シンセが大きく幅を利かせつつ、相変わらずのポップセンスを発揮した80年代型ヘヴィメタル"

という感じです。

 


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ICE NINE KILLS 『The Silver Scream 2: Welcome To Horrorwood』

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  • メタルコア meets ホラー映画の第二章
  • 映画的要素を取り入れつつも基本線はモダンメタルコア
  • ヘヴィさとドラマチックさの両立は完璧

 

アメリカ出身のポストハードコア/メタルコアバンド・ICE NINE KILLSの6作目となる最新フルアルバム。

 

このバンド、僕が知ったのは割と最近になってからで、過去作はほとんど聴いていないんですが、前二作の『Every Trick In The Book』『The Silver Scream』はシアトリカルなドラマチックメタルコアとしてかなり気に入っています。

 

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本作は著名なホラー映画をモチーフに楽曲製作を進めた前作の直接的な続編のようなタイトルとなっており、同様にホラー映画を基にして楽曲のカラー、バンドのヴィジュアルイメージ、ジャケットなどが凝らされています。タイトルからしてホラーウッドですからね。

 

本作のコンセプトとなったホラー映画は、『チャイルド・プレイ』『ヘル・レイザー』『死霊のはらわた』といったホラー映画には造詣のない僕でも知っている超有名作があるものの、『ホステル』『キャビン・フィーバー』などはピンとこなかった。まだまだ知識が足りん。

 

さて、楽曲に関してですが、名作と呼ぶに値する前作の続編となる本作においても、クオリティーの面に手ぬかりはありません。シアトリカルな世界観、ホラー映画的SEを巧みに盛り込みつつ、メロディアスなモダンメタルコアとして非常に高い完成度を有しています。聴くホラー映画と言うべき恐ろしげな雰囲気や、シアトリカルさを失わない中で、音楽性の根本はしっかりとヘヴィなメタルコアになっているのが、彼らの作曲能力の高さの現れ。

 

語りによるイントロを経て、静かなヴォーカルパートからシャウトと共にヘヴィリフで疾走するM2「Welcome To Horrorwood」が、本作の路線を象徴する名曲。実に美しくキャッチーなサビを持ちつつ、緊迫した映画のBGMごときスリリングさを併せ持ち、度迫力のリズム落ちパートも存在。クリーンとシャウトを巧みに使い分けるヴォーカルの実力も充分以上に発揮されています。シネマティック・メタルコアの本領発揮と言うべき素晴らしきオープニング。

 

そのまま勢いと不穏なムードを引き継ぐM3「A Rash Decision」も、勢い過多なのにどこか口ずさめるシンガロング、解き放たれたように爆発する流麗なサビの疾走が非常に気持ちいい名曲。やたら不気味な笑い声とコーラスが生理的嫌悪を呼び起こし、やはりキャッチーかつヘヴィに攻め立てるM4「Assault & Batteries」もこれまた名曲。しっかりヘヴィなリフやホラー的要素のSEを入れているが、サビはこれまで以上にエモーショナルで美しいM5「The Shower Scene(もちろんモチーフは『サイコ』です)と、前半から名曲の連打。

 

その他にもエモ的なクリーンヴォーカルがより引き立つM7「Rainy Day」やM10「The Box」に、CANNIBAL CORPSEのジョージ・"コープスグラインダー"・フィッシャー をゲストヴォーカルに迎え、残虐極まりないグロウルを炸裂させるM9「Take Your Pick」など、曲ごとに若干カラーは違えど、エモーショナルかつエクストリーム、それでいてホラーテイストは一貫して保っています

 

やはり軟弱さとは無縁ながらキャッチーさを決して忘れず、それでいて映画音楽らしいコミカルなエンタメ性を両立しているので、一本調子にならずに聴けるのが、他のモダンメタルコアとは一線を画す強みだということが再認識できますね。

 

しいて言うならラスト付近、前作は「Merry Axe-Mas」に「IT Is The End」という頭ひとつ抜きん出た破壊力抜群のキラーチューンが存在していましたが、それに比べると本作は、最後の方の楽曲が若干弱いかな...と思えるのが残念だったなと。もちろん捨て曲などでは決してないですが。

 

他とは異なる個性をしっかりと生み出し、かつここまでクオリティーの高い楽曲を連発できるこのバンドの凄さが改めて浮き彫りになる快作だなと感じます。Djentやエレクトロこそメタルコアシーンではよく見ますが、こういうドラマチックさを武器とするバンドってなかなか見かけないですからね。これからもこの個性を武器にしていってほしいです。

