まさかこのバンドが単独の音源を出すとは思いませんでした(笑)
彼らしけもくロッカーズは、2014年に発売された任侠映画サントラ風のパンクロックオムニバス『Japanese Katana Soundtrack V.A.』に参加するために結成(?)された、dustboxの変名バンド。とはいえメンバーはまるっきり同じではなく、本来ベース&コーラス担当のJOJIさんがヴォーカルを務め、ベースにはKRISさん(dustboxのマネージャーらしい)、ドラムはHawaiian6のHATANOさんが担っています。
音楽性は哀愁叙情メロコアのdustboxとは異なり、メロディーの叙情性よりアグレッションを重視した、野蛮でダークな疾走ハードコアパンク。19曲という収録曲数の多さと、ほとんどの曲が1~2分台のショートチューンで構成されている点も実にハードコアらしくて潔い!
とはいえ音作りはdustboxとほとんど大差ないため、SLANGや鉄アレイといった実力派ハードコアバンドと比較すると、重厚さや荒々しさ、アングラ臭は控えめ。JOJIさんとSUGAさんによるヴォーカルも本格的なハードコアのようにそこまで極悪な感じではなく、従来よりもがなり気味ってな感じで、その軽さが気になる人は気になるかも?
まあ僕はSUGAさんのギターは結構好きなので楽しめるんですけどね。パンク系統だけでなく、デス・スラッシュなどのエクストリームメタルにも造詣の深いSUGAさんらしく、ギターリフは単純なハードコアというより、クロスオーバースラッシュのような切れ味を持ったものでなかなか熱くてカッコいい!
そして所々で飛び出すギターソロはスラッシュメタルめいた速弾きを披露しており、確かな技術を見せつけてくれます。dustboxでも時折熱いソロを弾き倒していた彼ですが、直球のスラッシーなハードコアチューンをプレイするにあたって、ここにきて本気を出してきたということでしょうか。特にM1「ROTTEN TOMATO」、M6「OxPxP」のバリバリの速弾きソロはひと際熱い!
全体的にはFUCK YOU HEROES、BBQ CHICKENSあたりを彷彿させるハードコアで、一曲一曲取り出してどうこうと言う音楽性ではないのですが、それでもこの手のアルバムとしては、割と曲の個性がハッキリとしているところも多いのが特徴。特にdustboxのオリジナルアルバムに収録されてもおかしくないほどサビがメロディックなM7「DENY YOU EVERYTHING」とM17「去るゴリラ珍パンG」ホーンが前面に出た能天気なスカコアナンバーM13「HEY! BARBIE」、"オクラホマミキサー meets METALLICA"(どういう意味かは聴けばわかる)なインストM14「オクラホマスタンピード」などが特に印象的でした。
やはりキャリアと実力のあるメンバーが集っただけあり(ベースのKRISさんは例外)、ファストで程よくキャッチーなハードコアパンクはクオリティーが高く楽しめましたが、公式サイトのインタビューを読む限り、本作のレコーディングは相当テキトーに行われているらしく、話し声や笑い声が混じっているのをOKテイクにしたり(そして本人たちはそれがOKになっていたことすら知らなかった)、酔っぱらった勢いで19曲一気に歌録りしたり、レコーディング前の練習がそもそも2回しかなかったりなどなど...(笑)
よくそれでここまでの音源作れたな...。いや、ノリと勢いで一気に録ったのが功を奏して、ここまでフルスロットルな作品に仕上げられたのかな...。
あとハードコアと言えば権力に中指を立てる反体制の姿勢が基本ですが、このバンドの歌詞はそういった要素はほとんどなく(せいぜいM7くらい)、ほとんどの曲でしょーもないヘイトをまき散らしています(笑)。ただ結構共感できる人は多そうなので、歌詞にも注目してみるといいかも。
M5「GOLD MONKEYS」 スタジオセッション
M14「オクラホマスタンピード」 スタジオセッション