ひとりごと ~Music & Life-Style~

HR/HMを中心としたCD感想、足を運んだライヴの感想をメインにひとりごとをブツブツつぶやくブログです。

BRAHMAN 『A MAN OF THE WORLD』 (1998)

BRAHMAN 『A MAN OF THE WORLD』

2018年9月1日で発売20周年を迎える、BRAHMANの1stフルアルバム。タイミングが良かったので感想を書きましたが、このまま2nd20周年、3rd20周年と続けていくかは未定です(笑)

 

彼らの音楽性を形容する上で欠かせないフレーズが"ハードコアと民族音楽の融合"。このスタイルは2018年現在になっても不変で、普通のパンクバンドにはない、BRAHMANBRAHMANたらしめる最大の要素となっています。インド、スペイン、アイルランドなどのいろいろな国の土着的な音楽をバックボーンに、BRAHMANならではのメロディーやアレンジ、演奏を作り上げています。

 

そして驚くべきは、1stアルバムの時点でそのオリジナリティー全開の音楽性がすでに確立されていることハードコアパンク、メロディックハードコアと呼ばれる音楽はスタイルがかなり定型化されてしまっているために、突出した個性を持つことは難しいと思うのですが、彼らは20年前の時点で他のどのバンドとも似ていない独自性極まりない音を放っているのです。

 

現在よりもまだストレートなメロディックハードコア色が濃い作品ですが、マイナーキーで彩られた民謡チックなメロディー、本作より加入したKOHKIさんによる異国情緒を醸し出すギターは、今聴いても古臭さを感じさせない新鮮な驚きがあります。

 

本作におけるその最たる例が、BRAHMANが結成されて初めて作ったとされるM5「TONGFARR」でしょう。和風ともエスニック風とも言える情緒あふれるクリーンギターがインパクトを放ち、そこにパンク的シンガロングを織り交ぜた、静かな中にも神秘的な力強さを秘めた一曲。

 

まるでフラメンコのように情熱的なアコギがアクセントなりつつ、激情ハードコアとしての矜持も持ち合わせたM8「NO LIGHT THEORY」、不穏な空気をまとったスローな展開ながら、これでもかとオリエンタルな空気を演出するM9「HIGH COMPASSION」、アンデス地方の民謡「フォルクローレ」のコード進行を真似て作られたとされるM11「時の鐘」なども、民族音楽をベースにしたBRAHMANらしさ満点の楽曲です。

 

すでに彼らの色がハッキリ現れつつもハードコアとしてのアグレッションも充分であるためか、いまだに本作からの楽曲がライブで演奏されることも多い。M3「ANSWER FOR…」とM10「SEE OFF」はライヴの定番で地獄のモッシュピットが発生することでもお馴染みですね(笑)

 

欠点としては、まだまだタイトで洗練されているとは言い難い演奏と音作り、そして今の彼からは想像もつかないほどノッペリしたTOSHI-LOWさんの歌唱でしょうか(ついでに言うと体型も信じられないほどヒョロい/笑)。

 

これはこれで古き良きパンクらしい音であると言えるし、ヴォーカルも彼ならではの個性、味みたいなものは備えてはいるので、あまり欠点とは言いたくないのですが、やはりさすがに今の耳で聴くとかなりチープな印象は否めません。後追いで聴いた僕は当初「なんか軽いな...」と感じたものですが、聴きこむにつれて本作の味わい深さにハマッていったクチなので、まあこの辺は好みによるところですね。

 

インディーズ期の、しかもバンド初のフルアルバムでありながら、バンドブームによる波にうまく乗っかり、彼らに対する注目度の高さも相まってかなりの好セールスを記録した代表作。そして"BRAHMANとはいったいどういう楽曲をプレイするバンドなのか"を最もわかりやすく体現した名盤です。

 

ちなみに本作は権利関係をめぐってバンド-レーベル間でひと悶着あったため廃盤となっており、本作の楽曲にインディーズ期のミニアルバムの楽曲を加えてリレコーディングした作品『ETERNAL RECURRENCE』が発売されています。

 

そちらでは本作のチープさ、軽さが劇的に改善されているので、そちらだけ聴いてもまったく問題ないのですが、稚拙なんだけどより生々しい激情が詰まっている本作も聴き継がれてほしいなあと思います。

 

M5「TONGFARR」 ライヴ

公式のMVがなかったので非公式のライヴ映像を...