 

 

個人的に本作は

"前作に引き続き、ホラー映画のスリリングさと、エモーショナルなメタルコアを融合させたシネマティックメタルの傑作"

という感じです。

 


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11/26 Northern19 / MOVE ON tour 2021 at 新宿BLAZE

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あっという間に2021年もあと1ヶ月強になってしまった今、次なるライヴへと向かいました。2年連続良質のシングルを発表している実力派メロディックハードコアバンド・Northern19のレコ発ツアーファイナルです。

 

本来であれば去年発表した『YES』に伴うツアーを敢行する予定だったのですが、それらの日程が崩れ、ツアー期間を利用して新たにシングル『GOODBYE CRUEL WORLD』を製作し、今年に入ってやっとこさツアーを回るまでにに至ったとのこと。

 

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今週は気になる新譜の発売が重なっているので、始まる前にタワーレコードで物色しつつ、良い頃合いになってから会場の新宿BLAZEへと向かう。何度通っても歌舞伎町の雰囲気は恐ろしいな...。なるべくここ付近とは無縁の人生を送りたいところなのですが。

 

ご時世もありオールスタンディングではなく、キャパシティを絞った上で座席が用意されている。僕が入った段階ではまだ半分程度の客入りだったので、なるべく真ん中の前の方に座ろうかとも思いましたが、最後方を見てみるとPAのすぐ前、ど真ん中の座席がポッカリ。両隣と前に人がいなく、一段高い場所からPA近くの音響で会場を一望できるナイスな場所でした。良い席をゲットできて何より。

 

なぜかゴリゴリのブラックメタルが開場前SEとして流れる中待機し、時間を少し回ってから暗転。ステージ後方の照明が光り輝き、逆光でバンドメンバーの表情が見えない中、フロアには無数の手が上がっている。一望できる後方だからこそ見られるこの光景は、まさしくライヴ写真そのもの。

 

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こういうやつ

 

「新宿BLAZE!よろしくどうぞ!」と笠原さんが声を張り上げ、「GO」のコーラスを歌い上げる。個人的にこの曲は彼らの楽曲としてはちょっとポップさが強く、もうちょい哀愁を漂わせて欲しく感じるのですが、溌剌とした勢いに満ちていてツカミとしてはバッチリ。

 

そのまま「BELIEVER」「MORATORIUM」と定番のナンバーで会場を揺らす。やはりこの手の疾走曲でモッシュピットが発生しないのは物足りなさがありますが、制限の中でも数多く手が上がり盛り上がっているのが伝わります。

 

最初に注目したのは、やはり初めて観ることになったベースの敦賀壮大さん。ルックスやベースのプレイ自体はいたってスタンダードなバンドマンのそれで、とりわけ個性が強いというほどではない。

 

ただ前任者の井村さんも個性的なプレイヤーというわけではなく、Northern19はノーマルなメロコアスタイルを突き詰めているからこそ魅力的なところがあるので、ステージングの違和感などはなく、普通にハマっているような気がしました。

 

ただヴォーカルとしての存在感や、ステージングの見栄え、パフォーマンスの派手さなど、あらゆる面で笠原さんの方が上回っており(踏んできた場数が違うはずなので当然ではありますが)、良くも悪くもツインヴォーカルではなくバッキングコーラスのイメージが強い感じ。メインボーカルも「MORATORIUM」と「TRUTH」しかなかったし。

 

そんな中笠原さんは汗だくになりながらステージ上を飛び跳ね(敦賀さんはポーカーフェイスで落ち着いた感じなので発汗量に明らかに差があり、ドラムの馬場さんにテカリ具合が全然違うと言われていた)、足を開き重心を低くした状態で速弾きソロを連発。ザクザクした細かなリフワークも至極安定しており、改めてやはり良いギタリストだな〜と思いましたね。

 

もうアラフォーに足を踏み入れている彼ですが、ギタープレイから感じられるパッションはまったく衰えを知らないようで、ギターの充実度はかなりのものでした。「今回のツアーで根本的な部分はGet backできた」と語っており、ライヴができない期間を乗り越え、完全にライヴの感覚を取り戻したのでしょう。

 

MCでもしきりに「ライヴハウスは最高」「ライヴってイイ」「今が一番楽しい」としきりに語っていましたが、本心で言っているのがよくわかるパフォーマンスでした。

 

バンドの屋台骨であり、ノーザンの武器である疾走感を担うドラムの馬場さんは、上半身のアクションこそ控えめながら、さすがとしか言えない高速の叩きっぷりでした。音自体が非常に力強く(スネアの音がデカくてメッチャ気持ちいい)、「MOVE ON」におけるブラストビートはかなりの迫力。昔のインタビューで「ブラストビートを見よう見まねでやってみたらケガした」みたいなことを言ってましたが、手首のスナップを効かせ軽々しく叩いており、「もうこなれたもん」というような感じ。

 

突進力抜群のツービートをひたすら続け、なめらかで力強く、手数の多いフィルインも連発。やはりこういう速いドラムは爽快ですね。これこれ、メロコアドラムはこうでなきゃ!

