ひとりごと ~Music & Life-Style~

HR/HMを中心としたCD感想、足を運んだライヴの感想をメインにひとりごとをブツブツつぶやくブログです。

THE PINBALLS 『時の肋骨』

THE PINBALLS 『時の肋骨』

 

現在邦楽ロック界隈はやや画一的な感があり、たいていみんな似たようなマッシュヘアで、歪みの薄い健康的なポップス/ロックをプレイしている印象があります。

 

もちろん中にはメロディーが気に入るバンドもいるけれど、基本的にはもう似たようなバンド多すぎ毒気無さすぎメソメソナヨナヨしすぎみたいな(僕が知らんだけかもですが)

 

もうメジャーな日本の音楽シーンでは、荒っぽくて思わず拳を握りしめて熱くなれるようなロックはほぼ死滅してしまっているのではないかと思えてしまうほどです。こんな体たらくで良いのかロックンロールよ。

 

まあバンドブームもとうに過ぎ去った今、バンドで熱くなりたいなんて考える人自体少ないのかな~なんて思っていましたが......

 

来ましたね。台風の目になり得そうなヤツらが。今後の日本のロックシーンを背負っていってほしいと期待をかけられるバンド。

 

彼らTHE PINBALLSは2006年に埼玉県で結成された4人組。THEE MICHELLE GUN ELEPHANTBLANKEY JET CITYに影響を受けたロックンロール/ガレージロックをプレイするバンドです。

 

もともと良いバンドだなと思ってちょいと目はつけていたつもりで、全曲新曲のメジャー1stフルアルバムということで、かなり気合いの入った作品になるのではと期待をかけて購入。

 

そして聴いてみて驚きました。まさかここまでカッコいいロック・アルバムに仕上げてくるとは。

 

M1「アダムの肋骨」の怪しさ、いかがわしさ、胡散臭さ、泥臭さをしっかりと携えながらも、非常にキャッチーかつ力強いメロディーと演奏に一気に引き込まれる。そこにはナヨナヨした軟弱さなどは一切ない。まさにミッシェルあたりの流れを汲む"日本のロック"の姿がある。

 

何よりも前半4曲の勢いが強烈。前述のM1から続く、荒いギターリフとヴォーカルがアップテンポで駆け抜ける2分未満のショートチューンM2「水兵と黒い犬」、やや落ち着きつきをみせるAメロ・Bメロの展開から、一気に感情を爆発させるサビが強烈なM3「DAWN」、本作中特にメランコリックな歌メロが胸に迫るエモーショナル極まりないM4「失われた宇宙」(名曲)という流れが秀逸で、一気に気持ちよく痛快に聴き通せる。

 

中盤から後半にかけても彼らの十八番と言っても良さげな、毒を携えつつ荒っぽく駆け抜ける曲、牧歌的な明るさをと憂いを秘めたミドル曲、味わい深く湿っぽいバラードなどをとりそろえ、幅をしっかりともたせつつも、どの曲にも彼らの曲とわかる個性が息づいているのです。

 

そしてそんな楽曲を彩るヴォーカルがまた最高にカッコいい。ギターヴォーカルの古川さんの歌声は、いかがわしさをにじませたガレージロックチューンにおいてはがなるような力強いハスキーな声で、優し気なミドルチューンにおいては弱くならない程度にしっとりと歌い上げる。声質自体も曲の雰囲気にバッチリとハマっていて、まさに日本語ロックンロールの理想と言えるのでは。

 

ノイジーに歪ませソロを引き倒すギターと、サウンドの骨格となるリズム隊も勢いがあって曲の良さを活かしているのも美点でしょう。この手のサウンドは演奏がひ弱だと一気に魅力減ですからね...。特にM6なんかめっちゃカッコいいんですけど。

 

アタマからケツまで、バンドブームで培われたジャパニーズ・ロックを今に継承するような楽曲が立て続き、個人的にあまり馴染みの薄いスタイルでありながら、そのカッコよさにすっかり聴き惚れてしまいました。

 

今後のJ-ROCK界の潮流となり得るポテンシャルは充分にあるはず。それこそかつてのミッシェルのように売れればうれしいんですけど、今の時代じゃやはりまだまだ厳しいか...?

 

全国の音楽関連の書籍出版社の皆さん、今すぐ彼らを巻頭特集して、表紙に抜擢し大プッシュしてください![ALEXANDROS]ばっかりじゃ読者も飽きちゃうぞ(笑)

 

M1「アダムの肋骨」 MV

サビ終わりの"Adam's rib!"の叫びが最高にカッコいい。

 

M4「失われた宇宙」 MV

本作中最も個人的なツボを刺激するメロディーが聴ける。名曲です。

 

M6「CRACK」 MV

特に派手な装飾を施さなくても、カッコいいMVは作れるという好例。