言わずと知れたキング・オブ・シンフォニックメタルの最新作。
メロディックで劇的なメタルが好きな人であれば聴いて当たり前、好きで当たり前みたいな存在ではありますが、実を言うと僕は彼らの音はあまりしっかり聴き込んではいないと言うのが正直なところ。
元々パンク上がりのリスナーで、あまり長い曲・アルバムが得意ではない僕にとって、彼らの生み出す作品というのは全体的に濃密過ぎるのです。もちろん「Emerald Sword」「Power Of The Dragonflame」のように一発で「スゲエエー!!」と思える曲もあるにはあるのですが、アルバム一枚通して聴くのは途中で疲れちゃって結構キツイ。
さらにバンド名に"Of Fire"が付いてからというもののあまり良い評判を聞かないので、ここ最近のアルバムは完全に手付かずの状態。
さらにさらに現在はRhapsody Of FireをRhapsody Of Fireたらしめていた絶対的フロントマンであるファビオ・リオーネすらバンドを去っている。
バンド自体がかなり厳しい状況に晒されている今、本作を買ってまで聴く必要はないかな、なんてことを思っていました。
しかし後任ヴォーカルであるジャコモ・ヴォーリの評価、及び本作の前評判がなかなかもので、「新生Rhapsody Of Fireか如何なるものなのか、確認してみるのも悪くないかも」と思い直し、本作を購入するに至りました。
そしてザッと聴いてみて、確かになかなか良いなと。さすがにかつてほどの豪華絢爛・荘厳美麗なサウンドには至らないものの、必要にして充分なスケール感が存在しています。
ジャコモのヴォーカルも、さすがにファビオと比べれば高音部はやや線が細く感じるものの(これは比較対象が悪すぎるだけにしゃーない)、充分音楽性にマッチした説得力ある歌唱を聴かせています。「ラプソはファビオじゃなきゃ認めん!」みたいな人でない限り、安心して聴けるヴォーカルではないでしょうか。
そして何より出だしの印象が良いのが強いですね。インストのM1「Abyss Of Pain」から続く冒頭3曲!勇壮で力強く、そこまで長くない尺の中でドラマをしっかりと描くシンフォニックメタルナンバーとなっています。
特にM4「Rain Of Fury」は勢いよく切り込むシンセのイントロから既に名曲の予感を感じさせ、堂々たるメロディックなサビで彼らの世界観に酔わせられる。こういう即効性の高さはメロディックメタルにはやはり重要だと思います。
牧歌的とも形容できそうな(何かRPGで訪れる村のBGMみたい)メロディーを持つバラードM6「Warrior Heart」、あまりギターが前に出てこない本作において珍しくアグレッシヴなリフが登場するM9「Clash Of Times」など印象的な楽曲を配しつつ、ハイライトとなるのがM10「The Legend Goes On」。
合唱を誘う壮大なサビとシンセにより彩られるドラマチックな一曲で、見事にアルバム後半の山場を生み出している。大仰なタイトルに恥じない、個人的には前述のM4と共に本作のツートップとも言える名曲!
10分前後の大作を2曲収録しているとは言え大半の楽曲は4~5分台でまとめられていて、かつとっつきやすいメロディーを主軸にしていることもあり、それほど聴き疲れを覚えないところも個人的にはありがたいですね(「それほど」と言っている時点で僕の音楽的体力の低さを察してください)
気になるところと言えば、ガチのオーケストラサウンドがあまり使われず、全体的にシンフォサウンド自体が昔と比べて小ぢんまりとした印象を受けるところでしょうか。メロディーのドラマチックさはしっかりしているので、決してショボいわけではないのですが、さすがにRhapsody時代と比べちゃうとね...。
ただこれは僕のような濃すぎる音楽に慣れてない人にとっちゃ「聴きやすくなった」と言える変化ですから、無下に否定するのは気が引けるというものですが。
Rhapsodyという名前にこだわりを持っている方がどう感じるかは微妙なところですが、僕のようなこれと言って思い入れの無い、ノーマルメタルファンにとっては普通に良質のシンフォニックメタルとして楽しめました。
M3「Master Of Peace」 Official Lyric Video
M4「Rain Of Fury」 MV