 

セットリストは新作二枚の楽曲をプレイしつつ(何故か「YES」だけなかったけど)、従来の定番曲を据えた形で、前半の山場はキラーチューン「STILL ALIVE」からの「DRAIN」、そしてノーザン史上最高レベルの哀愁を持つ「RED FLOWER」の流れ。ポップさを少し抑え、強烈に土臭くパワーあふれる楽曲の連打に胸躍る。

 

中盤は新作の「RECALL」「LETTER」「NEVER FORGET, SUMMER '20」など、メロウさ重視の楽曲で、ヒートアップした空気を少し緩める。「NEVER FORGET〜」は青の照明が実に楽曲の雰囲気にマッチしていて良かったんですが、キモであるラストのサビのバックコーラスがいまいち聴こえにくかったのは残念...

 

そして圧巻だったのは後半。「TONIGHT, TONIGHT」の爆発力で一気に熱量を回復させたあと、彼らの新たなスタンダードとなり得る名曲「NOTHING BUT MY HEART」、ポップさと哀愁のバランスが絶妙な「NOW IS FOREVER」、さらにさらに「NEVER ENDING STORY」をやったあと、「心の中で歌ってくれ!」と呼びかけての「STAY YOUTH FOREVER」と、彼らを代表する名曲を惜しげもなく連発。

 

「NOTHING BUT MY HEART」の時点で、「あ〜〜これがクライマックスでもいいな!」と思える楽曲なのですが、そこからさらにこれだけノーザンらしい叙情性抜群の楽曲のオンパレードですからね。名曲をいくつも持つバンドのライヴはすごいと再認識できました。

 

アンセムである「STAY YOUTH FOREVER」はもちろんオーディエンスが声を上げることはできませんでしたが、やはりただ聴いているだけでもシンプルにアガる。やはりこの曲が最後に一番ふさわしいですね。

 

「今日はアンコールはないからね」と事前にMCで言っていた通り、この時点で会場の照明が明るくなっていましたが、アンコールを求めるハンドクラップは鳴り止まない。正直「これだけ名曲の乱打やったんだから、このあと何かやっても蛇足になるよな...」と思っていました。

 

...が、そんな僕の考えに反し、案外すぐにメンバーが戻ってきて「まだ時間あるから、あと一曲だけやります!」とすぐさま準備に取り掛かり、オーラスとして飛び出したのは「CRAVE YOU」。出だしの"There's my heart is beating"のフレーズからタカが外れたかのような爆走を見せる曲で、一段落ついたテンションを一瞬にして爆発させてしまう。いや〜やっぱこの曲の最大瞬間風速は圧巻です。

 

バンドを代表する疾走曲の連発に、タイトにまとまりつつ荒さを失わない演奏を存分に堪能できたアクトでした。結成18年で、メンバーチェンジを経てもなお変わらない熱量が素晴らしかったですね。

 

特に後半、バンドの強みであるメロディアスな疾走曲を畳み掛けるライヴ構成が本当に強力で、あの高揚感は凡百の国産ロックでは再現できまいとすら思ってしまうほど。つくづくモッシュピットが作れない環境がもどかしいですが、そんな考えすら吹き飛ばすほど痛快でした。

 

10年くらい前と比べてメロコアを聴く頻度が落ちてしまったことは否めませんが、これだけのライヴが観れるというのであれば、まだまだ卒業はできませんね。カッコいいもん。

SKELETOON 『The 1.21 Gigawatts Club』

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  • ナードメタラー、1年ちょいですぐにカムバック
  • 極めて安定&高水準なメロディーのキャッチーさが武器
  • 現在のメロスピの顔になり得るクオリティー

 

イタリア出身ながら、HELLOWEENが確立したジャーマンメタルのスタイルを今に継承するバンドとして、ここ数作優れた作品を発表しているSKELETOONの最新フルアルバム。

 

前作『Nemesis』から1年ほどしか経っておらず、かなりのハイペースっぷりを見せていますが、やはりこれはTRIVIUMと同様ライヴ活動ができない状況を逆手に取って、音源の制作に時間を割くことができた故でしょうか。

 

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本作はタイトルとジャケット、及び右下に書かれている"...WHERE THEY'RE GOING, THEY DON'T NEED ROADS..."というフレーズから分かる通り、映画『バック・トゥ・ザ・フューチャー』をテーマとしたコンセプト作。僕ももちろん観たことはあるんですが、最後に観てから何年も経ってるんで、内容は断片的にしか覚えてないかも...

