まあまずはこのジャケットですよね(笑) ただ少しHR/HMをかじってしまうと、そこまでものすごく変だとは思わなくなってしまうのが怖い所。一般の音楽ファンであれば確実に失笑モノのはずですよねコレ。
スウェーデン出身のメロディアスハードロックバンド・CRAZY LIXXの6枚目のフルアルバム。
スウェーデン含む北欧は、個人的にはエクストリームメタルの非常に盛んな地域という印象ですが、この手のメロハーも強い様子。やはり寒冷地で生を受けて育った人たちは叙情的なメロディーを好む感性を身に着けるのが常識となっているのでしょうか。
音楽的にはスリージーな印象を受けつつ、ギラギラした照明を受けて大観衆の前で繰り広げられるようなメジャーな雰囲気をまとったハードロック。とはいえアメリカンなカラッとした感じではなく、日本人の肌にも合いそうなメロディーが良い感じに染みます。こういったバンドをあまり聴いてこなかった僕でも充分以上魅力的に感じる楽曲が目白押し。
元気いっぱいなジャケットに違わず音楽自体にもパワーに満ち溢れており、確かな歌唱力で堂々と歌い上げるヴォーカルと煌びやかなコーラス、適度にアグレッシヴな展開がとても心地よく響きます。LAメタルにも通じるエネルギッシュな楽曲は、近代メタルよりも80年代ハードロックを好むオジサマオバサマにウケやすいかも。
発売直後Twitterに流れていた感想では「1stアルバムのSKID ROWのよう」という意見がチラホラ見受けられましたが、確かにそれも頷けるような音ですね。ヴォーカルも熱唱型だし。
M1「Wicked」~M2「Break Out」~M3「Silent Thunder」という頭3曲の出だしがとても良く、どの曲にも耳なじみの良いキャッチーなメロディーと疾走しすぎない程度に勢いを持たせた演奏が息づいています。特にM3の突き抜けるようなポップさが良いですね。
優しくも切ない哀愁と美麗なコーラスが染みるM7「It's You」や、湿り気を帯びた叙情性がガッツリ導入されたバラードM8「Love Don't Live Here Anymore」のような良曲が中盤に配されているおかげで中だるみを感じることも無く、本作中トップクラスの躍動感、弾けんばかりのエネルギー、メロディアスなギターソロを有したM10「Never Die (Forever Wild)」で本編を締める構成も良い。一つ一つの曲を抜き出しても、アルバム一枚通してみても、これといった欠点らしい欠点は見当たらない出来です。
ただ全曲良いのは間違いないのですが、どの曲もだいたい同じテンションで進んでおり、飛びぬけたキラーチューンが無いと言えなくもないかも(しいてキラーを挙げるとすれば前述のM10か)
何というか「100点満点中80点台前半くらいの楽曲で固められたアルバム」というような印象なので(いや、そんなアルバムを作れる事はスゴイ事なんですけどね)、90点台のキラーチューンとインストの小曲を1曲ずつ盛り込むなどして、アルバムのメリハリがもっとついたらさらに気に入ったかもしれません。
とはいえ80年代型ハードロック、叙情性たっぷりの北欧メロハーを好む人であれば聴いて損はしないと断言できます。
M2「Break Out」 MV
M3「Silent Thunder」 MV