- スラッシュ界の重鎮としての貫禄に満ちた作品
- アルバム全体のスピードは控えめ
- キラーチューンの殺傷能力バツグン!
ベイエリア・クランチという枠組みを超え、もはや完全にスラッシュメタルというジャンルの代表格になって久しいTESTAMENTの最新作。SLAYERのフェアウェルツアーへの帯同により若干制作に遅れが生じたようで、前作『Brotherhood Of The Snakes』より3年半ほど期間が空きました。
ここ数作、スラッシュメタルの代表に恥じぬ良作を連発していた彼らだけに、本作のクオリティーの高さも文句なし。チャック・ビリーの粗野なヴォーカルにヘヴィで荒々しいギターリフが乱舞するスラッシュメタル路線を踏襲している。
スラッシュ特有のザクザクした鋭利なリフはもちろん聴けるのですが、彼らはそこにしっかりと「ヘヴィ」の要素を導入しているのが頼もしいところ。音の薄さなど一切存在せず、まるでブットい鉈を上から力任せに叩きつけるかのようなヘヴィ・スラッシュリフ。たまらなく気分を高揚させてくれる。
前のめりな勢いに満ちたM1「Children Of The Next Level」、M2「WWIII」で早速轟音疾走リフをかましたあと、ノリの良いリフでモッシュ、ヘッドバンギングを誘発させるキャッチーなM3「Dream Deceiver」と繋ぐ序盤のツカミが非常に良い。
その後聴き進んでいくと、ツービートで一心不乱に爆走するパートはあまり出てこない。でもヘヴィで小気味よいリフには終始唸っているし、サウンドから感じる気迫、勢いは充分。ヘッドバンギングに何の支障もありません。
そしてアルバムのクライマックスに、本作最高の疾走感と邪悪さを併せ持つキラーチューンM11「Curse Of Osiris」を持ってくるのがニクいですね!ブラックメタルかというようなシャウトとブラストビートが交錯し、高速のドラムの連打であっという間に聴き手のテンションを臨界点まで持っていく。最後にこんなのヤラれちゃひとたまりもありませんよ、ええ。
ただ僕としては、彼らの曲で一番好きな「Apocalyptic City」で聴けるような、メロディアスな泣きのギターが織り込まれている方が好きなのですが、本作にそういった要素は皆無。これはもうバンドが目指す音はそういうものではないということなんでしょうね...。ちょいと残念。
でも純然たるスラッシュファンの人は「メロディック?いらねえな!ザクザクのリフで疾走だろうが!」な考えなのかもしれず、そうであれば今のTESTAMENTの音はかなり理想的なスラッシュメタルの形なのかも(本作は疾走感はやや微妙かもですが)
現在一番カッコいいスラッシュメタルバンドといえば、僕はKREATORの名前を挙げますが、あちらがちょっとメロデスっぽすぎると感じるスラッシュファンなら、SLAYERが第一線を離脱した今、TESTAMENTこそ世界最高峰のスラッシュメタルバンドになるのかな。
個人的に本作は
"スピード一辺倒ではないが、スラッシュメタルらしい轟音リフ炸裂のアグレッシヴさに満ちている。頭振ってモッシュしたい荒くれ者の味方!"
という感じです。
M1「Children Of The Next Level」 Official Audio
M4「Night Of The Witch」 Lyric Video