 

コンセプト作とは言っても、内容的には従来の彼ららしいポジティヴなエナジーに満ちたメロディックスピードメタルで、特に各楽曲の連続性なども感じられないので、普通のフルレンスとして聴くことが可能です。敷居の高さは全くなし。

 

しかし、前作、前々作と優れた作品を出してきた彼らですが、本作もその例に漏れず非常に完成度の高いアルバムに仕上がっています。ジャーマンメタルメロディックスピードメタルのファンが望むものがしっかりと、高い次元で提供されている。

 

まず静かなイントロからオープニングを飾るM2「Holding On」、これぞまさしくメロディックスピードメタル!こういうメロディーをメロスピで聴きたかったんだ!と叫びたくなる爽快な名曲。ほのかな哀愁を忍ばせたメロディーと共に、高く舞い上がるようなハイトーンとリードギター、透明感あるシンセもバックで効率的に働き、壮大なスケールを描くことに成功していますね!

 

この曲以上の高揚感を与えてくれる瞬間こそなかったものの、後続の楽曲についても、キャッチーなメロディーが一切損なわれず潤沢に存在しており、この馴染みやすいフックに満ちたメロディーセンスに唸らされるばかり。

 

M2から少し"陽"の雰囲気を強め、相変わらずの疾走感で突っ走るメロスピの王道M3「Outatime」、ポップさと哀愁の共存した歌メロのセンスを遺憾なく発揮したバラードM6「Enchant Me」、雰囲気を強めたイントロからの攻撃的リフ、及びシンガロングを誘発する爆発力のあるサビで一層勢いづくM7「We Don't Need Roads (The Great Scott Madness)」、メロディー・スピード・ハイトーンの三拍子全て揃ったこれぞメロスピ!なナンバーM9「The 4th Dimensional Legacy」と、頭からラストまでテンションが落ちない構成が素晴らしいです。

 

クライマックスを飾るM10「Eastwood Ravine」は、前半はポジティヴメロスピの王道スタイルで突っ走るも、途中急にブレイクを挟んで、シンセによるシリアスなメロディーを聴かせるアップテンポなパートへと移行し、クワイアっぽいコーラスで盛り上げた後に、開けたようなポップさでラストを彩る7分以上の大作。

 

最後に収録されているM11「Johnny B. Goode」は、チャック・ベリーの有名曲のカバーで、まあバック・トゥ・ザ・フューチャーをコンセプトにした作品なら、この曲をやらない手はないでしょうね。普通にポップなメロディックメタルとして楽しめるアレンジです。

 

いわゆる「メロスピ」「メロパワ」と呼ばれる音楽を愛する人ならきっと満足がいくであろう、キャッチー&スピーディーな要素がてんこ盛りで、メロスパーならマストでしょう。HELLOWEEN直系のスタンダードなメロスピを、今の時代最もクオリティー高くプレイしてくれるバンドは彼らなのではないか、という考えがいよいよ現実味を帯びてくる快作でした。

 

 

個人的に本作は

"明るくキャッチーに疾走するメロスピの王道を外さない爽快感マックスの一作。メロディーの充実ぶりが極めて秀逸"

という感じです。

 


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BULLET FOR MY VALENTINE 『Bullet For My Valentine』

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  • Bullet 2.0を謳ったアグレッシヴな一作
  • 前作の落ち着きが見事に消え去った爆発力のあるサウンド
  • かつてのようなメロディーの煌めきはやはり薄い

 

TRIVIUMAVENGED SEVENFOLDらと共に新世代メタルの旗手として注目され、今やなかなかのキャリアを誇るようになった、イギリスはウェールズ出身のエモ/メタルコアバンド・BULLET FOR MY VALENTINEの最新作。

 

本作は7枚目のフルアルバムにして、バンド名を冠した作品。2004年に発表したEPもセルフタイトル作なので、同じ名前の作品が2つ存在することになりますね。確かKILLSWITCH ENGAGEも同じようなことになっていたような。

 

