これまた濃ゆいバンドが現れたモンですなあ(笑)
国籍不明どころかメンバーのマトモな素性すら明らかにされていない、4人組正統派パワーメタルバンドのデビュー作。こういった大仰な設定や、いわゆる覆面バンド的なものをイロモノとする向きもあるかもしれませんが、個人的にはイロモノはイロモノで好きなので気になりません(笑)
それにこのバンドは単に設定が面白いだけでなく、ちゃんとプレイする音楽も非常にレベルが高いのです。
ところどころで異国情緒を醸し出しながらも、ジャンルは基本的には至極まっとうなパワーメタル。モダンにならない硬質でメタリックなリフを主軸に組み立てられたキャッチーな正統派サウンドはかなり僕の好みに近く、聴いていて自然と拳を握りしめ頭を振りたくなります。
オープニングのM1「Give 'Em All」は正統派の体はしっかり保ちつつ疾走、わかりやすいサビで熱くなれるパワーメタルナンバー。そのままアップテンポでキャッチーに展開するM2「Never Surrender」へ流れ、速さを殺しヘヴィさを増したギターで攻めるM3「Hephaitos」へと続く。割とありがちな流れではありますが、どれも良質なメロディーやシンガロングパートを持っており楽しめる。
そしてその後に待ち構えるM4「Gladiator」、攻撃的なリフにキャッチーな歌メロ、バスドラ連打の疾走感を併せ持つ本作随一のキラーチューン。前の曲がスローナンバーだっただけに、疾走した時の興奮がより高まる。中盤の穏やかなクリーンギターと低音ヴォーカルの絡みも聴きどころになっていますね。
アルバム全編通して疾走一辺倒というわけではなく、むしろ楽曲のメインを張るのはミドル~アップテンポのパート。しかしほぼ全ての楽曲で勇壮な雰囲気が感じ取れるので、パワーメタルとしての覇気とは充分。特にM8「Sparta」とM9「The Last Battle」のコーラスなんか、共に歌い、叫びたくならない漢はいないでしょう!
良くも悪くもこれだけ濃厚な作風ながら、全10曲というコンパクトさのおかげで聴き疲れを誘発させないのもポイント。ボートラのM10「Die Flut」がピアノとストリングスで彩られる、哀しくも美しいバラードであることも聴き終わったあとの気持ちよさを助長しています。単純な歌メロのみの魅力ならばこの曲が一番良いかも。ヴォーカルの説得力もバッチリです。
こいつは正統的なパワーメタルを好む人(僕もです)にとっては期待のニューカマーなのではないでしょうか。SabatonやPOWERWOLFといった劇的で勇壮なバンドのファンであれば必ずや気に入るポテンシャルを持っています。やや珍妙な設定で聴かないのは大損であると胸を張って言えますね!
あとヴォーカルのトリビューンの歌声、SERENITYのゲオルグ・ノイハウザーにクリソツなのは多分気のせいです(笑)
M4「Gladiator」 MV
曲も最高ですが、MVの世界観も結構好きです。
M8「Sparta」 MV
2:17~一緒に歌わざるを得ない