ひとりごと ~Music & Life-Style~

HR/HMを中心としたCD感想、足を運んだライヴの感想をメインにひとりごとをブツブツつぶやくブログです。

OBSCURA 『A Valediction』

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  • 文句無しのテクデス...なのにメロディア
  • 複雑に捻れる楽器陣の超絶技巧で圧倒
  • 普遍的なメロディックメタルとしても評価可能

 

正直自分には畑違いの音だと思っていました。

 

テクニカルデスメタルプログレッシヴデスメタルと呼ばれる音楽性。デスメタルには暴虐性や、メロデス特有の慟哭や叙情性を求めている僕。要はわかりやすい突進力とメロディアスな要素に惹かれており、小難しくなりがちなプログレッシヴさはやや苦手としています。

 

彼らOBSCURAは、そんな僕にとって敷居の高い音楽性を標榜するバンド。自分に魅力を見いだせるとは思っておらず、リリースされた当初は気にも止めず、とまではいかなくとも、「まあ買わなくていいか」と見送っていたのです。

 

しかし、どうもTwitter上で流れてくる評判がすこぶる良くてですね。12月に入ってから、「今年の9枚」とか「年間ベスト」みたいなツイートにおいて、頻繁に本作のジャケットを目にするのです。そんなに良い良いと言われるとどうも気になっちゃう。

 

「ホントだな!?ホントにこのアルバム良いんだな!?」と心の中で唱えつつ、いざ本作を購入してみると、これが確かに良い。すごく良い

 

もちろん非常にテクニカルで、プログレ風味の強い展開が多く、僕がエクストリームメタルに期待している慟哭メロデスとはやや趣が異なるスタイルではある。複雑怪奇にねじ切れ回るギターリフに、エクストリームメタルとしてはあまりにも目立ちまくるベースなど。

 

しかしそれが聴きにくさに繋がっていないといいますか、バカテク極まる演奏の応酬で押しまくる様に圧倒されつつ、随所に光る叙情的なメロディー、ネオクラ的なシュレッドが存在感抜群。テクデスという基本線を一切逸脱せずにメロウな旋律をまぶして聴きやすさを助長しています。これが僕に刺さる。

 

M1「Forsaken」のイントロから物哀しいアコギからして期待感MAXですが、その後もやたらとテクニカルにうねるギターとベース、超速のドラムに困惑されながらも、そこに見事に調和するメロディアスな旋律には心奪われる。

 

これだけ技術的に優れたことをやってのけながら、自然に、違和感なく魅惑のメロディーを溶け込ませる手腕は、少なくとも僕には他に聴き覚えのない音でした。これは確かに名作かも。

 

熾烈なエクストリームメタルの基本線は決してブレずに、美しいとすら思えるメロディーを聴かせるというスタイルは、ジャンルこそ違えど、ANAAL NATHRAKHの最新作を聴いた時と同じような衝撃を受けました。

 

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変拍子バリバリのプログレ的イントロがインパクトを放ち、ブラストビートと超速バスドラムによる狂気的な疾走を取り入れ、優れたテクニックの宝庫でありつつ、感情の爆発を表現し切ったM2「Solaris」、非常にキャッチーなクリーンヴォーカルのサビを取り入れたM4「When Stars Collide」、この手のエクストリームメタルとしては異常なまでにキャッチーなギターソロが耳をつんざくM7「The Beyond」など、"普遍的な聴きやすさを持つテクデス"という、ある種矛盾したような楽曲が立て続きます。

 

M10「In Adversity」なんて、ピロピロした速弾きとブラストでイカれた爆走を見せるのに、リズミカルでザクザクしたリフの刻まれ方、中盤以降顔を出す本作随一のメロディアスさを誇るギターは、テクデス云々ではなくヘヴィメタルとして魅力的とすら言える。

 

人間離れした機械のように正確な超絶技巧と、メロディックヘヴィメタルとして聴きやすく仕上げた美しいメロディー。それらを一切の破綻なく共存させることに成功した傑作。2021年末、ここにきて衝撃的なアルバムに出会えました。食わず嫌いはするもんじゃないですね。

 

 

個人的に本作は

"テクニカルデスメタルというジャンルを堅持しながら、メロディ志向の人間すら取り込む叙情美を共存させた異色の名盤"

という感じです。

 


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HYPOCRISY 『Worship』

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クリスマスですね。聖なる日ですが、そんな世間の潮流に逆らってデスメタルを聴きますよっと。

 

いやね、昨日のクリスマスイブ、定時に帰れたらいいな〜なんて思って仕事始めようと思ったら、同チームに2人欠員が出ましてですね。僕の方へ仕事やら電話やらが色々と舞い込んできたんですよ。結果帰れたのは定時を3時間ほど過ぎたあたりでした。まったくもう。