バンドの中心でありフロントマンのマット・タックをして「Bullet 2.0の始まり」と表現しており、バンドがフレッシュな状態へと進化し、新たなステージへと到達したことを強調している。そして音を聴けば言わんとしていることも何となくわかるような気がします。

 

前作『Gravity』は、客観的なアルバム自体のクオリティーが低いとは思いませんが、正直彼らに求めているサウンドが提供されているとはとても言い難い作風で、「Don't Need You」という目立ったキラーもあることはありますが、全体的にかなり不満の強い、彼らの作品中最も張り合いのないアルバムになってしまっていました。

 

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そのことを省みて制作に着手したのか、前作に比べて明らかにサウンド面の攻撃力が増している。ソリッドに研ぎ澄まされたシャープなサウンドは前作から引き続き、そこへ気合の入ったシャウトが大幅増量、疾走感も飛躍的に向上し、ヘヴィさを強調したアグレッシヴさがある(もちろんガチのメタルコアのような重心の低いサウンドではなく、あくまで彼ららしい音作りの範囲で)

 

疾走感やシャウトの獰猛さという点に関して言えば1stアルバム並みに充実していて、確かにCDの帯に記載してある"フレッシュで、アグレッシヴで、今までよりずっと直感的で情熱的だ"という文句通りのアルバムだと思えます。

 

前作がかなりヌルい作風だったので、こういった刺々しさや攻撃性が潤沢になった本作の方向性自体は好ましい。普通にカッコいいですし。

 

...しかし、では本作の出来に満足しているかと聞かれれば、そうとも言えないというのが正直なところでして。先行で本作収録のM1「Parasite」、M2「Knives」が公開された段階で何となくそんな予感はしていましたが...

 

と言うのも、前作で感じた足りなさが本作にも共通して存在しているのです。それがメロディーの弱さ。

 

アグレッシヴな面にフォーカスしてくれているのは良いのですが、初期の頃にあったエモ的なキャッチーなメロディー、これが不足している以上、かつての名盤ほどの満足感を得ることはどうしてもできない。

 

かつての彼ら、それこそ1st〜3rdにかけての頃は、鋭い切れ味のリフを持ちつつ、メロディックツインギターにキャッチーさを多分に含んだ歌メロが絡み、メロウさを味わいつつ激しさで興奮できる絶妙のバランスがありました。

 

しかし、本作はメロディー面がどうしても弱く、すごく嫌な言い方をしてしまうと「激しいのは良いんだけど、それだけ」という感じで、聴き終えた後に強烈に印象に残ったり、シンガロングしたくなる瞬間があまりない。

 

エクストリームさ重視で「軟弱なキャッチーさなんかいらないんだよ」という人にとっては、吹っ切れたかのような勢い抜群の本作を高く評価するかもしれませんが、「Scream Aim Fire」「The Last Fight」のような曲にこそ魅力を感じていた僕からすると、やっぱり物足りなさが目立っちゃうかな。

 

ちょっとネガティヴなことを書き連ねてしまいましたが、何度も言うようにシャープで突進力あるサウンドの力強さはバッチリなので、カッコいいことは間違い無いですよ。特にM8「Shatter」という彼らとしてはかなりヘヴィなリフを強調させた曲から、M9「Paralysed」〜M10「Death By A Thousand Cuts」という殺傷能力抜群の疾走曲の連打へと繋がる終盤は文句なしにカッコいいです。

 

まあ本作のようなスタイルの曲は家で腰を据えて聴くよりも、ライヴで暴れながら爆音で浴びる方が正しい聴き方な気がするので、生で聴くことで印象は異なってくるのかもしれません。

 

 

個人的に本作は

"前作で削がれていたエクストリームな疾走感が完全復活。しかしメロディー面の弱さはまだ克服されてない"

という感じです。

 


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BRAHMAN 『Slow Dance』

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  • 音源と映像が連動したコンセプチュアルなシングル
  • 初期から現在まで培ってきたバンドの音楽性
  • 静のBRAHMANとライヴバンドBRAHMANの姿

 

先日の「Tour -slow DANCE HALL」でのドラマチックな演出あふれるライヴが素晴らしかったBRAHMANの最新シングル。

 

本作は一応CDのみのものも発売されているものの、ジャケットに以前行ったツアーのロゴが記載されているように、ライヴと連動したコンセプチュアルな作品とのこと。そのため、しっかり全編楽しむためには映像が必須だろうということで、Blu-ray付きの初回盤を購入しました。

 

