結成20周年を迎えた歌謡グランジ/オルタナティヴロックバンドの、インディーズ期以来の久々リリースとなるミニアルバム。ジャケットはドラムの松田さんの作品なのだとか。
このバンドは1st『人間プログラム』はかなりドス黒く生々しい狂気を孕んだもので、それ以後は割と爽やかな印象を織り交ぜるも、歌謡的なキャッチーさを豊富に取り込んだ荒々しいロックでおおむね統一されており、本作もその流れを順当に汲んだ仕上がり。ダークな怪しさ、胡散臭さを漂わせつつもキャッチーなバクホンサウンドは不変で、ファンなら安心して楽しめる内容に仕上がっていると思います。
まあ「バクホンは初期の狂気的な頃のほうが良かった」みたいな意見は多いようですし、僕も『人間プログラム』は名作だと思っているので、その意見を否定するつもりはありませんが、あの絶叫が何作も続くとさすがにバンド・リスナー共に疲れちゃうでしょうし(笑)、個人的には聴きやすくなったのは悪い変化ではないと思ってます。
出だしやAメロこそおとなしく淡々としておりちょっと不安になるも、サビではキャッチーなメロディーで疾走するM1「Running Away」でアルバムをスタートさせ、実力派ベーシスト・岡峰さんがその本領を発揮しまくったサウンドがインパクトを放つ、現在のTHE BACK HORNの王道中の王道ナンバーM2「儚き獣たち」、彼らのポップな側面を強く映し出すM3「閃光」が続く前半はどれもストレートな勢いに満ちていて聴きごたえアリ。
そしてそのあとに続くM4「がんじがらめ」は本作中異彩を放つ、やや変態的でアヴァンギャルドなグランジナンバー。まあ異彩と言ってもこの手の曲も彼ららしいっちゃ彼ららしいんですが(笑)。フラフラしたおかしな山田さんの歌唱が聴き手を翻弄するも、サビではしかとキャッチーに決めるのが良いですね!
M5「情景泥棒」、M6「情景泥棒~時空オデッセイ~」はタイトルこそ組曲っぽいものの、普通に独立した楽曲として聴けます。
前者は怪しさ、不気味さを携えつつ(ラストのサビ前のベースや静かなパートなんか特に)サビでは印象的なメロディーを聴かせる曲。
後者はやや雰囲気モノの印象が強く、どこがサビなのかわからないまま長い間奏に入って、そのまま幕を閉じてしまいます。THE BACK HORNらしい独特の怪しげな雰囲気こそあるものの、彼らには歌モノのロックを求めていた僕にとってはちょいと微妙。タイトルトラックなのだからもうちょっと強い楽曲にしてほしかったかな。
ただラストのM7「光の螺旋」は本作中最もアグレッシヴな勢いに満ち、サビも歌謡的なキャッチーさが殊更に強い実に彼ららしいキラーチューン!やはりこの手の岡峰さん作曲の疾走曲はカッコいいですね!
7曲のみのミニアルバムですが、なかなか密度が濃く聴きごたえのある作品だと思います。
「丸くなった」とか「ライヴだと声出なくなった」とか言われがちなバンドではありますが(笑)、狂気こそ薄れたもののまだまだこのバンドは現役ですよ。
M1「Running Away」 MV
M4「がんじがらめ」 MV Short Ver.
アクが強い(笑)