スウェーデンを代表する正統派パワーメタルバンドSabatonにギタリストとして加入したことで話題を呼んだ、トミー・ヨハンソンによるメロディックスピードメタルバンド(プロジェクトと言うべきでしょうか)のフルアルバム。
元々はREINXEEDというバンド名で複数のアルバムをコンスタントにリリースしていましたが、ここに来てバンド名を変更したため一応1stアルバムという扱いかな。個人的にはREINXEEDの方が他になさそうな個性もあり、カッコいいバンド名だと思うんですけどね。
REINXEEDはアルバム一枚持ってたはずですがあんまり印象に残ってないや...。改めてちゃんと聴き直さないと。
トミーは本作に収められた音について「パワーメタルに美しい展開やシンフォニックサウンド、キャッチーなコーラス、ハイトーンヴォーカルを取り入れたもの」と形容しているようですが、まさにまったくその通りのスタイル。メロディックスピードメタルを愛する人にはご馳走と呼べるものでは。
正統的なパワーメタルのようにリフに重きは置かれないものの、歌メロが非常にキャッチーで聴きやすく、スピード感もしっかりとある。STRATOVARIUSのようなキラキラシンセも登場し、曲によっては勇壮な雰囲気も持ち合わせている。
まさに洗練された北欧のメロスピの王道を突っ走る音で、B級臭さはそれほど感じないのも良いところですね。マニアならともかく、重度のメロスピマニアというほどではない僕は、あまりにB級な音にはハマれないので...
ブリブリのベースとトミーのハイトーンから幕を開けるM1「Above The Sky」から早速北欧情緒を漂わせつつキャッチーに疾走するメロスピ。飛翔感あふれるポジティヴメロディーがたまらんです。
ストラト・ソナタイズムあふれるメロディー、どこかネオクラっぽいシンセも登場するM5「The Way Of Redemption」、これまたネオクラ風シンセが主張し、天を仰ぐように突き抜けたサビが気持ちいいM7「Future World」、面白おかしい遊園地ムードを存分に放ち、運動会もしくはカステラでお馴染みの「天国と地獄」のフレーズも大胆に取り入れた、本作随一の煌びやかさを誇るM9「Father Time (Where Are You Now)」など疾走曲の出来は非常に高く、REINXEEDで鍛えられたトミーの作曲センスの高さがよくわかります。
さほど疾走していない楽曲においても必要十分なキャッチーさが光っており、疾走曲ほどの気持ちよさは無いとはいえ、スピードを落としたらつまらなくなるということがないのも頼もしいです。
ボートラを除くと本編ラストとなるM10「Alliance Forever」は本作中最高にサビのメロディーの出来が良く、ポップに弾けつつもどこか翳りを持った歌メロは僕の琴線にビシバシと触れてきますね。ツインリードを織り交ぜつつメロディアスに響くギターソロも素晴らしいです。
国内盤ボートラはM7の2002年に録られたクソ音質の悪いバージョンと、映画『スペースボール』の主題歌である「Spaceballs」のカバーで、正直あまり面白いトラックではなく文字通りボーナス、おまけとして考えるのが良いでしょうね。
パワフルで男臭さ満載のSabatonに加入した後でも、自身の本分・得意分野であるメロスピ100%で勝負してきた痛快作。SKELETOONの新作がジャーマンメタル好きにとっての2019年マストアイテムならば、本作は北欧メロスピマニアのそれです。聴き逃さないようにしましょう。まあ本作のドラマーはジャーマンメタル畑のウリ・カッシュなんですが(笑)
M1「Above The Sky」 MV
M2「Rising Tide」 Official Lyric Video