ひとりごと ~Music & Life-Style~

HR/HMを中心としたCD感想、足を運んだライヴの感想をメインにひとりごとをブツブツつぶやくブログです。

Primal Fear 『Apocalypse』

Primal Fear 『Apocalypse』

ヘヴィメタル

それは熱く魂を鼓舞してくれ、時に切なく胸を打つ。そこはかとなく漂うダサさ、仰々しさ、胡散臭さすら武器として、ハード&ヘヴィな刺激を提供し続ける。ロックの中でもひと際過激で異彩を放つ不思議な音楽。

 

そんなヘヴィメタルもここ30~40年近い年月を経て様々なスタイルに細分化し、今となってはとてもすべてを追うことは不可能なレベルにまでサブジャンルを抱えるようになりました。

 

メロディー以上に驚異的なスピードと攻撃的なリフを重要視したスラッシュメタル

 

90年代以降のモダンヘヴィな音色や、ヒップホップなどの異ジャンル要素も貪欲に取り入れたニューメタル。

 

がなり声やダミ声というレベルを軽々と超越し、非人間的な領域にまで凶悪に歪ませたヴォーカルが特徴のデスメタル

 

ケバケバしいメイクと適度な毒気、華々しさとチャラさを合わせ持つグラムメタル。

 

スピード感とポップで叙情的なメロディーを掛け合わせたメロディックパワー/スピードメタル。

 

弦楽器が時にバンドサウンド以上に主張し、最大級のドラマ性を発揮するシンフォニックメタル。

 

ハードコアやデスメタルといった過激さをベースに、リズム重視のヘヴィネスを加えたメタルコア

 

世界各地の民謡を取り入れ、牧歌的ともいえる独自のメロディアスさを武器とするフォークメタル............

 

もうホントに個性豊かなんて言葉じゃ間に合わないほどのジャンル・スタイルを持つ音楽形態であるというのはメタルファンならご存知の通り。

 

そんな多面性を持つ音楽故、しばしばジャンル論争、各ジャンルごとのファンによるディスり合いに発展することもあるのだとか。

 

スラッシュメタルなんてギャーギャー騒いでうるさい。メタルどころか音楽ですらない。」

 

「グラムメタル?LAメタル?あんなチャラくせえ奴らメタルじゃねえ。」

 

「70~80年代の要素こそメタル。ニューメタルとかモダンヘヴィネスとか訳わからん。」

 

「デス声気持ち悪い。デスだのブラックだの生理的に無理。」

 

メロスピなんてアニソンもどきの音楽、キモいオタクしか聴かねえよ。」

 

「日本人ってだけでメタルじゃない。」

 

掲示板みたいな類は一切見てないので、↑は僕が想像で書いたものですが、多分こういうやり取りは未だに行われているのではないでしょうか。個人的には「ガタガタうるせえな。俺に言わせりゃみんな立派なヘヴィメタルだ!」と思うのですが。

 

ただヘヴィメタルファンが良く言えば自分の愛するスタイルに誇りを持つこだわりの強い人、悪く言えば価値観の違いや多面性を受け入れられない偏狭な人が多いというのは事実だとは思います。

 

皆さんはどうですか?これだけ膨大なジャンルを持つに至ったヘヴィメタルというジャンルにおいて、どのジャンルが、ひいてはどんなバンドが真のヘヴィメタルだと思いますか?

 

僕は先述の通りどのサブジャンルも立派なメタルだと認識してはいますが、「これがヘヴィメタルだ!」と胸を張って言える、ジャンルを象徴するような音は何かと聞かれれば、答えは一つに絞ることができます。

 

ドイツが生んだ鋼鉄集団・Primal Fear

彼らが奏でるサウンドこそヘヴィメタルオブヘヴィメタル。「メタルって何?」という人にはとりあえず彼らのアルバム聴かせりゃいい。そのくらいのレベルでヘヴィメタルを象徴する存在だと思っています。

 

以上、ムダに前置きが長くなりましたが(笑)そんな最強鋼鉄集団の最新作、当然ながら彼らのヘヴィメタル像は潔いほど何ら変わっていない!ヘヴィメタルを愛する者ならば、クズリくんのお父さんのごとく「きゃっほ~う!!」快哉を叫ぶこと請け合いの作品です!

 

まず何よりもイントロのM1「Apocalypse」から一気に疾走するM2「New Rise」がいきなりカッコよすぎる名曲。このスピーディーなメタリックリフ、熱き展開に頭を降らないメタルヘッズはいないでしょう!

 

ノリの良いミドル~アップテンポの正統派メタルの見本と言えるM3「The Ritual」、M5「Blood, Sweat & Fear」(名曲)、M9「The Beast」などは、疾走一辺倒にならない普遍的なメタルのカッコよさを伝えるうえでは、この上ないほどの良い例。特にM5における強靭なリフ、3:53~くらいで聴ける、ラルフ・シーパースによる圧巻のハイトーンスクリームは失禁モノのカッコよさ…!!

 

M8「Hounds Of Justice」はどこかオリエンタルなムードを醸し出すクリーンギターが飛び出し、8分にもおよぶ大作のM10「Eye Of The Storm」は間奏のシンフォニックサウンドが荘厳さを際立たせるなど、多少サウンドの振り幅、各曲の個性はあれど、すべての曲において"正統派ヘヴィメタル"の軸は全くと言っていいほどブレていない。剛直なリフが終始鳴りやまないパワフルなメタルナンバーは安定感抜群かつハイクオリティー極まりなく、この楽曲の充実度はもはや異常。

 

初回限定盤にはM12「Fight Against The Evil」、M13「Into The Fire」、M14「My War Is Over」という3曲ものボーナストラック付き。

 

前作もそうでしたし初回限定盤のみボートラつけるのはやめてほしいんですが(笑)、これらの楽曲も飛びぬけた出来でこそないものの、本編に勝るとも劣らない良質な楽曲に仕上がっているので前作同様初回盤の購入をオススメいたします。

 

しかしアレですね、ありとあらゆるサブジャンルが生まれ、その中でもジャンルを代表するバンドがバンバン出てきている昨今、もうこのバンド以上にヘヴィメタルらしいヘヴィメタルをこれほどまでの高クオリティーで提供できるバンドは、もうこれから先出てこないんじゃないですかね?

 

相変わらずメタリックな質感を発揮しまくる演奏、現メタル界最高峰のメタリックなハイトーンスクリームを放つヴォーカル、安くならないキャッチーさを含んだメロディー。まさにヘヴィメタルの理想郷と言える音世界を何年にもわたって築き上げ続けるPrimal Fear。彼らがこの音楽様式を続けていく限りヘヴィメタルは生き続けるでしょう。これから先どんなサブジャンルが台頭したとしても。

 

M3「The Ritual」 MV

このリフ、この歌、このパワー。これだよ、これこそがヘヴィメタルですよ。

 

M8「Hounds Of Justice」 MV