2017年のEVOKEN FESTで来日を果たしたTEMPERANCEに所属していたキアラ・トリカラコと、ジュリオ・カポネが中心となり結成された5人組シンフォニックメタルバンドのデビュー作。「元TEMPERANCE」という肩書が果たして日本においてセールスポイントになるのかはわからん(笑)
デビュー作とはいえ元々キャリアのあるメンバーばかりで構成されており、かつミキシングとマスタリングを担当したのがイタリアのメタルシーンにおいて凄腕のプロデューサーとしても活躍しているらしい、DGMのシモーネ・ムラローニとくれば、クオリティーの低い作品にならないことは約束されているようなものですよね。
どこか神秘的で謎めいたジャケットにも惹かれつつ購入してみましたが、こりゃ確かに完成度の高い作品。
TEMPERANCEで展開されていたシンフォニックでメロディアスなメタルという軸はブレず(僕はあまりTEMPERANCEを聴きこんでいないので知った風なことは言えませんが...)、Nightwishにも通じるようなダークなゴシック風味、キアラによる本格的なソプラノ歌唱が光る一品。
ちょいとモダンなシンセの音も端々で感じ取れつつ、クラシカルな雰囲気をまとったシンフォニックサウンドは、Nightwish系列の女性ヴォーカルシンフォ/ゴシック好きの人には確実にアピールできる音ではないかと思います。
どこか日本的とも言えそうな音色(古筝という中国の楽器で演奏されてるらしい)から壮麗に盛り上がるM1「To The Moon And Back」からして彼らの個性がしっかりと主張された佳曲ですが、そこからつながるM2「Ad Astra」は非常にドラマチックなリードギター、美しく力強いサビとコーラスが一度に楽しめるキラーチューン。ここまでのスケールを感じさせる名曲を1stの時点で生み出せるのはスゴイ。
かなりヘヴィなリフが目立ち、部分的にデスヴォイスも聴かせる不穏なM4「Time」、8分以上に及ぶ大作で、中盤にはオシャレなジャズパートも挿入されるもサビは豪華絢爛に弾けるM5「Dark Corners Of Myself」、オープニングから疾走し、サビでテンポダウンしてダークなメロディーを披露するM6「A Restless Mind」、キアラのヴォーカルが存分に真価を発揮するバラードのM9「A Shelter From The Storm」と、彼らのメロディーセンスとシンフォアレンジの良さがしかと活きた楽曲が並びます。
そしてクライマックスのM10「Goddness」はバスドラ連打で疾走する、待ってましたのハイスピードナンバー。こういった曲調においても豪華なコーラスとシンフォアレンジは不変で、ドラマチックさは一切損なわれていないのが素晴らしいです。
ライナーノーツによるとあまり積極的な活動をしているバンドではないようで、初ライヴが今年の6月に行われたばかりらしいですが、なんかもったいないですね。ここまでの完成度をいきなり出してくるバンドであれば、もっとシーンの中心へ切り込んでいけるのではないでしょうか。
何の予備知識も無くCDショップで衝動買いしたのですが文句なしのアタリでした。シンフォニックメタル界の新星としてのインパクトは充分にあると思うので、今後の活発な活動展開に期待したいです。
M2「Ad Astra」 MV
M4「The Butterfly Effect」 Official Lyric Video
違和感がハンパないんで、リリックビデオに無理して本人が出てこなくてもいい気がする(笑)