前作『PHOENIX RISING』からわずか一年、さらにその間に純粋な新曲ばかりではないとはいえ、EP『絆 FIST OF THE BLUE SKY』のリリースも挟んだうえでの2012年発表のフルアルバム。
メジャーレーベルのアーティストっていうと、新作を一枚出したあとそれに伴う全国ツアーや営業活動を行って、ひとしきり落ち着いたあと、数年かけてシングルを何枚かリリースし、そこからまたアルバムを出す...ってな感じのサイクルが多いと思うのですが、彼らはこんなにも早くアルバムを完成させられるというのがまず驚き。そしてさらにその内容が素晴らしい出来なのだからまた驚き。
本作は小野さん加入後のアルバムの中でも『RESURRECTION』と並んで傑作の呼び声高き一枚で、全体的に彼らの陽サイドが強調された作風と言えます。前2作と比べると飛翔メロスピのような解放感、ポップで爽やかな印象が色濃い。
もちろんノーテンキで楽しいとか、底抜けに明るくなっているということはなく、YUHKIさんのキーボードやシンフォニックサウンドの影響により、従来よりひと際クラシカルで格式高いアレンジになっているのがポイント。これにより一層劇的さを増した仕上がりになっています。
もちろんGALENRYUSらしい超絶技巧もバッチリだし、ギターリフも単調にならずメタルらしい攻撃性は必要充分なものを見せる。今までの作品ですでにパーフェクトと言えるレベルに達していた技巧、構成力がここにきてさらに一皮むけた感があります。
そしてやはり最大の美点はメロディーの良さ！どの曲にもポップでありながら哀愁、クサさもにじませたフック満載のメロディーで埋め尽くされている。この見事なメロディーを天まで届きそうなクリアなハイトーンで彩るのだから、この解放感はハンパではありません。
アルバムのオープニングを飾るに相応しい劇的さを誇るサビと、りりしいコーラスがあまりにも素晴らしいM2「THE PROMISED FLAG」で完全に心を奪われる。その後の名曲・佳曲の連打にも休む暇はない。
必ずしもメロスピ一辺倒という内容ではなくハードロック寄りのアップテンポナンバーや、歌に比重を置いた曲、よりシンフォニックメタルの側面を増強した曲など、結構曲調は幅広いのですが、一貫しているのは荘厳でドラマチックなメロディーと大仰でテクニカルなバンドサウンド。
...とまあ、この時点で充分名盤認定して言い作品ではありますが、やはり本作を語る上ではタイトルトラックであるM９「ANGEL OF SALVATION」。この曲は絶対に外せない。
14分以上に及ぶ超大作で、小野さんの歌唱力を活かした歌を聴かせるパートから、鼓膜をつんざく超絶ハイトーン、テクニックとメロディアスさを完璧に両立したインストパートの充実度、最後の大団円を演出するクワイア、それらすべての要素が高度な次元で交錯した大名曲。
この曲を出したことで、GALNERYUSというバンドがネクストレベルに到達したのは間違いないのではないでしょうか。これだけ長い演奏時間で、歌の無いパートもメッチャ長いのに一切のダレを生まない構成の妙は生半可なバンドには決して出せませんから。
かなりポップになったことで、YAMA-Bさんが力強く歌う土臭いパワーメタルが好きだった人の評価は割れるかもしれませんが、メロディーと演奏のクオリティーが恐ろしく高水準にまとまり、頭一つ抜きんでたキラーチューンも保有した大名盤であることに違いはありません。ドラマチック・ジャパニーズ・メタルの神髄、ここに極まれり。
M6「HUNTING FOR YOUR DREAM」 MV
M9「ANGEL OF SALVATION」 MV
MVはショートバージョンなので、まだフルで聴いてない人は今すぐ聴くように。J-METAL史に残る大名曲。
