いよいよやってきた、年に一度のメタルの祭典・LOUD PARK!!
今年は久しぶりに3ステージ制が撤廃され、またメンツも去年・一昨年に比べると(申し訳ないが)やや小粒な印象があり、全体的にスケールが小ぢんまりした印象を受けていました(あくまでも始まる前は)。
しかしだからと言って一年に一度のメタルのお祭りをスルーするなんてことは、仮にもへヴィメタルファンの端くれとしては絶対にあってはならないこと。行くこと自体に迷いは一切なし。
物販をちょっとのぞきたくて初日は8時ごろの早い到着・・・のはずだったのですが、先行物販はすでに長蛇の列。スタッフの方が「もう並ぶことはできませーーーん!」と大声で案内していました。皆さん朝早くからお疲れ様です・・・。
気を取り直してゲート前に並ぶ。結局開場直前においても20~30mくらいにしかならなかったように思えます。アリーナをぐるっと囲むかのように大行列を形成した2015年のそれとは雲泥の差。やっぱり今年の動員はイマイチだったのかな~・・・。
開場後タイムテーブルと恐ろしくわかりにくい会場マップを受け取り(4年目の僕はもうなんとなく勝手はわかりますが、初めての方にはどこに何があるのかアレでわかるのでしょうか?)、奥の物販コーナーへ。先行で買う方やプレミアムチケットの方がすべてはけてからの購入になるため待ち時間が非常に長い。結局40分くらい列が動かなかったためオープニングアクトのALDIOUSは一切観られず・・・。まあこのバンドは去年のSUMMER SONIC、LOUD PARK、今年のPURE ROCK JAPANと1年ちょっとで3回も観ているので、今回はしゃーないと割り切り、10時半をちょっと過ぎたあたりでアリーナに降り立ちました。
ラップ/レゲエメタル。
硬派なHR/HMファンからはチャラいの一言で切り捨てられるバンドだと思いますが、個人的にはちょっと興味あり。こういったバンドって、自宅で音源聴いているだけだとメロディーがいまいち響かないのですが、ライヴで観ればそのイケイケアゲアゲな雰囲気がすごく楽しかったりするものです。そして予想通り、観ていてとても楽しいステージでした。
フェスの一発目として相応しい(メタルフェスとしてどうなのかという疑問はさておき)ノリノリなライヴパフォーマンスで、アリーナ前方に集まったオーディエンスもまるでクラブかのように飛び跳ねている。ステージの照明もカラフルで雰囲気出ていてイイ感じにアガります。
演奏陣のへヴィなサウンドも魅力的ながら、個人的にはフロントマンのベンジ・ウェブに釘付け。グラサンにドレッドヘアー、そしてギラギラ光る派手な衣装に身を包み、超個性的なダミ声ヴォーカルを披露!存在感が段違いでしたね。ルックスに何だか妙に愛嬌があるのもイイ!(笑)さかんに「LOUD PARK PEOPLE!!」と呼びかけ「Kill the Power」でのシンガロングやコール&レスポンスをバッチシ決めるなど、オーディエンスの掌握術も手慣れたもの。
普通のメタルライヴじゃまず観られないであろう、頭上でタオルを振り回す光景をLOUD PARKの会場で観ることができたのも印象に残りました。
BEYOND THE BLACK
引き続きアリーナ後方で鑑賞。お次は女性ヴォーカルをフロントに据えたシンフォニックメタルバンド。さっきまでダミ声の黒人男ヴォーカルが縦ノリソングを熱唱していたのに、今度は女性ヴォーカルのシンフォサウンドとは、凄まじい落差ですなあ(まあこの後さらに大きな落差を感じるBrujeria - Winger間もあったのですが・・・)。
音だけ聴いた限りでは比較的ノーマルなシンフォニックメタルで、NightwishやWITHIN TEMPTATIONのような荘厳はそれほど感じなかったかもしれません。歌メロもものすごくキャッチーってほどではありませんでした。
しかしライヴパフォーマンスと演奏はとても良く、特にギターの弾きっぷりが好感触。要所要所で流麗な速弾きソロを決めており、単なるの間奏に陥らない見せ場となっていました。
ただ一番印象的だったのはヴォーカルのジェニファー・ハーベン。曲終わりのMCにて「ドイツ・・・ドイツカラ来マシタ。日本ニ来レテトテモ嬉シイ。日本大好キ!」と覚束ないながらも日本語で語ると、会場から温かい拍手と歓声が。こういうコミュニケーションって洋楽ライヴだととっても効果的ですよね。ほとんどの方が彼ら(彼女ら)に好感を持ったと思います。
その後すぐに「Motorheadのカバーをやる」というMCでジェニファーがシンセの前に座り、「Love Me Forever」の弾き語りを披露。切々としたシンセの音色に美しい歌声がピッタリとマッチした好カバー。他人の名曲ではあるものの、バラードでしっかりとショウの見せ場を作りだしてくれました。
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ここでいったん昼休憩。ソーキ丼と牛肉串をいただきました。このジャンクな飯もまたフェス名物ですね。今日は体に悪そうなものをしこたま食っていい日なのだっ!
