ひとりごと ~Music & Life-Style~

HR/HMを中心としたCD感想、足を運んだライヴの感想をメインにひとりごとをブツブツつぶやくブログです。

HIBRIA 『Moving Ground』 (2018)

HIBRIA 『Moving Ground』

先日のANGRAに引き続き、ブラジルのヘヴィメタルバンドの新譜感想。

 

そのキャッチーで熱すぎるメロディー、そのメロディーに負けないくらいの強靭極まりないユーリ・サンソンのヴォーカル、高密度に練り込まれた高度な演奏で、ここ日本では高い人気を誇っていた正統派ヘヴィメタルの雄・HIBRIAの6thフルアルバム。

 

2004年の衝撃的なデビュー作『Defying The Rules』発売以降、幾度かのメンバーチェンジを行いながらも活動を続けていたバンドでしたが、昨年末にバンドのリーダーでありギタリストのアベル・カマルゴ以外のメンバーが揃いも揃って脱退することを発表。アベルはまだHIBRIAを再建する意思があり、バンドとしては解散をするわけではないものの、現体制でのアルバムとしては本作が最後ということになってしまいました。

 

ここ数作は初期2作ほどメロディーのキャッチーさは控えめで、ややヘヴィでテクニカルな方面に力を注いでおり、前作『Hibria』は演奏の密度こそ従来通りの濃度ではありましたが、メロディーが若干淡泊な感があったように思います。

しかし本作発表前の宣伝文句などでは"メロディックな方面へ原点回帰"のように煽られており、すわ1st、2ndのような作風か!?とメロディックメタラーの期待感を高めていました。

 

ただ個人的にはこの手の煽り文の「原点回帰」という言葉はあまり信用ならないと思っていて(汗)、果たしてどんなもんか・・・仮にもラストなんだから力作を頼むよ~と、期待と不安が半々くらいの気持ちで聴いてみました。

 

・・・うん、確かにここ数作の中ではロディアスな要素が濃い!単純にパワフルなヘヴィメタルとして非常にカッコいい音を鳴らしている。

 

テクニカルなベースラインから勢いよく疾走するタイトルトラックM1「Moving Ground」は曲タイトルを叫ぶサビも合わせて、名曲「Tiger Punch」を彷彿させる曲。その後のM2「A Life For Yourself」もノリの良いリフでアップテンポに駆け抜け、サビのキャッチーなフレーズも実にHIBRIAらしい佳曲。M3「The Shapeshifter」はここにきて前につんのめるような性急な疾走感とドコドコのバスドラ連打が痛快な、本作中随一の体感速度を感じさせる楽曲で、前半の勢いの良さは申し分なし!

 

ユーリの熱くてカッコよすぎる(そしてちょっとクドイ/笑)ヴォーカルもバリバリだし、演奏も相変わらずヘヴィ&テクニカルで音圧も充分!とくればコレは文句なしの良作でしょう!・・・と手放しに誉めたいところなんですが・・・。正直言うと本作の満足度が凄く高いかと問われると、そこまで絶賛するほどでもないかなぁ・・・という感じ。

 

確かにカッコいい楽曲が多いです。メタルとしてのクオリティー自体は間違いなく高い。

ただ何というか「良くも悪くも佳曲止まり」と言うとちょっと嫌な言い方になってしまって申し訳ないのですが、突き抜けたモノがやや感じにくいかなぁと。

 

前述のM1も「Tiger Punch」を彷彿させるとは言ったものの、ぶっちゃけると「少~し熱量の下がったTiger Punch」みたいに感じてしまったのは事実ですし、その他の曲もキャッチーではあるけどそれなり・・・みたいな印象で、かつての全身全霊を賭した楽曲で聴き手のアドレナリンを爆発させるような覇気は控えめ。

 

後半の楽曲は勢いはそのままなものの、メロディーの質は若干落ちているような気もしますし、何より全曲同じテンションでゴリ押ししているため(まあ元々それが売りみたいなトコがあったけど)、曲数が少ないにも関わらず結構なお腹いっぱい感がきてしまうのが個人的にはちょっとマイナス。

 

メタルとしてのクオリティーはしかとしたものがあるにも関わらず、素直に絶賛する気になれないのは、やはり初っ端に『Defying The Rules』『The Skull Collectors』というメロディックメタルの名盤を2枚続けて出したがために、HIBRIAとは非常にキャッチーで熱いメロディーをかき鳴らすピュアメタルの大本命である!みたいなバイアスが僕の中でかかっちゃたんでしょうかね。

 

何度も言うように完成度の高いヘヴィメタルであることは間違いなく、フツーにカッコいい楽曲を多く取り揃えているので(特に冒頭3曲と国内盤ボーナストラックのM10「Reset My Brain」)、正統派メタルが好きな方は聴いて損するような作品では決してありません。最後の作品として納得感のある力作と言えるでしょう。

ただやっぱり「お前らの真の実力はそんなモンじゃないだろ!?」というちょっぴり釈然としない気持ちが芽生えてしまうのも本音。

 

しかしこれからどうなるんでしょうかねこのバンドは。一応バンドとしては存続するものの、実質解散に近いこのメンバー脱退劇、果たしてどう乗り越えるのか。

 

この記事を作成している現時点(2018年3月18日)では新たなギタリストとドラマーが見つかっているようなので、何とか立て直して再出発してほしいもんです。同郷のANGRAだってメンバーが半壊した状態から見事に再生したわけですし、このバンドにもまだまだ未来はあるでしょう!

 

しかしユーリの後任はキツイよな・・・。あの尋常ならざるテンションで叫び続けなきゃいけないんだから・・・。良い人材が見つかるといいんですが。

 

M1「Moving Ground」 MV