まず新曲について。タイトルトラックとなるM1「Slow Dance」は、曲名とは裏腹に疾走感あふれるビートに乗せて、コロナによる現状を意識したと思しき怒りと、この状況下においても強く生き続ける決意を露わにした歌詞を力強く紡いでいく名曲。

 

民族音楽ライクの響きを常に奏でるギターリフと、そこに重なるパーカッシヴなリズム。静かな出だしから加速していき、ラストのサビで爆発する展開には鳥肌と興奮を禁じ得ません。前作シングル『CLASTER BLUSTER / BACK TO LIFE』がハードコア要素の薄い(ある意味ハードコア的な曲ですが)楽曲だった反動とでもいうように、初期から続けてきたBRAHMANの原点とも言えるスタイル。

 

M2「旅路の果て」は、タイトルトラックとは対照的なミドルテンポの優しげな楽曲で、重なる高音のコーラスに温かい歌詞が染み渡る。従来からの浮遊感あるサウンドと叙情性に加え、『梵唄 -bonbai-』で強くなったストレートな歌モノとしての要素がブレンドされた一曲です。

 

付属のBlu-rayの一つ、スローな楽曲のみで構成され、ステージ上のビジュアル的演出も凝った「Tour 2021 -Slow Dance」は、静かな中に感じるバンドの熱情極まるパフォーマンスがバッチリ収録されていて、ライヴに足を運んだ人でも見る価値のある内容。垂れ幕の中でなかなか見えづらかった各人の動きを隅々堪能できます。

 

そしてラストの「Slow Dance」の演出は映像で見ても圧巻ですね〜。改めてあれを現場で、生で体感できたのは誇らしくなるな。

 

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もう一方の映像は、昨年10月にKLUB COUNTER ACTIONで行われたオンラインライヴ「IN YOUR 【      】 HOUSE」を丸ごと収めたもの(若干カメラの画角が違うところもあるっぽい)

 

演出面で豪華さを見せた「Slow Dance」とは異なり、ここにあるのは狭いライヴハウスで鬼の形相で激情をブチまける生粋のライヴバンドとしての姿。ステージ上の装飾は一切なし。これこそがBRAHMANの真の姿と思える圧倒的パフォーマンス。

 

これについてはもう実際に見てもらうしかないですね。怒涛の勢いで目の前でこんだけのことをやられてしまうと、本当に耳も目も心も奪われてしまいます。過去最大級の怒りが炸裂する「不倶戴天」に、ライヴハウスへのメッセージを真っ直ぐに伝える「ANSWER FOR•••」からの「BACK TO LIFE」、そしてその後のILL-BOSSTINOさんの人を想うMCは必見です。

 

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映像単体だけでも充分作品になり得るものですが、そこに全く魅力の異なる新曲二曲がドッキングされたボリューミーな一作。ライヴバンドとしての姿が余すとこなく収められているという意味でも、かつて存在したKLUB COUNTER ACTIONの姿が見られるという意味でも、ファンはマストで抑えるべき作品です。

 

またこんな小さなライヴハウスで、彼らの爆音を浴びれる日が来るといいな。

 

 

個人的に本作は

"コロナの時代における今のBRAHMANの本分と魅力が、音源・映像ともに濃縮された一作"

という感じです。

 


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曲やライヴの演出メチャクチャカッコ良かった曲ですが、MVがコレとは(笑)

 


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これは素直にカッコいい

11/13 BRAHMAN / Tour -slow DANCE HALL- at 福岡国際会議場メインホール

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先日行われたBRAHMANの「静」の楽曲にスポットを当てたライヴツアー「Slow Dance」。僕はZepp Haneda公演に足を運び、モッシュが発生しないライヴにおいても、彼らの楽曲が持つスピリチュアルな叙情性がいかんなく発揮されるということを体感しています。

 

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そしてツアーの表題にもなった楽曲「Slow Dance」がシングルとして発売され、それに伴う新たなツアーとして、BRAHMANキャリア初のホールツアーが行われることになりました。

 

シングル購入者の先行抽選に参加し、土曜日で休みがとれそう&ツアー初日という福岡、そして東京の二会場に賭けてみたところ、東京はハズレ、福岡は当選という結果に(ちなみに東京公演はその後のイープラスやぴあの抽選にもことごとくハズれ、一般発売日になんとか駆け込みでゲットすることに成功しました)

 

そんなわけで先日のGALNERYUSの札幌公演に続き、今年のライヴ遠征二回目。九州は福岡へと飛んで行きました。母方の実家があり、自分の生誕の地ということもあり馴染み深い県です。

 

