ひとりごと ~Music & Life-Style~

HR/HMを中心としたCD感想、足を運んだライヴの感想をメインにひとりごとをブツブツつぶやくブログです。

MYRATH 『Shehili』

MYRATH 『Shehili』

前作フル『Legacy』の完成度の高さと、LOUD PARK 16での充実のパフォーマンスも記憶に新しい、チュニジア出身のシンフォニックメタルバンドによる最新作。

 

チュニジアの音楽シーンなんて知らないのはもちろん考えたことすらありませんが、彼らのような高品質なバンドが存在することを考えれば、なかなか有望なアーティストが息をひそめていたりするのでしょうか。

 

さて、そんなメタルファンからの期待値の高い彼らの最新作ですが、前作を気に入った人であれば今回も充分以上気に入るであろう作品に仕上がっています。

 

KAMELOTを彷彿させる荘厳で美麗なシンフォニックメタルの音を主軸にしつつ、アコースティックサウンド民族音楽の要素、エスニックな異国情緒あふれるメロディーラインが見事に調和した楽曲群。音楽的にかなり濃厚であるのに、どこか爽やかな印象もあって、味わい深くも聴きやすい奇跡のバランスが体現されています。

 

イントロのM1「Asl」からのM2「Born To Survive」で早速彼らの個性がむき出しになる。まるでアフリカの部族が炎を囲んで儀式を行っているようなただならぬ雰囲気を持ちつつ、単純なシンフォニックメタルとして高い完成度を誇るナンバーへと流れ込んだ段階で、もうMYRATH流メタルにすっかり取り込まれてしまいます。

 

「リフからではなく歌メロから作曲していった」とライナーノーツにありますが、本作のメロディーの充実度を考えるとそれも頷けます。哀愁をまとい木綿のように柔らかな質感を持つ美メロは、ややヘヴィよりの楽曲、民族音楽の要素を色濃く打ち出した曲、王道のシンフォニックメタルチューンにまで、全編に渡って発揮されています。

 

そのメロディーを丁寧に紡ぐ、ザヘル・ゾルガティのヴォーカルもまた素晴らしいの一言。情熱的にコブシを効かせて歌うスタイルで、歌唱力の高さはもちろん、サウンドの雰囲気にバッチリと合っているんですよね。また歌いまわし自体はやや暑苦しいタイプであるのに、曲の短さと美麗なアレンジのおかげでクドく感じることもない。ホントこのバンド、楽曲づくりのセンスに優れていますね...

 

捨て曲らしい捨て曲は存在せず、全曲個性的かつ高品質なエスニック・シンフォニックチューンで占められていますが、個人的に特に気に入ったのは、M4「Dance」とM8「No Holding Back」の、MVが作られた二曲。

 

前者は民謡要素全開でありつつ、メタルとしてのカッコよさや荘厳な迫力、キャッチーに響くメロディーが際立ち、後者はファンタジックとすら言えそうな豪勢なイントロからインパクト絶大。大仰に盛り立てつつも非常にキャッチーで聴きやすい、美しいメロディーが絶品なのです。

 

映画のように凝った出来栄えのMVもドラマ性があって見ててワクワクしますし、単純に楽曲の出来自体も文句なし、5分以上の曲が無くアルバムのまとまりもバッチリと、非の打ちどころのない作品だと思います。メロディックメタル、シンフォニックメタルファンは聴き逃せない、2019年最重要アルバムの一枚と言って良いかも?

 

M4「Dance」 MV

 

M8「No Holding Back」 MV