 

メタル界の名プロデューサーとしても名を馳せる(というか個人的にはそっちの方が馴染みがある)、ピーター・テクレンがフロントに立つスウェーデンデスメタルバンド。前作から8年ものブランクがある新作とのこと。

 

デスメタルメロデス以外あまり積極的に聴いてこなかったので、正直彼らの過去作にもほとんど精通していないんですが、大きな路線変更をしてこなかったらしい彼ら。どことなくスウェディッシュムードが漂う、寒々しく叙情的、かつド迫力な極悪デスメタルです。やたらスペーシーな雰囲気漂うジャケですが、近代的な印象は感じられない古き良きスタイルって感じです。

 

名プロデューサーとして活動しているピーターが担当しているだけあって、サウンドの迫力は極上。野太く濁流のように押し寄せるギターリフの禍々しさ、時折顔を覗かせるメロウなギターフレーズの不穏さ、メロデスの領域に足を突っ込んでいる旋律を聴かせるリードなど、ギターが非常に良い働きをしていますね。この不穏な中にも叙情性を含むメロディーとハーモニー、これはやはり北欧を出自としているバンドの強みでしょうか。

 

M2「Chemical Whore」やM3「Greedy Bastards」のようなズンズンとした低音を基調とし、過剰に速いテンポは抑えたような楽曲では、よりギターが描く北欧情緒を纏う激情のメロディーが際立つ。M3やM11「Gods Of The Underground」の慟哭リフなんか結構わかりやすいですね。こういうの好き。

 

ガチのメロデスのようにリードギターがメインメロディーをかき鳴らし泣きまくるというほどではなく、けれどもメロディー要素をかなぐり捨てたデスメタルにはならない、このスタイルを中途半端と感じるか否かはリスナー次第ですけど、僕はこの鬱屈したリフに潜むメロディーはなかなか惹かれるものがあります。まあもっとわかりやすくメロデスしている方が好きなのは間違い無いですが(笑)

 

オープニングのM1「Worship」のブチ切れまくった疾走感、M6「Brotherhood Of The Serpent」の全てを破砕するかの如き鈍重リフの塊、全編を凶悪なムードで覆い尽くすピーターの獰猛なデスヴォイスなど魅力は色々ありますが、やはり一番のポイントは哀愁を漂わせる北欧的激情かな。良いリフです。

 

速い曲好きとしては、前述のM1やM8「Another Day」のような猛然と突っ走る爆走デスメタルがもうちょっと欲しいと感じますが、極悪叙情リフに飲まれるにはもってこいのアルバムで、予想以上に聴きやすくもありなかなか気に入りました。

 

 

個人的に本作は

"疾走にあまり重きを置かない迫力満点デスメタル。北欧ムードが滲ませる適度なメロディアスさが良い"

という感じです。

 


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12/19 THOUSAND EYES Presents BLOODY SALVATION Vol.3

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今年最後のライヴに足を運んできました(ホントは12月はあと二本行きたいやつがあったんですが、どちらもチケット倍率がエグいほど高かったのであえなく惨敗...)

 

先日Graupelの熱すぎるライヴを観たばかりながら、すぐに帰ってきた渋谷CYCLONE。慟哭の暴君・THOUSAND EYESが、メタルコアの新星・Sable Hillsを迎えての激アツツーマンです。

 

こんなライヴが日曜日にやるというのなら、当然ながらチェックしなければならないのが日本のメタルファン。かなり早い段階からチケットを取っており、財布の中で若干シワがよってしまった券をようやく使うことになったわけです。

 

タワーレコードとカフェで時間を潰した後、開場時間ちょうどくらいに渋谷CYCLONEへ。オミクロンがどうこう言われている世の中ですが、だいぶ感染の波も落ち着いてきたからか、日曜の渋谷はだいぶごった返していましたね。

 

やはり注目度の高いツーマンだからか、キャパを絞った状態としてはほぼ満員と言っていい状態。僕は早くからチケットを取っていたので整理番号が若く、比較的前方に陣取ることができました。

 

 

Sable Hills

Earthists.とGraupelのスプリットEPが記憶に新しい、新進気鋭の若手メタルコア筆頭格であるSable Hillsが登場。下手側ギタリストのみ短髪でサポートメンバーであることがありありと伝わりましたが(笑)、ロン毛に黒で固めたルックスが硬派なメタルらしさを演出。

 

