タイというヘヴィメタルのイメージがいまいち湧きにくい国から見事国内盤デビューを果たした(マニアの間では以前から注目を集めていたようですが)メロディックスピードメタルバンドの3rdアルバム。僕は前2作は未聴でして、彼らの音は本作が初なのですが、すでにマニアックリスナーから注目されていたという事実は聴いて一発で納得しましたね。
とにもかくにもクサい。とってもクサい。
どこを切って鼻が曲がりそうな臭いがします。ここまでストレートに臭いを放つメロスピって今のご時世なかなかめずらしいのではないでしょうか。90年代後半から2000代前半にかけマニアを悶絶させた"クサメタル"の精神を正しく継承する愛すべきヤツらです。
どうやらヴォーカルが今作から代わっているらしく、本作で実に臭う歌を披露しているのがリーン・ヴァン・ランナというブラジル人ヴォーカリスト。この手のバンドとしてはなかなかにパワフルな歌いまわしを見せており、ヘナチョコな感じはそんなに感じられない(あくまでも"そんなに"レベルですが...)。時折か細くも印象的なハイトーンを絞り出しており、そこがまたイモ臭くも味のあるクサメタルらしさを表現していると言えるかも。
そして演奏も割と堂に入ったプレイを聴かせてくれます。メロスピながら線の細さを感じさせない硬質なリフを刻むギターも良いですが、プログレメタルらしさを強く押し出すM4「Saint Raphael」にて、ブリブリ目立ちまくるラインと印象的なスラップを披露するベースが面白い。MVを見た感じひと際ルックスに華がないと思いましたが(笑)なかなかどうしていいプレイじゃないですか。
しかし何といっても一番耳を引くのは楽曲ですよ。しっかりしたクオリティーを持った演奏を以てしても、何故か垢抜けなさ、ダサさ、B級っぽさを感じさせてしまう絶妙なクサメロスピ!!
イントロから続くM2「Saint Michael」にていきなり印象的なリフと共に疾走!ど~~しようもないほどの哀愁・クサさに満ちたリードギターが炸裂すればそこはもう異国の異臭世界。やたらピロピロしたフレーズを聴かせるギター、暑苦しい歌いまわしのヴォーカル、大仰でポジティヴ、だけどどこか切なさを醸し出すサビ......これぞ古き良きクサメタル!!
サビの高音がややフラフラしつつも、何とか頑張ってハイトーンシャウトをひり出す様が微笑ましくも熱いM3「Saint Raguel」、先述のプログレッシヴメタルのようなギターとベースの掛け合いが面白いM4と、前半からB級クサメタラー、メロスパーを喜ばせるツボをついた楽曲が光ります。
スネア裏打ち、ツーバスドコドコの疾走曲はもちろんながらM8「The Lost Tales」やM9「Forever (Hades And Persephone)」といったミドルテンポ、バラードの出来も良いですね。特にM8なんかキーボードの音色含めて哀愁バリバリでクサすぎる!ただこの曲における女性ヴォーカルはやや稚拙な気が...(汗)
そんなこんなでクサメロスピ愛好家にはたまらん音を出しているバンドですが、個人的に一番キタのがM5「Saint Gabriel」です。なにが気に入ったかっていうと、クサすぎて速いところ(笑)
出だしの裏声コーラスからもう激臭ですが、そこからくっせえ哀愁をまき散らすツインリードで疾走、キラキラしたシンセやピロピロ速弾きギターも飛び出し、サビはもちろん劇的極まりない哀メロだ!!
クサい!クサすぎる!どこをとってもやりすぎなまでのクサさに満ちている!!
これぞクサメタルのお手本よ!!
とても2018年に出た音とは思えない、時代錯誤感ハンパないクサメロ祭りでした。この手のメロスピバンドとしては演奏やヴォーカルなど、クオリティー面も割としかとしたものを持っているので、B級バンドはちょっと...ていう人も聴けたりして。
ただ23分以上にも及ぶ(!)大作のM10「Genesis Of The 13 Olympians (War Deities)」に関しては、正直これをもう一度聴きたいとは思えません(笑)
M3「Saint Raguel」 MV
MVを見る限りA級のパフォーマンスは望めないかもですが(スミマセン)、楽曲はメロスパーの琴線に触れる確かなもの。
本作のティーザー