ANTHEM
BIG ROCK STAGEでのL.A. GUNSの良質なハードロックを味わいつつULTIMATE STAGEのアリーナ前方へ。本日の日本代表・ANTHEMを迎え討ちました。
オープニングからさっそくバンドの代表曲である「Bound to Break」で一気にヒートアップ。「Hey! Hey!」のシンガロングが木霊する。個人的にはヴォーカルはさかもとさんの方が好みではあるものの、やはり森川さんの歌唱・シャウトの安定感と力強さは異常としか言えません!まあ若干暑苦しすぎるきらいはあるのですが(笑)、そこはハットがよく似合うスタイリッシュでカッコイイ清水さんの存在で相殺されていると考えます。
最新作『ENGRAVED』からの楽曲も80年代に残した名曲群にまったく見劣りしない、キャッチーな歌メロと攻撃性が詰め込まれた快作で、ライヴで盛り上がるのに何の心配も問題もない(この辺は今のOUTRAGEも同様)。
そしてライヴのハイライトはやはり「Hunting Time」「Venom Strike」の名曲2連発でしょう!この2曲は特に場内の(少なくとも僕の周辺では)シンガロングが大きく盛り上がっていました。ジャパメタの教科書と言える名曲をズラッと並べたセットリストは新鮮味こそないものの非常に強力で、この日の日本代表としての風格を存分に見せつけた文句なしのステージでした。
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ANTHEM後は少し会場内を見て回り、VICTOR ROCKSのサンプルCDやフライヤーを受け取りつつ、WINGER側のアリーナに降りる。隣のBIG ROCK STAGEでは初来日を果たしたメキシコ出身の覆面(というよりは穴の開いたバンダナ)デスメタル/グラインドコアバンドのBrujeriaが音楽・・・というよりは轟音をフロアにブチかましている真っ最中。
本日最も極悪なバンドではありますが、後半の「Si!」「No!」のシンガロングパートで「ハイ」「イイエ」と書かれた大きなボードを頭上に掲げるパフォーマンスが何だかかわいい(笑)。あのボードをこの日のためにわざわざ作ったのかと思うと胸キュンです。
Winger
僕は00年代以降のエクストリームだったり、スピーディーだったりする派手なメタルを主食としてきたため、正直80年代のアメリカンハードロックにそこまで大きな期待は寄せていませんでした。
よってこのバンドのライヴもそこまで真剣に観るモチベーションは無く、アリーナ後方でのんびり観ようと思っていたのですが・・・。
これが予期せぬほどの好パフォーマンスでビックリ!何がすごいかってレブ・ビーチとジョン・ロスのギターですよギター。2人とも恐ろしいほどのバカテクぶりで、高速でありながら正確無比なシュレッドソロをガンガン連発!しまいにゃそれがピッタリと重なってハモる!ここまで派手さと丁寧さがバランスよく融合しているソロはなかなか聴けたもんじゃないと思います。
この手の速弾きソロってたいてい勢いを重視するがあまり、リズムの破たんや粗雑さが見え隠れするものですし、個人的にも「ライヴは生モノ、勢い重視でOK!」くらいに思っていたのですが、2人のソロにはそういった粗さとは無縁で、かつライヴの熱さはキッチリ残っている。これが速弾きギターの神髄か!!
