ひとりごと ~Music & Life-Style~

HR/HMを中心としたCD感想、足を運んだライヴの感想をメインにひとりごとをブツブツつぶやくブログです。

At The Gates 『To Drink From The Night Itself』

At The Gates 『To Drink From The Night Itself』

彼らがいなければ現在のエクストリームメタルシーンは違ったものになっていただろうと思われる、伝説のメロディックデスラッシュバンドの最新作。発売間もない先日の来日公演も素晴らしかったです。

 

2014年に前作『At War With Reality』を発表し、そこで長いブランクを物ともせずにAt The Gates流デスラッシュを生み出せることをバッチリ証明してくれた訳ですが、本作はそこでの期待を一切裏切らない入魂の慟哭メロデス

 

とにかく哀しく陰鬱。

楽曲群に込められた感情を喜怒哀楽で分けるとするなら、おびただしいほどの""で溢れている、そんな作品です。疾走パートもスローパートも、リフもリードも、ヴォーカルに至るまで全てにおいてポジティブな瞬間が全然無え!!鬱屈という言葉をエクストリームメタルにあてがったらこうなる、みたいな塩梅です。

 

M1「Der Widerstand」のイントロからすでにもの哀しい感情が溢れかえっているのが手に取るようにわかり、そこから刻まれるAt The Gates以外の何物でもない、アグレッションとエモーションを兼ね備えたギターリフが飛び出せばもうこの時点で名盤確定。ここから先、哀しみの波状攻撃は止まらない。

 

M2「To Drink From The Night Itself」、M6「The Chasm」のような問答無用の激情スピードチューンから、M5「Daggers Of Black Haze」、M8「The Colours Of The Beast」といった速さを抑え、重苦しさをプンプン放つスロー~ミドルチューンに至るまで、聴いててやるせなくなるほど悲痛な哀愁に満ちています。

 

音作りの方も自分たちのサウンドの美学を引き立てるように徹底されていて、近年のアルバムにしてはやや音の輪郭が不明瞭(に感じる)な音質が、洗練されたエクストリームメタルにはあまり感じられないデスメタル特有の禍々しさ、おどろおどろしさを表現するのに一役買っているし、所々に挿入されるアコギ・クリーンギターが悲壮感をさらにマシマシに。

 

全楽曲において胸の奥をかきむしる激情が溢れており、捨て曲やテンションの落ちるパートは一切ありませんが、テンポの速い遅いはあれど、曲の色・スタイル・基本線はすべて同一のものであるため、各曲の個性みたいなものは薄いかもしれません。恐らく曲順をテキトーに並べ替えて聴いてもあまり違和感は感じないかも。まあこの手のデスラッシュにバラエティに富んだアルバムを期待する人はいないでしょうから特に問題はありませんが。

 

しかし本作のラストを飾るM12「The Mirror Black」は例外。この曲はアルバムを締めくくるにふさわしいクライマックス感あふれるミドル曲です。ギターフレーズ、トーマス・リンドバーグのヴォーカル、どれ一つとってもこの上なくドロドロした暗澹な雰囲気を醸し出していますが、特に耳を引くのはラスト2分ほどから聴ける、ストリングスとコーラスによるアウトロ

 

胸を焦がすという表現が相応しいほどの強烈な哀愁がストリングスの音色とマッチして、聴いているアルバムがデスメタルであることを忘れさせるほどに儚げな美しさを演出。ここまで聴き終えた後の余韻にじっくりと浸れるデス系の作品ってなかなか無いのでは。国内盤のボーナストラック(本作のデモ音源や別バージョン)をわざわざ別のディスクに分け、この曲の後に余計な音を付け足さなかったレコード会社、Good Job!

 

初期IN FLAMESARCH ENEMYのような、メロディーを奏でることをとりわけ重視したリードギターをほとんど用いず、愚直なまでにまっすぐで小細工無しの音を展開しながら、ここまで心に響く悲痛な哀愁を表現することができる彼ら。まさにメロディックデスメタルの基本形にして頂点です。

 

M2「To Drink From The Night Itself」 MV

 

M3「A Stare Bound In Stone」 MV