「正統派のメロディックデスメタルと、そのメロディックデスメタルに強く影響を受けたメタルコアの共演」とMCで語っていたように、彼らの音楽性はモダンさ以上に叙情メロデス風のリフ運び、メロウなコーラス、そして泣きすら帯びたリードギターが強み。そしてその魅力はライヴにおいても大いに活かされていました。

 

とにかくリードギターの旋律が鳴り止まない。メタルコアらしいブレイクダウンを多用しつつも、サビに当たるパートでは、終始メロディックなリードを奏で続けており、この辺はさすがメロデス影響下。ギターのRictさんは服装こそDYING FETUSのタンクでしたが(イカしてる)リードギターとしての才覚はかなりのものがありそう。

 

後半には短いながらもギターソロを挿入して、そのメロディーセンスを遺憾無く発揮。モダンヘヴィなリフももちろん良いですが、やはりメタルギターはこれですよね。

 

ヴォーカルのTakuyaさんは、煽り方、高音シャウトの質感、パフォーマンスなど、どこか元HER NAME IN BLOODのIKEPYさんを彷彿させる(彼に比べればだいぶ華奢ですが)アグレッションで、ステージに勢いを与える...というか、ドラム以外の4人みんな狭いステージ上をガッツリ暴れ回っており、ギターやベースのヘッドが頭に当たったりしないかちょっと心配になるレベル。

 

Messiah」「Crisis」といったMVになった楽曲から、Graupelがカバーした「The Chosen One」など、代表的な楽曲は一通りプレイしましたが、やはり個人的に一番熱くなった瞬間は、前述のギターソロから繋がる「Embers」「Recapture」の二連打でしたね。どの曲も熱き疾走とシンガロング、そしてそこに絡む哀愁のリードギターが素晴らしい!

 

 

THOUSAND EYES

Sable Hillsの熱過ぎるパフォーマンスに早速首が痛くなりかける中、いよいよ本日のメインアクトであるTHOUSAND EYESの登場。彼らのライヴを観るのはKalmahのツアーのサポートアクト以来だから、もう3年くらい観ていないことになる。

 

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その頃からはドラムのFUMIYAさんが脱退しており、後任にはUNDEAD CORPORATIONにも所属しているYU-TOさんが加入。その体制での彼らのライヴはお初です。

 

現時点での最新作のオープニングに倣い、「DAY OF SALVATION」からスタート。ここ最近はあまり多くのライヴをやっていなかったようですが、そんな事情を一切感じさせないタイトな演奏、ハードコアテイスト漂う魂の叫びは圧巻。僕が耳栓をしていたからか、ギターのハモリが若干聴き取りにくく感じる瞬間があったものの、概ねサウンドに不満はなく、怒りと悲しみに満ちた激情に不足なし。

 

AKIRAさんのやや潰れたようなデス系シンガロングに、このバンド最大の武器と言える泣きに泣いたギターソロ、最初から最後までそれが続く。

 

FUMIYAさんの後任となったYU-TOさんですが、さすがに突進力抜群のドラムパートを務められるだけあって、実力的にはなんの問題もない感じでしたね。要所で超高速のバスドラ連打を使い、加速度的にテンションを高めていく。どことなくV系チックな毒々しさを持ったFUMIYAさんとは異なり、キャップにタンクでワイルドに決めた風貌なので、ステージ上の印象は多少カラッとしたかな?

 

MCで曲の順番を間違える(4曲目にプレイした「LOST FOREVER」を1曲飛ばしてコールしようとした)など、ちょっとしたハプニングがありつつも、それがライヴのテンションを損なうことにはならず、ちょっとしたブレイクタイムになるだけで、3曲目にしていきなりキラーチューン「DEAD NIGHT, MOONLIGHT」がプレイされるなど、士気の高鳴りは止まることを知らない。

 

この曲順間違いに限らず、ヴォーカルのDOUGENさんは、しきりに楽しそうな表情を浮かべていて、スクリームの凶悪さと反してかなりフレンドリーな兄ちゃん気質を放つ。「本当は怒れるデスメタルヴォーカルみたいにやった方がいいんだけど、やっぱり楽しいからね!」と言う姿はまさに言葉通りでした。

 

そんな緩んだ空気と緊張感MAXの曲とのコントラストは最後まで続き、前述の「LOST FOREVER」のような比較的テンポを落とした楽曲から、慟哭の暴君の本領を発揮する「RAMPAGE TYRANT」のような疾走曲まで、ヒリヒリするような緊迫感と、咽び泣く極上のギター、怒りを迸らせるシャウトが折り重なり続ける。唯一「RAMPAGE TYRANT」のクリーンギターによるブレイクだけが再現されていなかったものの、不満らしい不満はそのくらい。

