音楽と人の編集部が主催となって開催された「豊洲ナイトカーニバル」に足を運んできました。
今回で二回目となる開催で、僕が最も敬愛するBRAHMANに、男のオルタナティヴロックをプレイするTHE BACK HORNが参加するとあっては観に行かない訳にはいかないでしょう。
トリに銀杏BOYZがいたのですが、特にゴイステ世代でもなく青春パンクにはあまり惹かれないこともあって、まあBRAHMANとTHE BACK HORNのみが目当てです。峯田ファンのみんなゴメンよ。
以前の休日出勤分の半代休をこの日に割り当て、退勤時にせっせとスーツからBRAHMANのジャケットに着替え豊洲に向かう。スーツと革靴でモッシュピットに加わるわけにはいきませんからね。荷物が多くて大変でしたがこれは我慢。
会場が豊洲ということで以前このブログでも書いたR.O.Starで良い時間まで休憩。ブレンドコーヒーとボリューミーなサンドイッチで腹を満たしていざ豊洲PITへ。
フロア前方の真ん中付近で待機して、まず迎え撃つはTHE BACK HORN。最新作『カルペ・ディエム』をリリースして間もないのですが、まだ僕は聴けていないので、そこからの選曲ばかりになるとノリづらいかもな~と思っていました。
ですがオープニングは「ブラックホールバースデイ」「シンフォニア」「罠」という強力なナンバー3連チャンで一気にボルテージが上がる。特に「シンフォニア」はカラオケで良く歌う曲でもあるので全パート歌ってしまいました。
演奏陣のプレイはアグレッシヴに動きつつも安定しており、キャリアを積んだバンドの強みを発揮していましたが(特に岡峰さんのベース)、山田さんのヴォーカルはいつになく高音が苦しめ。「ブラックホールバースデイ」のサビのラストなんか音源をさらに上回るほどの掠れっぷり。大丈夫か将司!!?
後日明らかになりましたが山田さんは声帯炎を発症していたらしく、その影響が強く出てしまったのだと思われます。そんなコンディションでも、後半からは尻上がりに調子を上げていたのは天晴ですね。とりあえず声が出る状態のうちに観られて良かったです。
「BRAHMANとは久しぶりの対バン、銀杏BOYZは10年ぶりくらいです!」と共演の喜びを語るMCの後は、やや勢いを抑えたトリッキーな楽曲をプレイ。彼らの怪しく混沌とした雰囲気を漂わせるのに一役買う楽曲でしたが、やはり初期の楽曲のようなドロドロしたダークさ、狂気は控えめか。「悪人」はやはりもう少しキャッチーさが欲しいな...
ここで会場のテンションも少し落ち着いた感じでしたが、新作からの「太陽と花」で再びテンポアップしたあと、彼らのライヴにおける代名詞と言える「コバルトブルー」「刃」の二連弾で最高潮の盛り上がりを演出する。目に見えてモッシュの勢いが増し、クラウドサーファーの人数も激増。
彼らのライヴにおいてはこの流れはあまりにも定番化してしまっているため、ぶっちゃけ新鮮味は皆無なのですが、それでもこれほどまでオーディエンスを鼓舞し、ライヴのハイライトたる場面を作り出せるのは強いですね。もちろん僕もこの二曲には胸を熱くして拳を振り上げシンガロングするのですが...
僕のすぐ目の前にいるスキンヘッドの強面お兄さんのモッシュにより振り上げられた左腕が僕のお腹にクリーンヒット!(みぞおちと脇腹の中間くらいの位置)
メチャクチャ痛てえっ!!!!!
十数秒間声が出せずにフラッときてしまったものの、何とか呼吸と体勢を立て直してライヴに集中する。ボディーブローを受けたボクサーってこんな痛みを経験してるのかな...。考えただけで身の毛がよだつ。
まあこの手のライヴで前方付近にいれば多少の被害を受けるリスクを必然的に抱えることになるので恨みっこなしということで。
バクホンが終了した後は個人的メインアクトのBRAHMANの登場。そのままフロア前方に待機し地獄のモッシュに備える。
SEと共に静かに入場し、最初にプレイする楽曲は「A WHITE DEEP MOURNING」。BRAHMANらしい叙情性が静と動で見事に彩られた名曲で、TOSHI-LOWさんの痙攣したかのような独特のパフォーマンスでオーディエンスを扇動する。
そして「初期衝動」の緊迫感溢れるイントロに合わせてバックドロップがせり上がり、怒涛の疾走を見せたら最後、フロアは狂乱の坩堝と化す!そのド真ん中で僕も声を張り上げバンドのパフォーマンスに応える!
