ディスクユニオンのHR/HM専門アカウント、およびメタル専門の店舗アカウントにてやたら大プッシュを受けていたアルバム。「今年No.1のメロデスアルバム!」とされていたので、その文句に触発されてバンドの存在を一切知らなかった状態で購入しました。
彼らCrepuscleは2006年にDraconian Winterという名前でブラックメタルバンドとして結成され、2011年に現在のバンド名に改名。本作は改名後の2作目のフルアルバムなのだそう。
音楽的には超王道路線のシンフォニックデスメタル。ヘヴィさをあまり感じさせない音質に美麗なシンフォニックサウンドやピアノを積極的に絡ませ、メロデスライクなリードやリフと共に豪勢に盛り上げていく。日本のSerenity In Murder辺りに近いような感じでしょうか。
特筆すべきはそのメロディーの充実っぷり。彼らならではの個性や強みといった要素はほぼ無いのですが、とにかくどの楽曲にもギターとシンセによる叙情性満載の美旋律が絡んできており、低音主体の重苦しいデスヴォイスと合わせて、「美と醜の融合」を完璧に演出している。
哀しみを存分に湛えたギターがソロでもリフでも唸り続け、バックでは儚くも美しいシンフォサウンドが舞いまくる。この辺は元々ブラックメタルをプレイしていたというキャリアによるものか、他のメロディックデスメタルバンドと比べると圧倒的に寒々しく冷たい叙情性が色濃い。まさにジャケットから想起されるような音世界が全曲に渡って展開されます。
「Kalmahにシンフォニックサウンドを大幅に増量して、そこにブラックメタルのような音作りと曲展開を盛り込んだ」と言えるような作風であり、北欧由来の土着的な哀愁、シンフォブラックの豪華絢爛なサウンド、メロデスの旨味を取り入れたギター、といった要素に惹かれる人にはかなり魅力的に響くのでは。
個人的には非常にキャッチーかつ力強いギターワークと、北欧メロスピにも通じるチェンバロ風のキラキラしたシンセ、サビ裏で怒涛の勢いで繰り出されるシンフォニックなアレンジが魅力のM4「Severed」が一番気に入りましたが、他のどの曲においても根幹は一切ブレずに粒ぞろい。「本作一のキラーチューンは?」という問いには人によって回答が結構分かれるかも。
前述のSerenity In Murderと比べるとやや日本人好みの「泣き」は控えめに感じるし、どの曲もほぼ同じ方向性を向いておりバラエティには富んでいない、ヘヴィさは控えめのため他のデスメタルバンドと比べると音の破壊力はないといったマイナス要素もあるにはありますが(ヘヴィさが控えめなのはこのスタイルにおいてはあまりマイナスには働かないかもですが)、それらを帳消しにしてしまえるほどの悲壮美を貫くメロディーとアレンジが何とも素敵。これは確かにディスクユニオンが激プッシュしたくなるのも頷ける強力盤ですね!
あとちょっと信じられなかったのですが、てっきり北欧出身だと思っていたこのバンド、なんとアメリカはカリフォルニア出身なんだとか。どういう経緯でこの音楽性にたどり着いたのか聞きたい。
M4「Severed」 Official Audio
本作の楽曲のMVが見つからないのですがプロモーションする気があるのか...。せっかく中身は充実してるのに...