個人的にはどうもMISS MAY Iと名前がゴッチャになりがちな、フィンランド出身の4人組ヘヴィロック/メタルコアバンド。2016年に酔っ払った勢いで結成されたというかなり若いバンドです。
2017年に自主制作で1stアルバムを発表し、シングルを挟んでからの2ndアルバムとなる本作で国内盤デビューを果たしました。
音楽的にはヘヴィなサウンドをミドル~アップテンポで奏で、デスヴォイスをふんだんに取り入れながらサビはクリーンヴォイスになるモダンヘヴィロック。北欧出身らしく冷たい雰囲気をまとったシンセがかなりの頻度で出てくるのも特徴です。
一応「メタルコア」と呼ぶこともできるっちゃできると思いますが、AS I LAY DYINGやKILLSWITCH ENGAGEのようなメロディックメタルコアの代表格と比べると音の質感はそれほどメタル寄りではなく、SlipknotやRAMMSTEIN辺りにも通じそうなモダンなヘヴィロックに近いかも。M8「Quiet Place」が一番メタルっぽいかな。
北欧メロデスの影響を受けたメロディアスなリードギター、速弾きギターソロといったメタルコアらしい要素はほぼ皆無で、冷徹なシンセと相まってややマシーナリーな印象さえあります。
こう書くとメロディックメタルを好む層からは敬遠されそうな感じですが、彼らの美点としてメランコリックな歌メロがあるのです。
全ての曲においてクリーンヴォーカルによるメロディアスなサビが導入されており、このメロディーがなかなか良い感じに憂愁がこもっています。メロウではあるもののキャッチーではなく、琴線に引っかかりにくい凡百のヘヴィロックのメロディーとは一線を画している。
イントロから続くM2「Pride Goes Before A Fall」、M3「What A Waste」、そしてシングルとして発表されたM10「Hero」はアグレッシヴさとメロディアスさのバランスが良く取れた楽曲で、M4「I See You In Me」は本作中特に哀愁の強いメランコリックスローチューン。ここまでメロディアスにできるのは、さすがは北欧出身といったところですね。
欠点としては先述したようにギターソロが無く、疾走感もかなり控えめ、加えてモダンヘヴィネスのようなグルーヴィな要素も極めて薄いため、アルバム全体の起伏やダイナミックさがほとんど感じられない点でしょうか。幸い全10曲でかなりコンパクトにまとまっているため、聴いてる途中でダレることがないのが救いですが。
また演奏はヘヴィでタイトに固まっているものの正直面白みは無く、思わず耳を引かれるようなプレイや楽器同士の掛け合いみたいなものも無し。良くも悪くも非常に無難なサウンドになっています。
これでもしクリーンによるサビのメロディーのフックが減退したら、途端に楽曲全体の魅力も大きく損なわれてしまいそうなので、何か歌メロ以外のポイントが欲しい所。メロディアス路線はそのままに、今後場数を踏んで新たな魅力を身に着けてさらに化けてくれるのを期待したいです。
M2「Pride Goes Before A Fall」 MV
M7「Cure Is Worse Than Disease」 MV