ひとりごと ~Music & Life-Style~

HR/HMを中心としたCD感想、足を運んだライヴの感想をメインにひとりごとをブツブツつぶやくブログです。

BRAHMAN 『梵唄 -bonbai-』 (2018)

BRAHMAN 『梵唄 -bonbai-』

東日本大震災から今日で7年。その復興支援活動の中心として動き続けているのは間違いなくこのバンドでしょう。先日キャリア初の日本武道館公演も大成功におさめた日本が誇るハードコアパンクバンド・BRAHMANのまたしても5年ぶりとなるフルアルバム。

 

邦・洋問わず、パンク系アーティストの中では最も好きなバンドで、全てのフルアルバムを愛聴してきた僕ですが、正直に言うとこのアルバムの事前発表時は期待半分・不安半分でした。

 

というのも本作品全12曲のうち、純粋な新曲はなんと冒頭4曲のみ。5曲目以降は前作『超克』以降において何らかの形で発表され済みの曲ばかりで、ラストの「満月の夕」はカバー曲。

 

既発シングル『其限』『不倶戴天』『今夜 / ナミノウタゲ』の3枚をすべて買ってきたファン(僕です)にとっては「え!?新曲こんだけしか入ってないの!?」と思うことは必然。

 

既発曲が多いという点では前作『超克』もそうでしたが(シングル2枚分、計6曲すべて収録)、それに収録されているシングルは素晴らしい完成度であり、かつアルバムのカラーにしっかり馴染んでいたため、不満を感じることなく単一の作品としてしっかりと楽しめたどころか、J-PUNK史に残る名盤として感動さえしました。

 

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しかし今作収録のシングル曲はあくまで個人的な感覚ですが前作ほどのインパクトは無く(充分以上に良い曲ではあるけど)、そして収録順も5曲目以降に固まってしまっているため、アルバムとしての構成がうまくとれているのかも疑問でした。

 

しかし聴き終えてみると何てことはない。しっかりBRAHMANらしい充実の作品に仕上がっているではありませんか!

 

オリエンタルな情緒あふれる特徴的なギター、縦横無尽にうねりまわるベースライン、ハードコア感を強めるドラムの連打、怒声のようなシャウトと感情剥き出しのヴォーカルの交錯・・・どれもこれもBRAHMANらしさ満載で期待を裏切るようなことは決してありません。

 

厳かなスタートからTOSHI-LOWさんのヴォーカルがゆっくりと力強く歌い上げられる、彼らとしては異色のオープニングM1「真善美」、続く民族音楽の要素が色濃いイントロと彼ららしいシャウトで疾走する、メチャクチャカッコいいキラーチューンM2「雷同」で一気に引き込まれる。

 

震災以降日本語詞にこだわっていた彼らにしては非常に珍しい、全英語詩のストレートなメロディックハードコアM3「EVERMORE FOREVER MORE」は『A MAN OF THE WORLD』に収録されていてもおかしくないような楽曲で逆に新鮮に感じるし、リードトラックのM4「AFTER-SENSATION」も今までの静と動の組み合わせを活かした楽曲とは異なり、サビにて一気にテンポを落とし叙情性を開放する構成が新しくて面白いです。

 

今作の新曲はM2を除けば従来のような激情を迸らせるくらいの勢いは控えめで、肩の力を程よく抜いた、フラットな印象を受けました。とはいえしっかり胸の奥に響くエモ的な哀愁はちゃんと健在。

 

5曲目以降は既発の楽曲が並びますが、ただ単にあり合わせの曲を並べただけのような印象は感じられず、しっかり単一の作品として機能しているように思えます。

 

M8「怒涛の彼方」はシングルで聴いた時はさほど印象に残らないと思っていましたが、今回は東京スカパラダイスオーケストラのホーン隊がガッツリ参加していることで、非常に面白いアレンジになっています。BRAHMANのような武骨で硬派な音楽性にホーンって合うの?という疑問があったのですが、こうして聴いてみると違和感なく溶け込んでいますね。

 

配信限定シングルであるM11「天馬空を行く」はアルバムバージョンとなっており、よくある「ちょっとマスタリングされただけ」ではなく、歌詞も含めてだいぶ大きく様変わりしています。疾走するサビのカッコよさは健在どころか、BRAHMAN特有のシンガロング・・・いや、怒号が追加されており、個人的にはこちらの方が勢いマシマシで好きです。

 

そしてラストを飾るのは前述のとおりアルバム中必ず一曲収録されるカバーで、阪神淡路大震災をキッカケに生まれた「満月の夕」。中川敬さんと山口洋さんの歌詞を織り交ぜた形で、NHKのThe Coversでも披露された曲。

 

東日本大震災の無残な光景を目の当たりにした際に頭に浮かんでいたという楽曲で、TOSHI-LOWさんは弾き語りなどでたびたび歌っていたそうですが、ここにきてちゃんと音源化。ゲストミュージシャンとして中川さん、山口さん、囃子にうつみようこさんが参加。

 

原曲が良いのはもちろんのことですが、やはり震災に最も真摯に対峙していたバンドだからこそ説得力を帯びるのでしょう。武道館で聴いた時は思わず泣きそうになっちゃいました。

 

発売前のつまらない懸念などなんのその、バンドとしての音楽性やアルバムとしての完成度の高さは当然として、感情に訴えかける意志の強さをひしひしと感じる、まごうことなき傑作だと思います。やっぱり僕はこのバンドが大好きなんだなぁと再認識しました。これからもバンドが死滅するまで追い続けますよ!

 

ただ次のアルバムはもうちょっと早めに出してくれると嬉しいかも(笑)

 

M4 「AFTER-SENSATION」 MV

 

本作のトレイラー