フロントマンのキップ・ウィンガーのキレのあるターンを交えたエネルギッシュなパフォーマンスや、ロッド・モーゲンスタインの凄腕演奏をキッチリ支えるパワフルなドラムも素晴らしいのですが、やっぱりツインギターに終始見惚れてしまいました。
本日の個人的目玉の一組であるOVERKILLをアリーナで待ちつつの鑑賞になったのが、プログレッシヴメタルの大御所Opeth。
プログレメタルの代表格である彼らのこと、当然下手なライヴをするわけなどなく、先ほどまでのWingerが作りだしたハードロック空間を完全に深淵で不気味で厳かなムードで染め上げてしまいました。フロントマンのミカエルは終始落ち着き堂々とした態度で、暗黒サウンドにマッチした地獄の底から響いてくるようなデスヴォイスと、打って変わってどこか色気すら感じさせるクリーンヴォイスを使い分ける確かな実力を見せつけていました。
ただ僕は基本的に速くてメロディーが豊かで長すぎない楽曲が好み。そんな僕の趣向とものの見事に正反対な彼らの音楽性は、あんまり響いてこないのが本音です。もちろん凡百のプログレメタルバンドには醸し出せない、独自のオーラというか、凄みみたいなものはビシビシ伝わっては来るんですけどね・・・。
ちなみに50分の演奏時間で5曲しかやらなかった(できなかった?)んだとか・・・。
OVERKILL
新作『The Grinding Wheel』が力作だったOVERKILL。初日のメンツの中では最も楽しみだったバンドです。最初の音出しからさっそく、バキンバキン響くベースが唸りとっても気持ちいい。D.D.ヴァーニはやっぱり最高にクールなベーシストです。
オープニングは新作からの一曲目「Mean, Green Killing Machine」。疾走チューンではなくノリの良いアップテンポといった感じの曲で、新作からライヴの幕開け曲を選ぶなら「Our Finest Hour」の方が個人的にはよりアガったのですが、この曲もシンガロングが熱い名曲。曲タイトルを叫ぶだけなので日本人にも簡単で良いですね(笑)
ヴォーカルのボビーはどうやら絶好調のようで、アルバム音源と何ら遜色ないヒステリックなシャウトをバンバン決めまくる。30年以上活動していてもう結構な歳であるはずなのに、このタカが外れたようなヴォーカルパフォーマンスは驚異的。
ただこうやってライヴで聴いてみると音自体は完全にスラッシュメタルのそれなれど、意外と全速力でサークルできるような疾走パートはそこまで多いというほどではなく、ノリの良いリフで頭を振らせるミドル~アップテンポのパートの方が目立っていたような印象でした。そのせいかモッシュ、サークルピット、クラウドサーフは僕が想像してたほど強烈ではなかったような気がします(まあ僕の周辺がそうだっただけで、後方や左側前方ではもっと激しい運動会があったのかもしれませんが)
ラストはもちろん名曲「Fuck You」!皆が中指を立ててファッキューファッキュー言いまくる!ここぞとばかりにピットも発生!僕も中指で応戦じゃ!!
やっぱライヴはアホみたいにブチ上がってナンボですね!じっくり鑑賞するのもいいモンですが、やっぱりスラッシュメタルは暴れたくなるのがメタラーの性ですよ、ええ。
ヘドバン Vol.14にて「ヴィジュアル・ショックの大魔王」として大々的に取り上げられていた大ベテランアリス・クーパー。続くVol.15ではそのライヴのシアトリカルな要素が語られていました。
10億ドル紙幣が飛び交う
アリスが巨大フランケンシュタイン・モンスターに改造されてステージを歩き回る
アリスが死刑執行され、ギロチンで斬首されてしまう
「今回はトリでもないし、ステージ・セットは持ってこないんじゃないの・・・?」と思う向きもいるだろうが、そんな心配は無用だ。・・・(中略)・・・アリスはきっちり毎回ギロチンで斬首されてくれる
正直楽曲はアメリカンな要素が強くあまり琴線に響いてこないのですが、こんな記事書かれたらライヴに興味持たないわけないでしょう(笑)
ライヴ開始直後にステージ上空から火花が降り注ぎ、中央にアリスが現れステッキを華麗に振り回しつつ歌いだせば、その後はもうスゴイの何のって!もはや音楽ライヴというよりホントにショーを観ているかのようでした。
アリスが入った大きな箱が爆破するわ、身長3mはあろうかという頭でっかちなフランケンシュタイン・モンスターが現れバンドメンバーを追い回すわ、背後のおもちゃ箱から出てきたピエロに黒いジャケットを着させてもらうも、10秒も経たぬうちに投げ捨てるわ(笑)、やりたい放題エンターテインメント!!こんな面白いものを観せてもらえたならば、曲が好みじゃないなんてつまらん不満は飲み込まざるを得ません。
終盤はもちろんギロチン!全身真っ黒な謎の2人組に取り押さえられたアリスが、そのままなすすべなくギロチンに拘束。無慈悲にも刃は降り下ろされ、アリスの首は真下へ・・・・・・しかしその後すぐアリスは復活。切り落とされた自分の首を掲げつつ歌い続ける。
ラストは特大のカラフルなバルーンがたくさんアリーナへ飛ばされるピースフルな光景で幕切れ。この後凶悪な帝王2組が登場するとはとても思えない、トリ並みの豪華なステージでした。
EMPEROR
大魔王の後に皇帝が現れるとは、またずいぶん大層な流れです。
ブラックメタル界隈における代表格とも言える彼らですが、その他一般的なブラックメタルバンドと比べると、メンバーのルックスは何というかかなり普通。あまり極悪な印象は受けない。特にヴォーカルのイーサーンなんて言っちゃ悪いけど見た目は完全にフツーの外国人のおじさんだし(笑)
しかしその音楽性は紛うことなき壮大で劇的なシンフォニックブラックメタル。本当にあなたがそんな声出してるの!?と思わんばかりの、デスヴォイスとは異なる狂気的な絶叫を連発!
