2008年に一度解散するも、その後もちょいちょいライヴ活動を挟み2017年に再結成したアメリカ出身のメタルコア/メロディックデスメタルバンド・LIGHT THIS CITYの10年ぶりとなるニューアルバム。
このバンドについてはまったく知らなかったものの、ディスクユニオンのストアプレイでその凶悪ながらも耳に残るメロディックなフレーズに興味を引かれ、輸入盤が安かったこともあり購入してみました。
バンド名で検索をかけてみると、多くのサイトで"メタルコア"と"メロディックデスメタル"という2つのジャンル名を見かけましたが、音を聴いてみて納得。確かにメタルコアっぽくもあり、メロデスっぽくもある!
どこか哀しみを携えたリードギターのフレーズはメロディックデスメタル直系のものですが、アルバム全体のサウンドの質感は、ヘッドバンギングよりハードコアなモッシュが似合いそうなメタルコアの雰囲気を醸し出している。この音を「双方のいいとこどり!」と捉えるか、「どっちつかずで中途半端」と捉えるかは人によりけりですかね。
まあ元々メタルコアというジャンル自体メロデスに影響を受けて生まれたらしいので、この2つのジャンル間に大きな隔たりは無く(スタイルによるけど)、一緒くたになっていても大して違和感は感じないので特に問題は無いでしょう。それに音楽が良ければジャンルなんてどうでもいいし。
At The Gatesを思わせるような哀しいアコギのイントロから、緊迫感溢れるメロディックなフレーズでゆっくりと幕を開け、一気にメロデスライクなリフで疾走するM1「Reality In Disarray」から早速彼らの凶暴性と叙情性が浮き彫りになる。ギュワ~~ンと唸りを上げるギターソロも迫力充分でカッコいいですね!
そして何よりも特徴的なのがヴォーカルのシャウト。紅一点のヴォーカルであるローラ・ニコルの、所謂デス声とは異なるアグレッシヴ極まりないヒステリックなシャウトは実に凶悪!とても日本の人気タレント二名を組み合わせた名前の女性のものとは思えません!(関係ない)
ただ個人的にはこの聴いてるだけでノドが痛くなってしまいそうなシャウトは好みのタイプとはややズレてしまうのですが...
暴れまわるドラムとツインギターによるリードのハモリが印象的なM2「A Grotesque Reflection」、ズッシリと重いリフを弾き倒しつつ、よりキャッチーさを強めたフレーズで疾走、後半のテンポダウンしたパートがこれまたメチャメチャクールなM3「Dormant Tide」が続く前半から勢いは充分。
ちょうどアルバムの中間にあたるM5「Death Downwind」が非常に切ないアコギの調べを披露するインストで、そこで小休止できるのですが、それ以外はほぼ同一のテンションで突っ走る楽曲のみで構成されており、その勢いが削がれることは無い。変に落ち着かずに荒ぶりまくるのは好感触ではありますが、ちょっと一本調子な感は否めないかも。
どの曲もメロディアスかつアグレッシヴで捨て曲は無いのですが、飛びぬけたキラーチューンと呼べる曲が無い点も一本調子感に拍車をかけてしまっているのかな...とも思いました。ただ一曲ごとの時間は短く(ほとんどが3分台で終わる)曲数も10曲と控えめなため、聴き疲れを覚えることはないのは良い。
メタルコアだのメロディックデスメタルだの細かいジャンル分けは抜きにして、とにかくエクストリームメタルに凶悪さ、獰猛さ、そしてメロディアスな要素を求めている血の気の多いメタルヘッズは聴いて損なし。
ちなみにドラムのベン・マレーは、だいぶ前のインタビューではあるものの、CAVE INやCONVERGEといったハードコア寄りのバンドを高く評価しつつ、KILLSWITCH ENGAGEやAS I LAY DYINGというメタルコアの代表というべきバンドを安っぽくてつまらないと評しており、さらにAt The GatesやCARCASSに影響されてバンドを始めたとのことなので、本人たちの意識的にはこのバンドはメロディックデスメタルなのでしょう。
しかしAS I LAY DYINGなんて、彼らのような「メロディアスかつアグレッシヴ」というスタイルのバンドの中では最高クラスにカッコいいバンドだと思うのですが...。やっぱり人の好みとはわからんものだなあ。
M6「Agents Of Fate」 MV
M2「A Grotesque Reflection」 Official Stream