ひとりごと ~Music & Life-Style~

HR/HMを中心としたCD感想、足を運んだライヴの感想をメインにひとりごとをブツブツつぶやくブログです。

CHTHONIC 『政治 Battlefields Of Asura』

CHTHONIC 『政治 Battlefields Of Asura』

そんじょそこいらのパンク・ハードコアバンドにも負けないほどの強い政治思想を備え、非常に高品質なメロディックブラックメタルをプレイしてきた、タイワニーズ・エクストリームメタルバンドの8thフルアルバム。

 

ヴォーカルのフレディ・リムは2016年に政治家として選挙に当選し、それを機にバンド活動がややスローペースになってしまったようですが、ここにきて待望の新作が誕生しました。

 

日本では政治家がヘヴィメタルバンドで活動するなんて絶対無理でしょうね~。白髪の生えたオッサン共が「政治に携わる者が『悪魔がお前を殺しに来るぞ』などと歌うヘビメタをやるとは何事だ」などと文句を垂れてるのが目に浮かびますわい(笑)

 

そんなことはさておき本作の内容ですが、ブラックメタルらしい禍々しさや邪悪さといった要素は、フレディの金切り声以外ほぼ消滅。シンフォニックサウンドがアジア圏ならではの情感を描いたメロディーを奏でるメロディック・エクストリームメタルとなっており、非常にドラマチックかつ聴きやすい音になっています(ヘドバンのインタビューにおいて本人たちも「自分たちをブラックメタルバンドとは捉えないでほしい」と語っている)。

 

音作り自体もそこまでヘヴィに寄っていないのも聴きやすさに拍車をかけており、これを音圧が物足りないと捉える人もいるかもしれませんが、まあ過去作だってそんなもんですし、音楽性や雰囲気には合っているので良いでしょう。ただスネアドラムの音はもうちょっとズッシリさせてほしかった。

 

特筆すべきはそのメロディーの劇的さで、全ての楽曲において映画音楽かと思うほど緊迫感に満ちた名演が堪能できます。ふんだんに使われている折り重なるコーラスもうまいこと活かされており、ズンズンとこちらに迫ってくるかのような、大迫力のサウンドが目白押し。

 

特にオリエンタルなムードを強烈に醸し出すストリングスとリードギターがカッコいいM4「A Crimson Sky's Command」、サビ裏におけるメロディーがこれまた劇的で、リードギタークワイアと共に疾駆したあと、より壮大なエンディングを迎えるM6「Taste The Black Tears」は素晴らしい出来。ここまで心に訴えかけてくるのはやはり同じアジア人の感性だからなのでしょうか。

 

そしてアルバムのクライマックスとなるM10「Millennia's Faith Undone」は、これまでの9曲分で描いてきたドラマの集大成とも言うべき名曲で、その次々と繰り出される激情の旋律には鳥肌を禁じ得ません。大層盛り上げるだけ盛り上げた後の、静寂に包まれるラストがまた余韻に浸れて良いんですよ...。そのまま静かなアウトロM11「Autopoiesis」に繋がる構成もナイスです。

 

ただボーナストラックの「Takao」のライヴ音源において、なぜかダンスミュージック的なアレンジが施されているのはやや疑問。なにやらDJがついているようなのですが、彼らを代表する名曲なのだから普通にやってくれていいと思うの。

 

とはいえアルバム本編についてはケチをつける隙はほぼ無いと言っても良く、同じアジアの民族である日本人の感情にも強烈に訴えかけてくる名盤に仕上がっています。

 

M4「A Crimson Sky's Command」 MV

 

M10「Millennia's Faith Undone」 MV