 

KOUTAさんとTORUさんによる時にピロピロとした速弾き、時に流麗なツインリードを弾き倒すギターの存在感はやはり絶大でしたね。派手なアクションこそないものの、積極的にステージ前方へ出て、絡み合う悶絶号泣必死なメロディーをかき鳴らす。DOUGENさん曰く「KOUTAさんはギターソロはあんまり弾きたくないとこぼしている」とのことですが、ここまでカッチリと構築されたソロを弾きこなす姿を見ていると、「ホントに弾きたくないの?」と疑わしくなるな。

 

アンコールでは、「BLOODY EMPIRE」をSable HillsのTakuyaさんをゲストヴォーカルに迎えて、ツインヴォーカルで披露。「メタルコアの貴公子とヘヴィメタルおじさんの共演(by DOUGEN)」が実現したわけですが、こうやって聴いてみるとDOUGENさんのスクリームの破壊力が如実に伝わってきますね。Takuyaさんも迫力十分なヴォーカルなのに、明らかに声量や通りの良さはDOUGENさんが上回っていることがわかりました。

 

そしてラストはもちろんバンド名を冠した名曲「ONE THOUSAND EYES」。ラスト1分半における劇的極まりないツインギターの応酬を一瞬たりとも聴き逃さないため、ここにきて耳栓を外し、いつまでも鳴り響く泣きの洪水に浸りました。やはりこのソロは泣ける!素晴らしい!

 

 

共にエクストリームメタルにカテゴライズされながら、ドラマチックなメロディーを武器とした二組の共演、非常に濃密な時間になりましたね。とにかく泣きのギターの魅力が尋常ではないこと!そしてパフォーマンスがタイトでカッコいいのなんの!

 

MCでも発表されましたが、THOUSAND EYESは来年に4枚目のアルバムを発表する予定だそうですし、まだまだ日本のエクストリームメタルの期待感は高まるばかりです。

TEMPERANCE 『Diamanti』

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  • トリプルヴォーカルによるメロディーのフックがさらに進化
  • 重厚で壮麗なシンフォアレンジがドラマチック
  • 疾走からバラード、ボートラまでキラーチューン連打の強力盤

 

男女混成トリプルヴォーカルという変則的な編成を持つ、イタリア出身のモダン・シンフォニックメタルバンド・TEMPERANCEの、前作『Viridian』より2年弱で届けられたニューアルバム。

 

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前作がかなり良質な出来だったので、本作の完成度もかなり高く磨かれたものになるのではないかと、発売前は結構期待していたのですが、これがまたその期待にしっかりと応えてくれる充実度。去年と今年と、2年続けてここまでのアルバムを制作できるとは。

 

もともとはAMARANTHEフォロワーみたいなエレクトロメタルらしかったようですが、本作における音楽性は、(前作の時点でそうでしたが)もはや完全にシンフォニックメタルと呼んでも差し支えないほど壮大なサウンドに。モダンな色を残しながら、楽曲のスケールをより大きなものへと変貌させるキーボードのアレンジが終始魅力的。

 

そして何より強力なのが、確かな歌唱力を持った3人のヴォーカルが織りなすメロディー。これが本当に素晴らしく、前述のスケール大の演奏と重なることで極上の高揚感を生み出す。ここまで歌メロが秀でたメロディックメタルはなかなかお目にかかれないと思います。

 

M1「Pure Life Unfold」こそ若干インパクトは弱いものの(もちろん捨て曲などではない)、続くM2「Breaking The Rules Of Heavy Metal」は、分厚い合唱を用いたサビがあまりに劇的で、かつ非常にフックに富んだ美メロが繰り出されるキラーチューン。そこから生まれた勢いを殺すことなく、ドラマチックなキラーの連打が止まらない。

 

アルバム中盤のM6「You Only Live Once」は、一際普遍的なキャッチーさが輝くサビに胸を躍らせるキラーで、そこからさらに美しさに舵を取ったM7「I The Loneliness」、シンガロングしやすいフレーズが駆け抜けるM8「Codebreaker」と続く流れは凄まじいの一語に尽きる。

 

そして前作でも魅力的だったバラードは本作でも健在で、後半に差し掛かる頃に繰り出されるM10「Fairy Tales For The Stars」は、彼らの美しいメロディーを充分以上キャッチーに聴かせるセンスが剥き出しになった一曲。バックの煌めくアレンジと加えて心に染み入りますね。

 

そんな余韻を残しながら、メタルとしてのアグレッションを忘れないM11「Let's Get Started」、メロパワばりの疾走感突き進むも、後半はまるでAVANTASIAかのような劇的展開へと持ち込むM12「Follow Me」で締めるクライマックスは圧巻です。本当に最後まで楽曲の粒が揃っています。

