キーボード兼フルート奏者を有した5人組シンフォニックメタルバンドのデビュー作。メンバー各々以前から音楽活動をしてきたようですが、バンド自体は今年の10月から始動したらしく非常に若い(平均年齢も20代半ばらしい。僕と同世代か)
僕のTwitterアカウントはあんまりフォローしている人が多くないのもあって、フォロワーも同様に少ないのですが、そんなアカウントでも稀にメタル系ミュージシャンからフォローが来ることがあります(フォロー返しすることはあまり多くないのですが)。ここに紹介するChaos O Sanctuaryの公式アカウントも少し前にフォローしてくれており、そこで初めてこのバンドの存在を知りました。
そのアカウント上で公開されていたトレーラー映像で流れている楽曲が、なかなかに豪華絢爛かつメロディックな高品質シンフォであり、これも何かの縁と本作を購入してみました。
シンフォニックメタルを標榜しているだけあり、やはり基本的な曲作りの骨格はRhapsody Of Fireのフォロワーと言えるものですが(シンフォニックメタルバンドはみんなRhapsodyのDNAを受け継いでいると言っても過言ではないと思う)、クサクサな旋律をかき鳴らすリードギターや、ギターとキーボードによる速弾きソロの絡みなどからGALNERYUSの影響もかなり強いのではないかと感じました。ヴォーカルはハイトーン型ではなく低~中音域で滑らかに歌い上げるタイプ。
驚いたのは若手バンドの初音源とは思えないほどオーケストラサウンドと演奏のクオリティーが高いこと。アルバム全編を通して優雅なストリングスの音色が舞い踊りつつ、決してシンフォ過多にならないメタルとしてのテクニカルな演奏が充実しており、少なくともサウンド面において物足りなさは感じません。
インストのM1「Heaven's Gate」を除けば歌入りの曲は4曲のみですが、王道の疾走シンフォニックメタルナンバーを哀愁寄り、ポップ寄りの2曲用意し、さらに悲壮感と重厚さを押し出した曲、最もRhapsody Of Fireっぽさの強い、勇壮でシリアスな曲をそれぞれ取りそろえていて、一枚通して聴いたときのバランスも優れている。バラエティを持たせつつこのバンドの何たるかが非常にわかりやすく、名刺代わりの一枚としては最適な造りだと思います。
そして何といっても代表曲になり得るであろうキラーチューンを持っているのが強いですね!M3「Song for Salvation」こそがそれで、「シンフォニック化したAZRAEL」とも呼べるような、明朗な飛翔系メロスピに通じる歌メロと豪華なオーケストラによる爆発力あるサビがとっても魅力的。
この曲以外はポップさを抑えた哀愁寄りの楽曲でそれらも優れた出来ではありますが、(あくまでM3と比べると)歌メロのフックは少し控えめか。こういったタイプの曲でさらにクサさが増せばより一層高みに登れるのではないでしょうか。スケール感は今の段階でバッチリですし。
今の日本のメタルシーンはエクストリームメタルが非常に強く、メロディックメタル勢はGALNERYUSや陰陽座といったすでに一定以上の人気を集めたバンド以外あまり活躍できていない印象があります。
そんなシーンに風穴を開けることのできるポテンシャルを秘めた新進気鋭のバンドですね。デビュー作で求められるクオリティーはやすやすと超えてくれただけに、フルアルバムにも期待がかかります。
M3「Song for Salvation」 Official Audio
M5「Betrayal of Flames」 Official Audio