人間椅子の和嶋さんよろしく、背面弾きでギターソロを披露するKOHKIさんに、野太い咆哮でハードコアの感触を一層強めるMAKOTOさん、怒涛の勢いを乱れぬタイトなプレイで支えるRONZIさんのプレイを一身に浴びながらTOSHI-LOWさんの叫びに胸を熱くするのがたまらないんだなあ...
ただこの日はどうも音響がよろしくないのか、バンドサウンドにヴォーカルが埋もれがちでイマイチ歌が聴こえず、せっかくの熱い叫びを堪能しにくかったのがちょいと残念。まあこれほどのモッシュにまみれていたら音響面の多少の不満なんざどうでもよくなってしまうのですけどね。
そんな中彼らの静かで美しい側面を演出する楽曲として、おそらくかなりレアな選曲と思われる「FROM MY WINDOW」が飛び出す。僕の後方から「懐かしい」という声が聞こえてきました。
個人的には叙情性を押し出す曲であれば「空谷の跫音」とか「FAR FROM...」とかの方が好きなのですが、なかなか聴けない曲を間近で味わえた喜びを十二分に噛みしめる。
その後の「LOSE ALL」でTOSHI-LOWさんがマイクスタンドを抱えたままフロアに飛び込み、お馴染みの「警醒」「鼎の問」と続くのですが、あまりに勢いよく飛び込みすぎたのか、クラウドサーファーの殺到しすぎたのか、マイクが完全に故障してしまったようで(ギターの音も全然聴こえなくなった)、業を煮やしたTOSHI-LOWさんが背後のステージめがけてマイクをぶん投げて歌唱を放棄、その結果なんとなく「警醒」っぽく聴こえるインストと共にオーディエンスが暴れまわってるという珍事に。
またもみくちゃにされたせいでTOSHI-LOWさんの右手小指から流血。そのままなんの手当もしないでオーディエンスを踏みつけながら腕をぶん回しているものだから、すこし手を伸ばせば届きそうな位置にいた僕としては「目や傷口に血が入ったら感染症的な何かが...」といらん心配をしてしまった(笑)
「武道館アーティストが三組そろって豊洲PITがソールドしてない」「銀杏BOYZとTHE BACK HORNは田舎モンだから嫌い」というMCでひと笑いさらったあと、20年以上のキャリアを積み未だに音楽をあきらめていないバンド、そしてそんなバンドをずっと取り上げ続ける音楽と人という雑誌に感謝とリスペクトを述べ「満月の夕」へ。
ここでステージ上に三線を抱えたORANGE RANGEのYOHさんを呼び込み、ヴォーカルパートに入るころにはTHE BACK HORNの山田さんと銀杏BOYZの峯田さんが登場。トリでもないのにクライマックス感あふれる演出で、楽曲の魅力と合わせて感動を噛みしめる。東日本大震災を機に軋みが生まれたらしいTOSHI-LOWさんと峯田さんが、歌が終わるころに抱き合っているところを見られたのも何だか感慨深いですね。
そんな感動的なステージを堪能し満足感で胸がいっぱいの状態で「さあ、気持ちを切り替えて次のライヴも観るぞ~」なんて心境になれるはずもなく(笑)、次の日も仕事が入っているのもあり、ライヴはここで切り上げ。峯田さんの弾き語り歌唱を耳にしながら会場を後にしました。
僕個人としてはBRAHMANとTHE BACK HORNの対バンライヴみたいな感じで、ボリュームは若干物足りなかったもののライヴ内容自体はどちらも充実していていました(BRAHMANは今年のライヴでもトップクラスの感動でした)
こういう男の哀愁、世界観を携えたバンドのライヴを汗だくになって観ることこそロックのライヴの神髄の一つです。次はフルボリュームで観たいぞ!