 

ボーナストラックであるM13「Set Yourself Free」は、DYNAZTYを彷彿させる王道のメロディックメタルナンバーで、これまた素晴らしい楽曲ではあるのですが、M12の荘厳な雰囲気のまま締めてもらいたかったので、曲順はもうちょいなんとかしてほしかったかも。というか、これだけの完成度の曲をなぜボートラにしてしまうのか。本編でいいじゃん。

 

とまあ、以上にように、モダンな質感を持ちつつも大仰に盛り上がるシンフォニックメタルとして、この上ないほど高い完成度を誇る名盤に仕上がっています。シンフォメタル好きはもとより、キャッチーなメロディックメタルのリスナーなら多くの人がその魅力をわかるであろう普遍性に満ちた楽曲のオンパレード。強力です。

 

 

個人的に本作は

"フックに富むメロディーと壮麗なシンフォニックアレンジを一貫して保ち続ける、サウンドもヴォーカルも秀逸な劇的名作"

という感じです。

 


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12/9 Graupel Japan Tour 2021-2022 at 渋谷CYCLONE

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現在絶賛ツアー中のメタルコアバンド・Graupelの渋谷CYCLONE公演に行ってきました。ド平日ですよ。ド平日。

 

ツアー初日の千葉LOOKのライヴがあまりにも最高だったので、この日は有給使って行ってやろうと思っていました。しかし、同日にチーム内の先輩社員が健康診断で休むということで、その日は出社せざるを得ない。開始に間に合うか分からないので、チケットは取っていませんでした。

 

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幸いな事に、今週はさほど仕事が立て込んでおらず、定時ちょい過ぎくらいでさっさと会社から離脱することに成功。スーツのまんま渋谷へ直行し、会場となるCYCLONEへと向かう。開演時間の19時は少し過ぎてしまいましたが、無事に当日券もゲットでき、いかにも「DEXCOREにしか興味ありません」ってなナリの女性客をすり抜けて(笑)フロアへと入る。すでに一組目のVictim Of Deceptionが始まってました。

 

Victim Of Deception

名前は何となく耳にした事があるものの、ほぼ何も知らない状態で観たバンド。ステージ正面のスペースはすでに埋まり気味だったので、下手側通路から、スピーカーの間を通して観ていました。そのため角度的にドラマーは全く見えず…

 

本日の出演組では、最もヘヴィでエクストリーム、邪悪なスタイル。とっつきやすさやドラマチックなメロウさは存在せず、極悪重音のデスコアをひたすらプレイ。あまりの低音の効き具合に、ステージ横の自販機のディスプレイの飲み物が揺れまくってる。

 

パフォーマンスも楽曲も徹底して無愛想で、曲だけ聴くと、メタルにキャッチーなわかりやすさを求める僕の琴線に引っ掛かる要素はほぼほぼ無し。

 

しかし、高音絶叫から低音のグロウルまで自在に操るヴォーカルは非常にカッコ良かったですね。ほとんど笑顔を見せず、MCもせず、オーディエンスを睨みつけながら狂気に駆られたように叫ぶその姿は、ルックスがそれっぽいのもあって、金髪ショートだった頃のDIR EN GREYの京さんとダブる。

 

徹頭徹尾ヘヴィリフを弾きながら、要所でピロピロした速弾きをブチ込むギターに、そのギターにも負けず劣らずの高速運指を見せるベースと、高い技術を必要とするデスコアというジャンルを標榜するだけあって、サウンドのレベルの高さはかなりのものでした。

 

後半にはDEXCOREのヴォーカルが登場して、ツインヴォーカル体制となり場を沸かす。ただクリーンの歌い分けなどは無く、ひたすら絶叫を繰り返していくので、目をつぶって聴けばどちらが叫んでいるかは判別できず、ツインヴォーカルの良さが活きているとは言い難いかも(笑)

 

 

Sailing Before The Wind

続いてはモダンメタルコアバンドであるSaling Before The Wind。メンバー5人全員が白のジャケットに身を包み、ヘヴィなサウンドでフロアを揺らす。

 

先ほどのVictim Of Deceptionはデスコアという音楽性のため、ひたすらに極悪の限りを尽くす楽曲で占められていましたが、彼らはクリーンの要素も秘めたメタルコア。とっつきやすさは幾分か増えつつ、竿をブン回す楽器陣のパフォーマンスも見所になっている。

 

