北欧メロディックデスメタルの元代表格にして、現在はオルタナティヴロック/メタルスタイルがすっかり板についたIN FLAMESの12thアルバム。
前作の時点でメロデス風味をほぼ完全に捨ててしまった彼らですが、本作もその流れを踏まえた作風でデスメタルはもちろん、メタルっぽさすら希薄。2作続けてのこの路線にかつてのファンは「IN FLAMESは死んだ」と失望を禁じ得ないでしょうね…。もう彼らは「メロディックデスメタルバンド・IN FLAMES」を完全に封印したようです。
そんな訳で本作を駄作呼ばわりする方もたくさんいらっしゃるでしょうし、僕もその意見を否定するつもりはありません。
しかし本作を聴いた僕の感想は「これはこれでイイじゃん!」でした。
確かにかつてのような叙情リードギターが乱舞してリスナーの興奮を促すようなパワーはありません。8th『Come Clarity』のようにモダンなスタイルであっても激情を失わないアグレッシヴさも薄いです。
しかしそれでもイイんですよ、メロディーが。不思議とリスナーを引きつける魅力がしかと息づいているように感じます。
哀しみを携えながらも広がりを感じさせるサビが良いリードトラックM2「The End」、「ウィーアーウィーアー」言いまくるコーラスと後半のリードギターソロが印象的なM4「The Truth」、イントロのツインギターとどこか退廃的なサビが魅力のM5「In My Room」、数少ないアグレッシヴな突進力を持つ(メロデス時代の激情、カタルシスこそ無いけど…)M7「Through My Eyes」など派手さはないけど楽曲はどれも粒ぞろいで魅力的。
個人的に特に気に入ったのはどこか爽やかさすら感じる哀愁のサビに胸を締め付けられるバラードM9「Here Until Forever」と『Come Clarity』に収録されててもいいような(?)、攻撃性とキャッチーさが融合したボートラM14「Us Against the World」です。
パッとしない楽曲もあるにはあるし、メロデス時代の素晴らしさを超えるほどかと言うとNOですが(笑)、オルタナ由来の気だるさを感じつつも哀愁をきっちり含んだキャッチーなサビが良質で、個人的には十分アリでした。イエスパーがいなくても良いメロディー書けるじゃん!
先行公開された「The End」「The Truth」が悪くないと思えるのであれば決して損はしない作品だと思います。
先月の終わりにベースのピーターの脱退が報じられ、その後の動向がまたちょっと気になりますが、今後も過剰な期待はせずとも彼らを支持していきたいですね。
M2 「The End」 MV