いかにも北欧らしい寒々しさを感じさせるシンフォニックなシンセの音色が終始会場中を包み込んでおり、先ほどのアリス様が作り出したシアトリカルな空気はもう無い。そこにあるのは『In the Nightside Eclipse』のジャケットの風景のごとき、極寒の空気感!!今年は全体的にバンド間のギャップが凄まじいですね。
前述の通り、僕はメロディックなメタルが好みであるためブラックメタルに対して熱心なリスナーではありません(まあ彼らはこの手のバンドとしてはメロディアスな方だと思いますが)。しかしそんな僕でも彼らの生み出す圧倒的な音世界に終始見とれてしまいました。皇帝の尊厳が如何なく発揮されたステージだったと思います。
SLAYER
ラストはもうLOUD PARKド定番、スラッシュメタルの帝王SLAYERの登場です。
他に選択肢ないのかよ!と思われる方もいらっしゃるでしょうし、個人的にももっといろいろなバンドをヘッドライナーにした方がいいんじゃないかと思うのですが(2014年にARCH ENEMYが結果的にヘッドライナーを務めた時も特に違和感はなかったので、必ずしもベテランアーティストじゃなくてもいいと思うんですけどねえ・・・)、まあ今年は呼び込みに苦労した感がありますし、僕はまだSLAYERは1回しか観たことないので良いのですけど。
ステージにかかった垂れ幕に十字架とSLAYERのロゴがSEの「Delusions of Saviour」に乗って映し出され、そのまま「Repentless」へとなだれ込み、観客のボルテージは速攻で最高潮に!当然激しいモッシュ、サークルピットが形成されるためアリーナはカオス空間へと化す。僕はというと当然モッシュピットへGO!そのままサークルで左回り!SLAYERをおとなしく観るわけにはいかんでしょう!暴れるぞ!!
サークルを走り回っている最中、僕のすぐ前の方が転んでしまい、僕もそれに引っかかって体勢が崩れてしまうも、何とか周りの方がサポートしていただいたためすぐに立て直せました。どうもありがとうございます。
左右に分かれていたサークルが結合したようで、そのまま流れに乗ってアリーナ左側から右側へと場所チェンジ。そこで一旦ライヴはストップし、トム・アラヤのMCタイム。
一昨年観たときも思いましたが、こんな凶悪なバンドのフロントマンとは思えないほどトムの笑顔は優しげ。オーディエンスのSLAYERコールに嬉しそうに微笑む姿が印象的でした。場内も和やかになりましたが、そんなムードは「Waaaaaaaaaar!!!! Ensemble!!!!!」の叫びで一瞬のうちに崩れ去る。やはりSLAYERの爆走ナンバーのアドレナリン放出は異常。皆半狂乱でピット内をグチャグチャしてしまう。
ただ本音を言ってしまうと、速い曲のカッコよさは言わずもがなでありますが、SLAYERの遅い曲にあまり魅力を感じたことってないんですよね・・・。ライヴの中盤に疾走感を落とした楽曲を集中して配置したのは、ただ速さ一辺倒にならず起伏をもたらすためだとは思いますが、そこでちょっとテンションが落ちてしまったのは否めないかも。まあ遅かろうが関係なくピットで暴れている方もいましたが・・・。
ほんの数秒程度音がすべて止まってしまう(パフォーマンスは途切れることはなかったが)音響トラブルがありつつもライヴは進行していき、「Raining Blood」の不気味なイントロが響くと一気に再燃。そのまま「Chemical Warfare」へと流れ、ラストはエクストリームメタル史に燦然と輝く名曲「Angel of Death」。ここで最後の全力サークルピットへ参加!狂ったギターソロに突入するともはやフロアは狂乱の嵐。無慈悲で激烈なスラッシュサウンドでLOUD PARK初日を締めくくりました。 いや~~やはり帝王の威厳はスゴイ。貫禄のステージでした。大満足です。
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こうして年に一度のメタルの祭典初日が終了。もうこの時点で「LOUD PARKが半分終わってしまった・・・」というラウパロスに苛まれていたのですが(早っ)、あまり期待を寄せていなかったバンドも含め非常に充実したパフォーマンスを堪能できましたね。
そして2日目はライヴ以外の出来事も含め、非常に素敵な思い出に残る一日になったので、もうしばらくしたらまた別に感想をあげようと思っております。