特に一番存在感があると感じたのはベースのBitokuさんで、かなりの場数を踏んできている人だけに、他メンバーよりも余裕があるように感じられる。ギター二本がヘヴィリフを弾いている間にも、ベースの骨太な低音はかなり強調されており、プレイにおける支柱を担っている感じ。ステージの端から端までシャトルランするように走り回るなど、このジャンルとベーシストとしてはあり得ないほど目立つ。

 

Djent的変拍子のリフにおいても、そのリズム感が一切狂うことはなく、演奏は非常にタイトにまとまっていて、この辺はやはり有名バンドとして強いところだなと感じました。

 

ただやはりこの手のモダンメタルの宿命なのか、リードギターとクリーンヴォーカルのメロディーにフックが無く、サビがどうも印象に残らない。ヴォーカルもシャウトはガッツリ気合を入れて叫んでくれたものの、クリーンによるサビの安定感はなかなかに厳しいものがあり、メロウに聴かせる部分がもっと強化されればな...という思いがよぎったのも事実です。

 

 

DEXCORE

ヴィジュアル系でありながら、ヴィジュアル系らしさをほとんど武器とせず、本格的なメタルコアで勝負をしているバンドだと聞いており、どんなライヴになるのかちょっと楽しみでした。

 

メンバーのルックスこそ、カッチリしたヴィジュアル系(そこまでゴテゴテではないけど)でしたが、そのサウンドは確かにヘヴィなモダンメタル。シャウトの腕前も一級品だし、決して前二組に引けを取らないほど音圧も強い。

 

正直ここまで本格派のメタルで勝負するのなら、ヴィジュアル系であることはむしろ足枷になってしまうんじゃないかと余計な心配すらしてしまうのですが(メイクしてなくてもイケメンっぽいし)、まあDEVILOOFのようなガチのデスコアバンドもいますし、本人たちも狙いがあるんでしょう。

 

途中には同期音源も駆使したクリーンヴォイスによるサビも登場。先ほどのSailing Before The Windよりもメロディーにキャッチーさがあり、この辺はセンスを感じさせてくれる。ヴォーカルの歌い方も、あまりヴィジュアル系チックなナヨっとした感じではなく(あくまでライヴで聴いた限りでは)、この辺もヘヴィミュージックリスナーには優しいですね。

 

このバンドのアクトのみ撮影禁止というルールにはなっていたのですが、途中でヴォーカルが「みんな携帯は持ってるか?そいつを出してカメラを起動させて、赤いボタンを押して、そいつを拡散させりゃいい!」と、この時のみ撮影とSNS拡散がOKに。ただこの発言はメンバーの裁量らしく、本人は「後でマネージャーに怒られる」とボヤいてました。

 

僕はライヴの撮影は基本やらないのですが(スマホの画面の明かりが大量にチカチカしてるライヴ会場は好きじゃない)、バンド側からこう言われたのなら、少しだけカメラを構える。

 

最後は先程のお返しと言わんばかりに、Victim Of Deceptionのヴォーカルが登場。ツインヴォーカル体制で、ラストに花を添えました(ひたすら極悪だったからこの表現は似合わないか)

 

 

Graupel

最後はもちろんメインアクトであるGraupel。Sailing Before The WindとDEXCOREはフロアの最後方で観ていたので、PA卓がある二階の柱による視界制限があったので(クアトロに比べりゃ全然マシだけど)、DEXCOREが終わると同時に、観やすいようにちょっと前移動。

 

千葉で観た時と印象はほぼ同じ感じでした。そう、メチャクチャに熱くてカッコいい。こりゃ何度も観たくなりますよ。

 

一曲目の「Apathy」から早速ギア全開。低音を強調した狂ったシャウトの破壊力も抜群で、楽器陣が務めるクリーンのコーラスもよく効いている。アグレッシヴなだけでないメロディアスな部分もしっかりと補強していて隙がない。

 

お立ち台でキレよく動き、飛び跳ね、オーディエンスを煽りまくるヴォーカルの存在感が非常に際立ち、拳を上げてヘッドバンギングをせざるを得ない。本当にこのライヴでの扇情力は素晴らしいものがあります。

 

ダークなヘヴィネスを押し出した「False Dreams」に、メロディアスさを保持しつつ、ツーステ誘発のリズミカルさをも併せ持つ「Towpath」、リードギターの叙情的イントロから爆発し、リズム落ちパートの破壊力がエグすぎる「Departure」と、キラーチューンのオンパレード。彼らは持ち曲がそんなに多いバンドではないので、セットリストの被りも多いのですが、そんなことを一切意識させないほどパフォーマンスが良い。

 

