ひとりごと ~Music & Life-Style~

HR/HMを中心としたCD感想、足を運んだライヴの感想をメインにひとりごとをブツブツつぶやくブログです。

GALNERYUS 『VETELGYUS』 (2014)

GALNERYUS 『VETELGYUS』

かつてYAMA-Bさんがヴォーカルを務めていた頃の楽曲を現在の編成でリレコーディングしたベストアルバムを二枚リリースし、それに伴うヨーロッパツアーを敢行した勢いのまま発表された9thアルバム。

 

小野さん加入以降の楽曲は、高音域でもクリアに聴かせるヴォーカルを活かしたキャッチーな歌メロが目立つものが中心ですが、本作はさらにその路線を突き詰めた内容になっています。

 

有り体に言えば過去一歌謡メタル要素が強い。前作『Angel of Salvation』も歌は非常にポップではありましたが、あちらはクラシカルとも言えるような気品のあるもの。翻って本作は俗っぽい...と言うと語弊がありますが、ポップスにも通じる親しみやすさを感じさせるのです。

 

その際たる例がM9「SECRET LOVE」。演奏よりも遥かにヴォーカル偏重、さらに非常にモダンな音作りで、どことなく90年代J-POPすら想起させる。

 

その他の曲も全体的にポップス路線の歌メロが中心で、小野さんの歌声にハマるとはいえ、前作の格式高いシンフォニック路線を求めている人にとっては賛否分かれやすいアルバムかもしれません。個人的にも前作のような圧倒的な凄みは感じられないというのが正直なところです。

 

しかしいくらポップな方向に行こうとも、そこはさすがにGALNERYUS。メロディーセンスにアレンジ力、演奏技術に至るまで極めて高水準なバンドだけに、従来のメロディックパワーメタルとしての軸は決してブレていない。歌メロ重視の方向性につられるように、ギターソロもかなりメロディアスな方向に舵を切っているのも聴きどころです。

 

大仰なインストのM1『REDSTAR RISING』から続くM2『ENDLESS STORY』は、パワフルなドラムと派手なキーボードが舞いながら疾走し、明朗なクサメロを堂々と歌い上げる本作屈指のスピードチューン。ギターソロが泣きまくりの弾きまくりでメチャクチャにカッコいい。

 

リードトラックのM3「THERE'S NO ESCAPE」は、ちょいとデジタル風味なキーボードがメインを張るリズム重視のアップテンポナンバー。新境地とも言える楽曲ですが、ここでもキャッチーな歌メロは冴え渡る。出だしが強力なのでツカミはかなり良いですね。

 

本作の中では従来の勇壮なメロディックメタルに最も近く、ドラマチックなサビとコーラスが印象的なM5「ENEMY TO INJUSTICE」、8分以上もの間にメロディックでテクニカルな演奏の妙が味わえ、途中にはフォークメタルにも通じるキーボードが乱舞するM7「VETELGYUS」、シリアスなメロディーに様式美系のキーボードを添えた重厚感あるM10「THE GUIDE」など、各楽曲の個性と聴きごたえは高レベルでまとまっている。

 

ちょっと歌謡曲に寄りすぎ、モダンでポップな方向性に振り切れすぎな面は否定できないものの、自身の強みを殺さず、かつ一定の枠に収まらない多様性を持ったバンドであることを示す良作であると思います。70分くらいあるボリュームでも、それほど長さを感じさせずに聴かせるところも含めて評価したい一枚です。

 

M3「THERE'S NO ESCAPE」 MV

彼らにしてはちょっと変わり種かもしれませんか、不思議と琴線にひっかかるフックが美味しい一曲。