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前日に有給を取って前乗りし、当日は午前中に太宰府天満宮をプラプラし、ホテルに戻ったあとはバスケットLIVEで千葉ジェッツの試合を観戦して、その後会場までゆっくり歩いて向かうという実に優雅な休日。海が近い会場で、すぐそばの埠頭でもうすぐ沈み行く太陽を見ながらしばしボンヤリ。「ナミノウタゲ」が聴きたいですねぇ。

 

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会場となる福岡国際会議場は当然ながら初めて訪れる場所で、非常に綺麗な設備を有した立派な会場。とてもハードコアパンクのバンドがライヴをやる場所とは思えない(笑)

 

本当にここでBRAHMANがやるのか?と訝しみながら入りましたが、予定表には確かに「BRAHMAN Tour -slow DANCE HALL-」の文字があり、会場間違っている訳ではないことがわかる。

 

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先行物販を物色した後、頃合いを見計らってホールへ。1000席ほどあるというホールはメッチャ綺麗でステージも見やすい。まさかこんなところでBRAHMANのライヴを観る事になるとはな〜。

 

開演まで時間があるので、15分ほどウトウトしたり、持ち込んだヘドバンを読んだりしつつ待機。時間を10〜15分ほど回ったところでいよいよ暗転。ステージにかかっている垂れ幕に「霹靂」の文字が映し出されて、そのまま演奏がスタートする演出は前回観たのと同様。

 

雨が降りしきる映像を挟み、幕の内側にいる4人が体を揺らしながらスタート。野太い音でドッシリと楽曲をリードするベースに、そこへ覆い被さるような浮遊感あるギター、ドンと重たい打音をゆっくり打ちつけるドラム、そして切なく力強く盛り上がるヴォーカルが重なっていく。やはり何度聴いてもこの曲のドラマチックさは素晴らしい。

 

「霹靂」が終了した後は、SEの「お母さん、お願い」が流れ、イメージ映像がステージを覆う垂れ幕いっぱいに映し出される。その後に「空谷の跫音」や「Oneness」など、彼らの叙情性を活かしたスロー曲をプレイ。この辺は以前のツアーと同様の運び。

 

こういった曲ももちろん素晴らしいのですが、すでに前回のライヴで聴いている楽曲なので、「今回もまたスロー曲中心のセットリストなのかな〜」などと思い始めた矢先に、「」がスタート。柔らかい演奏によるスローパートと、ハードコアな疾走が交錯する、BRAHMANの静と動を主張する楽曲。サビの爆走っぷりに思わず握り拳に力が入る。これはスロー曲だけでなく、激情に満ちた疾走曲もやる流れか?と期待がかかりました。

 

そして前半のハイライトとなったのが「A WHITE DEEP MORNING」。朝日とそれに照らされる樹林の映像が幕に映り、その裏で4人が静かに佇みながら演奏。そしてスモークが焚かれつつ、ゆっくりと幕が上がっていき、ラストの劇的極まりないサビへと繋がっていく。

 

この曲はBRAHMANの持つドラマチックさの一つの到達点とも言えるほどの曲ですが、小さなライヴハウスではサマにならない、ホールならではの演出で楽曲の良さはより際立つ。

 

落ち着きを見せつつ速いテンポで軽快に駆ける「其限」では、これまでセンターマイク付近でパフォーマンスに徹していたTOSHI-LOWさんが、ハンドマイクでステージの前方を動き出し、オーディエンスに目を合わせるようにしながら歌い上げる。うっすらと笑顔を浮かべつつ、コミュニケーションを取るように身振りを交え歌うその姿は、モッシュに飲まれてハイになっている状態ではなかなか観られなかった姿。

 

それに対し楽器陣は、いつものライヴと変わらぬストイックなプレイに徹する。渋みを効かせたコーラスと、BRAHMANの民謡感を一番に発揮するギターを披露するKOHKIさんに、片足を振り上げながらアグレッシヴに躍動するMAKOTOさん、民族音楽的フレーズとハードコア的疾走を織り交ぜ、アイドルの時とは打って変わって(笑)激しいコーラスで主張するRONZIさん、ホールだろうとなんだろうと、普段と変わらぬ全身全霊感あふれるステージングでした。

 

中盤の「鼎の問」「ナミノウタゲ」「今夜」というスローな楽曲を集中させた場面は、バックの映像も含め前回のライヴと同様の演出。「LAST WAR」で絶頂まで持っていた熱量を、ここの時間でうまくクールダウン。「ナミノウタゲ」の漁師さんたちの映像は、さっきまで埠頭の海を見ていたからか、より感傷的な気分にさせられました。

