2018年のご挨拶を済ませた後の、最初の記事は何について書こうかなぁ~と考えてみて、やはり去年の新譜の中でもある意味最もインパクトのあった本作の感想がいいだろうと思いました。
12月のリピート回数1位にして、2017年ベストアルバム10位にランクインさせた作品です。
このグループがデビューした当時僕は大学生で某CDショップでアルバイトをしており、邦楽を中心に品出しやら出荷やらを担当していました。そのためJ-POPの話題作などを自然と目にするため、BiSHについても割と早い段階で存在自体は知っていました。
ただそのときは過激なパフォーマンスやMVなどで一部注目を集めていたクソアイドル・BiSの生まれ変わりという知識しかなく、特に楽曲を聴こうとは思わずに「その他大勢のアイドルグループの一組」としか認識していませんでした(品出しをする際、「このBiSHってBiSの棚に並べたほうがいいかな・・・。いや、新しく作られたグループでメンバーも違うから別にコーナー設けたほうがいいかな・・・」とちょっと頭を悩ませた記憶があります/笑)
そんな僕が何故本作に手を伸ばしたかというと、僕のTwitterのフォロワーにBiSHのファンの方がいらっしゃるため、時たまタイムラインにBiSH関連のツイートが現れるのを目にするようになり、そこに記載されているあるキャッチコピーに興味を引かれたからです。
このグループの特集記事などで必ず出てくる
「楽器を持たないパンクバンド」
というもの。
中学・高校生の頃、パンク・メロコアに夢中で「J-POPなんてクソみてえな音楽聴いてられっか!!」なんてイキがっていたダサいロック少年時代の僕であれば(笑)「アイドル風情がパンクを名乗りやがって!フザけんな!!」とか思っていたことでしょう。
しかしCDショップのバイトにて様々なジャンルの曲をストアプレイで聴き続け、いろいろな音楽好きの方とお話をしていくことでつまらないこだわりは消え、「良いものは良い」と思えるようになった今では、どんな楽曲をやっているのか気になってしまい、YouTubeのMVやライヴ映像などで楽曲をチェック。
「OTNK」「MONSTERS」「GiANT KiLLERS」などのアグレッシヴな楽曲は意外なほどカッコよく、かつキャッチーに練られていて「アレ?なかなかいいんじゃね!?」と思っていたら、何とちょうどその時ニューアルバム(本作)が発売されたばっかり。当初買う予定だった別の新譜と合わせて衝動買いしてしまいました。
ちょっと前置きが長くなりましたが、そんなこんなで手にした本作。自分でもちょっとビックリするほど予想外に楽しめました。
フツーのアイドルと比べ圧倒的にロック色濃い曲で構成されているのはパンクバンドと銘打っているだけに当たり前と言えますが、楽曲がなかなかバラエティーに富んでおり、アルバムを通して一本調子に聴こえず飽きにくいのがいい。
ストリングスとピアノが効果的に使われたM1「My landscape」、シャウトが頻繁に飛び出すアバンギャルドなM2「SHARR」、わかりやすいシンガロングとキャッチーな歌メロが特徴的な先述のM3「GiANT KiLLERS」が続く序盤から勢い、各曲の個性共に充分。
シャッフルのリズムが効きながらサビはキャッチーなM4「SMACK baby SMACK」、SHANKを彷彿させるスカダンナンバーM5「spare of despair」などライヴハウスでキッズを暴れさせるのに向いた楽曲があるのもパンクバンドとしてナイスな部分ですね。
その他最もJ-POP的なメロディーが聴けるバラードのM7「JAM」、最も青春パンクっぽさを感じるM8「Here's looking at you, kid.」、まるでTHE BACK HORNのごとき歌謡メロと疾走感を持つM9「ろっくんろおるのかみさま」、M11「ALLS」などなど非常に魅力と特色あふれる楽曲ばかり。
一曲ごとに取り出せばかなり多彩でありながら、このバンド(楽器を持たないパンクバンドというキャッチコピーに則り、本文でもこのグループのことは「バンド」と表記します)の特色というか、根っこの部分はブレていない印象を感じるので、アルバムとしての完成度はなかなか高いと言えるのではないでしょうか。
無理やり難癖をつけるとすれば、「パンクバンド」って明言してる割には言うほどパンク、ハードコアっぽさがないことくらいでしょうか(笑)
いや、もちろんスカコア、メロコア、青春パンクといったパンク要素も内包してはいるんですが、パンクバンドと言うよりはパンク要素を取り入れたJ-ROCKみたいな塩梅で、個人的にはTHE BACK HORN、BIGMAMA、KEYTALKあたりのスタイルに近い印象を受けました。
ただあまりにハードコアチックになっちゃうと、今の楽曲のスタイルの魅力を損ねてしまうし、一般層にアピールするには効果的なキャッチコピーなので(事実このキャッチコピーがなければ、僕が聴くことはなかったと思う)、この点に関してはこのままでいいのかも。
あとシャウトがよく使用されているものの、やっぱり本場のスクリーモ、ポストハードコアに慣れてしまった耳だとどうしても破壊力不足に聴こえてしまうのも否めないところです。過去に喉の手術を受けたメンバーもいるようですし、シャウトが無くてもこのバンドの特徴はしっかり感じ取れるので、あまり無理はしない方が・・・というのは余計なお世話ですかね。
まあシャウトがあることによってさらに新たな特徴を付与し、楽曲をアグレッシヴなものにしている側面があるのは事実なので難しいところですが。
なんだか他作品の感想に比べ妙に長くなっちゃいましたが、とりあえずJ-ROCKファンが聴いて損はない高品質な作品に仕上がっているのは間違いないと思います。「どうせアイドルでしょ?」という色眼鏡をまず捨ててみて触れてほしいアルバムですね。
Dizzy SunfistやMY FIRST STORYといったバンドのサポートをしたり、札幌のパンクロックイベント・POWER STOCKに出演したりと、少しずつロックシーンに進出してきている感があるので、これからJ-ROCK/PUNKシーンにてどれだけ頭角を現すことができるか、今後も注目していきたいと思います。
M1 「My landscape」 MV
M6 「プロミスザスター」 MV
dustboxのSUGAさんが褒めただけあって(?)、メロディーの良さは保証済み