K.C.H.C.(カシワ・シティ・ハード・コア)を代表するバンドとして90年代に活躍した伝説的ハードコアバンド・ヌンチャク。そのヌンチャクでヴォーカルをとっていた向達郎さんがフロントマンを務めるバンドの2013年作のフルアルバム。
その実力の高さに対してあまり頻繁にライヴなどはやっていないっぽいし、長いこと新作音源が出ていないのですが、Twitterアカウントにて「今年に新作を出す」的なつぶやきを発見。本当か!?本当なんだな!?ウソついたら針千本飲ませるぞ!!(笑)
現在の最新作である本作の感想を書きつつ、じきに出るであろう新譜への期待感を募らせようと思います。
さて、そういうわけで本作についてですが、朗々とした低音クリーン・デスヴォイスを操る向さんと、要所要所で高音絶叫コーラスをブチ込む中瀬さん(最近一億円で話題を呼んだ前澤社長が在籍していたハードコアバンドであるSwitch Styleの元メンバー)によるツインヴォーカル、カオティックともプログレッシヴとも呼べそうな複雑怪奇な曲展開、不穏で怪しく、胡散臭さを感じさせるメロディー、不可思議な魅力に彩られた日本語詞......
本来単純明快な音楽であるはずのハードコアパンクなのに、一言では言い表せない独自性極まる音を創り出しています。とにかく普通じゃない。そしてそのクオリティーが非常に高い。
上記した彼らの個性が完璧に再現された名曲M1「ナイーブ レターズ」で幕を開け、ツインヴォーカルの忙しない入れ替わりが激しさを演出するも、後半はうってかわってストレートでキャッチーに疾走するM2「例え言葉は冷静に」の段階で、彼らの奇妙で混沌とした音世界にたちまち意識を奪われていく。
叙情的なギターフレーズと静かなクリーンパートを取り込みつつ、「美しい」とすら形容できる劇的なサビが素晴らしいM4「劇団ノーサンキュー」、早口ヴォーカルが絶大なインパクトを与える、本作中最もカオティックなM5「氷」など、ハードコアバンドとしてはありえないほど個性の主張がすさまじい。
激しさと怪しさ、キャッチーさを絶妙にミックスさせたkamomakamome流ハードコアパンクが全曲にわたって展開されており、頭から聴いていれば確実に魅せられてしまう良質な出来なのですが、そんなリスナーに対し容赦なくトドメを刺す最強のキラーチューンが本作のラストには待ち構えているのです。
M10「手を振る人」。この曲からビシビシと感じる熱量たるやハンパではない!ツインヴォーカルの絶叫とサビの"我ら!ソングライティング!!"のシンガロングでテンションがブチ上がり、切なさをにじませたクリーンヴォーカルとリードギターに胸を焦がされ、ラスト一分にかけて展開される絶叫の交錯と圧巻のサビ!!もう圧倒されるしかない!!無機質なエクストリームサウンドでは体感できないこの生々しい激情!!最高だ!!
2013年は多くのパンク、ハードコアバンドがこぞって良作をリリースした年でしたが、間違いなく本作はその中でもトップクラス。10年代のジャパニーズハードコアの名盤といっても過言ではないでしょう!今後の新作も本作に負けないほどの名盤を期待しています。
M1「ナイーブ レターズ」 MV (名曲)
M10「手を振る人」 MV (大名曲)