 

そして「今夜」が終わった後に、ギターを交換したKOHKIさんが奏でた旋律。今までのライヴでは何度も何度も聴いてきただけに、耳にこびりついているイントロ。しかし生のライヴでは久しく聴いていなかったあのフレーズ。「ANSWER FOR•••」だ。

 

歌に合わせてステージバックには縦書きの歌詞がゆっくりと崩れ落ちていき、爆発するサビではかつてライヴハウスやフェスで繰り広げられていたモッシュピットの映像が。この曲では毎回こんな風に暴れられていたんだよなぁ...と寂しくも胸の内熱くなる。座席指定でもこの曲の熱さは微塵も冷めていない。

 

そしてクライマックス。彼らの楽曲の中でも悲しみの感情表現の極北である超名曲「ARRIVAL TIME」。このイントロのベースが入ってくる瞬間、そしてRONZIさんの魂の叫びがスタートする疾走パートのいつ聴いても鳥肌が立つ。ラストの叫び声はエコーがかかり、大きなホールの空間をしばらくの間漂っていました。

 

ラウドな要素を薄めて、繊細な叙情美が前に出るようになった3rdアルバムの方向性を象徴する名曲「FAR FROM...」がここにきて投下される。「A WHITE DEEP MORNING」と同様スモークが照明に照らされて一層幻想的な雰囲気を醸し出す。泣き叫ぶようなヴォーカルと激しく打ち付けるドラムが重なり、最後のメランコリックなサビへ突入し、曲が終わる頃にはゆっくりと幕が下りていきました。

 

ここでライヴの終演となっても文句なしと言えるほどに素晴らしい余韻に包まれましたが、もちろん最新シングルである楽曲をプレイしていないため、この時点で終わるということはない。幕が下りた後さほど時間を置かずにメンバーが戻ってきて、演奏されるは「Slow Dance」。

 

以前のライヴと同じようにリリックビデオが幕に映った状態での演奏でしたが、やはり楽曲のドラマ性を一際高めてくれるこの演出は強い。力強く刻まれる言葉に演奏ともども圧倒され、一瞬たりとも目の前の光景に目を離すことができない。民族音楽らしいパーカッシヴなドラムに、オリエンタルな情緒を繰り出すギターの音色に酔わされ、ラストの爆走するサビで絶頂...!

 

そんな圧倒的興奮の瞬間を迎えた後、「旅路の果て」の穏やかなクリーンギター、淡々とした柔らかなヴォーカルで先ほどまでの緊迫感が一気に緩む。聴いていて感情がひりつくような楽曲はBRAHMANの最大の魅力ですが、こういった包み込まれる穏やかさ、こういった楽曲で締め括られるのもまた一興だなと強く感じました。歌声のエモーショナルさは全く引けを取りませんからね。

 

そんな「旅路の果て」が終わった後は、今回最初で最後のMCタイム。「ありがとう、今夜。あんまり似合ってないけど、ようこそ俺たちのダンスホールへ」と語りかけ、惜しみない拍手が送られる。

 

そして最後に一曲踊ろうと声をかけ、新曲である「DANCE HALL」。BRAHMANとしてはハードコアっぽさも、民族音楽っぽさもかなり希薄な曲で、サビでは「大丈夫、もう大丈夫さ」と極めてストレートなメッセージが綴られる。難解な歌詞と他を寄せ付けない鬼気迫るストイックさを見せる、従来の彼らの姿からは想像もつかないような優しさあふれる瞬間でした。オーガニックな雰囲気こそ無いけど、OAUの優しさにも通じるような一曲でした。

 

 

BRAHMAN初のホールツアー、その一発目を体感することができたわけですが、「BRAHMANはホールでも魅力が損なわれることはない」ということがしっかりと実感できました。これは単に勢い一発のハードコアだけでなく、こういった会場の雰囲気に外れない多面性・ドラマ性を持ったバンドだからこそでしょう。

 

東京の中野サンプラザは早々にソールドしてしまったようですが、その翌日に追加公演も決定しましたし、その他の会場はまだチケット取れるみたいなので、このライヴは一人でも多く体感して欲しいですね。ライヴハウスではできないホールとしての良さと、ライヴハウスと何一つ変わらないバンドのライヴスタイルが両方味わえます。特に「Slow Dance」の演出は映像だけで満足せず、生の空間で感じて欲しい。

 


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このライヴの映像の一部が公開されていますが、やはり画面越しでは生のライヴの凄みや感動を全部感じ取ることはできないな...