「俺たちはここ東京のバンドで、渋谷CYCLONEはホームみたいなものです」と、全国を回りつつ、出身地であるライヴが熱く盛り上がっている状況の喜びを噛みしめ、「まだメタルコアという音楽は行き止まりではない、これからもっと発展していく音楽だと思っているから、このホームでそれを証明する」と、自身の音楽スタイルへのひたむきな情熱を述べる姿勢も千葉で観たときと変わらない。

 

これだけ楽曲のクオリティーが高くて、かつライヴのパフォーマンスの熱がすさまじいバンドですから、そりゃ日本のメタルコアは頭打ちだとは思えなくなりますよね。まだまだ日本全土を揺さぶるライヴを続けてほしい。

 

クライマックスの「Fade Away」の激情には心が震えたし、ラストを飾る「Bereavement」は、本日最大級というくらいのヘッドバンギングの嵐が巻き起こる。わずか9曲のセットリストでアンコールも無しなのが物足りないのですが、これだけのステージングを見せてくれたのであれば文句は言うまい。

 

 

出演した4組とも、非常に印象的でクオリティーの高いライヴを見せてくれましたが(Victim Of Deceptionはステージ前半分くらいしか見えなかったですが)、やはりというかGraupelが最後の最後で持っていった感じの一日。メロディックメタルコアとしての激情の発散は、今の日本においては彼らが最高峰なのではないかと。この国でメタルコアというジャンルを愛する人は、彼らを無視する選択肢は無いです。

 

ライヴが素晴らしいバンドは何度でも観たいものですから、ツアーファイナルの代官山も行こうかしら。

ECLIPSE 『Wired』

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  • 演奏・ヴォーカルともにエネルギッシュ!
  • 北欧メロハーの強みを活かした哀愁も含む
  • シンプルで潔いハードロックの王道

 

北欧はスウェーデン出身のメロディアスハードロックバンド・ECLIPSEの、8thフルアルバム。

 

中心人物であるギターヴォーカルのエリック・モーテンソンは、今年の始めにW.E.T.のアルバムを出したばかりで、コロナの流行もあってか、音源制作に積極的に動いているような印象。

 

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あまりこのバンドの音源自体は聴いてきていない僕ですが、W.E.T.の過去二作は普通に良い感じだったので、本隊の方でも良い音楽を作ってくれているだろうと期待して手に取ったら、これが確かに良かった。

 

W.E.T.はどちらかというとメロディアスさ重視で、ハードロックとしての刺激、アッパーな印象は控えめな感じでしたが、このバンドにおいてはあくまで楽曲の骨格が"ロック"であることを高らかに宣言しているようで頼もしいのです。そうそう、ロックってダイナミックでカッコいい音楽なんだよと言いたくなる。

 

北欧のバンドらしい叙情性もあることはありますが、アメリカのメジャーバンドにも通じるようなギラギラした煌めき、あまりに湿りすぎないキャッチーなメロディーセンスは、多くのロック好きの耳を捉えられるだけの力が感じられます。

 

やはりこれはギタリストのプレイがエネルギッシュなのが良いんでしょうね。ヘヴィではないけど、かといってペラペラにもならず、適度に鋭さや切れ味を持ったギターリフが弾むように躍動する。それがアップテンポで、かつキャッチーなメロディーを纏った状態で突き進むわけですから、カッコよくならないわけがない。

 

そしてエリックによるヴォーカルもロックとしてのダイナミズムを充分に感じさせてくれる。ジェフ・スコット・ソートの歌声も素晴らしいものがありましたが、個人的にはエリックのロック然としたエナジーが滾るヴォーカルの方が好きです。

 

M1「Roses On Your Grave」から早速名曲。アグレッシヴなヴォーカルのシャウトから、アップテンポに展開していき、流麗なソロを交えたギターがロックとしての攻撃性を演出、サビは非常にキャッチーと来たもんです。文句なしにカッコいいハードロックナンバー!

 

M2「Dying Breed」も哀愁を含みつつ躍動感あふれるハードロックらしいサビに熱くなれる曲で、この二曲に流れでオープニングとしての掴みはバッチリ。この時点で良作であることを予感させてくれます。

 

アップテンポなナンバーでは、終始溌溂とした演奏でギアを上げ、M5「Carved In Stone」のようなバラード調の楽曲では、北欧メロハーバンドとしてのメロディーセンスを遺憾無く発揮。M1の最大瞬間風速を超えると感じた楽曲はなかったものの、ハード&キャッチーの基本線を徹底的に守り抜いており捨て曲はなし。

 

