- バラエティに富んだ曲調豊かなアルバム
- 一撃必殺の疾走キラーにハズレ無し
- 全体的にもうちょい泣き成分増量でも良かったよ
ギターの泣きにかけては国内最高峰である屍忌蛇さん率いる、劇泣きエクストリームメタルバンドの最新作。
ここ数作は非常にリリースペースが速く、クオリティーも目立って低下することはないクリエイティヴな面を見せてきた彼ら。名盤1st『violent』の再発を挟んでの今作も、従来の路線とほぼ変わらない、メロディアスな慟哭ギターを主軸としたエモーショナル・メタルに仕上がっています。
show-hitorigoto.hatenablog.com
ただ前作はハードコア寄りのアグレシッヴさの比重が高かったのに対し、今作はバラエティに富んでいる。らしさ全開の疾走感あふれるスピードメタルから、歌謡的な泣きメロが非常に強いスロー曲、ノリの良いロックンロール風味の曲、かなりシンプルにまとまったミドル曲など。
こういった内容でも散漫さは感じさせず、一回聴いただけでVOLCANOらしい楽曲ばかりだと思えるのは、やはりNOVさんのヒリヒリした緊張感ある鋭い叫び、屍忌蛇節満載のリードギターが泣きに泣いているからこそ。
ただ、やはり去年に名盤1st『violent』が再発され、それをガッツリ聴き込んでしまった後だからなのか、どうしてもそちらと比較して泣きの強烈さが控えめに感じられてしまうのは否めないところ。もちろんそこいらのバンドよりも遥かに強烈な泣きメロを奏でているし、リフも攻撃的で充分以上にカッコいいんですけど、「VOLCANO」で聴けたような神がかったギターソロは無いかな...。
また中盤に勢いを抑えた楽曲が頻出し、アルバムの起伏は生み出せているのですが、キレの有る疾走曲と比べるとインパクトは薄め。M3「I Decide Who I Am」のように悲しみの旋律を振り絞る泣きっぷりが他のミドル曲にも欲しかったですね。
ただ頭とケツをそれぞれ彩るM2「Salvage Sun」、M10「Raise Your Fist」は荒々しい突進力と、胸を締め付ける哀愁バリバリのリードが絡む見事なキラーチューン。特に後者のギターソロは文句なしのドラマチックさ!これだ!これこそが屍忌蛇というギタリストに求める極上のメロディーなのですよ!!
ギター以外だと、荒々しく攻撃的なNOVさんのヴォーカルが過去作とくらべてグッと表現力豊かになっているのがポイント。改めて「この人こんな風に柔らかく歌うこともできるんだ」と感じましたね。意外にも(と言うと失礼かもですが)キレイなハイトーンシャウトを聴かせてくれる瞬間もあり、攻撃性と多彩さを両立できていることがよくわかります。
1stのような衝撃は無かったですが、相変わらずギターの魅力は冴え渡っており、従来作を気に入っている人は今作も外されることはないでしょう。贅沢を承知で言えば「もっともっと激しく悲しく泣いてくれ!」と思う箇所も多いのですが、まあそれは屍忌蛇さんに期待しているレベルの高さの表れというモンです。
個人的に本作は
"ちょっとテンションが落ち着く時もあるけど、ギターの魅力はしっかり据え置き。疾走チューンは文句なし"
という感じです。
本作のトレーラー
このバンドって泣きのメロディーを愛するメタルヘッズなら全員聴くべきバンドだと思うんですけど、MVは全然無いし、このトレーラーだって4月11日現在1万回再生もいってない...
このバンドの注目されてなさは一体何なのだろう...