M6「Twilight」ではクライマックスで「歓喜の歌」のフレーズをガッツリ取り入れたり、M8「Bite The Bullet」の中盤に、どことなく西部劇チックなギターパートを挿入したりと、ちょいちょい作曲面での工夫を入れようとしているのが見受けられますが、基本はシンプルで直情的なハードロックで潔い。

 

ロディアスハードというと、「ポップスにおけるバックのサウンドがちょっと激しくなった感じ」みたいな印象を受けることもあったりするんですが(それはそれで悪くないですが)、このバンドはヴォーカルと演奏でしっかりとロックしていて、大観衆を沸かせることができるパワーがバリバリなのが良いですね。キャッチーなハードロックが好きな人なら、まず外されることはないであろう充実盤。

 

 

個人的に本作は

"観衆を沸かせるに相応しいエネルギーを放つ王道路線のハードロック。湿りすぎないキャッチーなメロディーセンスも熱い"

という感じです。

 


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APOSTOLICA 『Haeretica Ecclesia』

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  • メンバーの素性、出身国全てが不明の覆面バンド
  • POWERWOLFフォロワーとしての宗教風ムードで統一
  • パワーメタルの普遍的魅力は決して忘れない

 

国籍もメンバーの素性も全て謎に包まれた覆面メタルバンドの1stフルアルバム。結成した年とかも不明ですが、音源リリースは全て今年に入ってからなので、多分かなり新しいバンドでしょう。

 

ブックレットの写真では、メンバー4人全員がジャケットに写っている仮面を被っていて、同じ顔した人が並んだアー写がなんともシュールな味を出しています。

 

ライナーノーツによると、メンバーはそれぞれすでにメタルバンドとしてある程度キャリアのある人たちが集まっているらしく、ヴォーカルの歌声や音作りなどを聴けば、ある程度正体の目星がつく人もひょっとしたらいるのかもしれませんね。ちなみに僕はサッパリです(笑)

 

メンバー全員が預言者の名前を冠して、教会的・宗教的なムードを表現するために聖歌隊を雇ってレコーディングをしたとあって、聴いた際の印象で最も近いのはPOWERWOLF。神聖さを演出するシンセの神々しい音色が目立ち、パワーメタルらしい馬力を持ったまま突き抜けていくサウンドに、宗教的なテーマを強く打ち出したコンセプトは、まさしくPOWERWOLFフォロワーと言ってしまっていいでしょう。

 

M1「Sanctus Spiritus」は本作の序章的(とはいっても4分ある歌入りなのでイントロというわけではないですが)な楽曲で、分厚いクワイアを早速使用しバンドの世界観を存分に表現。曲タイトルを繰り返すフレーズが耳によくつく。

 

そしてM2「The Sword Of Sorrow」は、これを期待していた!と思わんばかりの疾走パワーメタルナンバー。キャッチーでとっつきやすいメロディーのおかげで、宗教風のムードを持っていてもメタルとしての聴きやすさ、普遍的なカッコ良さがしっかりと根付いている。この辺のセンスはPOWERWOLFにも負けてないように思います。スピーディーなギターソロが最高にカッコいいな!

 

それに続くM3「Come With Me」もアップテンポでエネルギッシュなメロディックメタルとしての魅力、リードギターによるキャッチーで壮大なメロディー、耳に残るシンガロングを豊富に取り入れた楽曲。この時点でかなりの力作であることを感じさせてくれる。

 

それ以降の楽曲はあからさまな疾走感は多少抑えながら、決してバンドの個性である宗教風ムード、メロディアスさは決して薄れることのないパワーメタルが展開。M2, M3に比肩するくらい気に入った楽曲はM7「The Doom」とM10「Redemption」くらいで、もう少しストレートなキャッチーさと突進力を見せる曲が欲しかった気もしますが、どの曲も世界観演出に抜かりはない。

 

メンバーの名前も、出身国も、作曲の方針も、影響元など全て秘匿し、ここまで徹底的にバンドの世界観を演じようとしているだけあり、POWERWOLF直系のシンフォニック・レリジョン・メタル(?)の完成度は高く、1stにして先輩格のPOWERWOLFにも届きうるクオリティーを聴かせる、なかなか良質な作品でした。

 

あとはPOWERWOLFのアルバムタイトルトラックにも引けを取らない目立ったキラーチューンを、どれだけ生み出せるかに期待がかかるところです。M2はかなりいい線いっていると思いますし、それだけの能力は持っているバンドだと思います。

 

ひょっとしてPOWERWOLFのメンバーの誰かが参加してるなんてことあったりします?

 

 

個人的に本作は

"新たなる宗教的シンフォメタルの刺客。荘厳な雰囲気を保ちつつ、根底にあるのは良質なパワーメタルとしての魅力"

という感じです。

 


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