AVENGED SEVENFOLDはだいぶ特殊なバンドだと思います。
B級臭さを残したメタルコアバンドとしてアルバムを発表し、メジャーデビューとなった出世作『City Of Evil』において、メロディックメタルの要素を大胆にブレンドするという荒業を披露し音楽性を大きく変更。そして今回の感想記事にて取り上げる『Avenged Sevenfold』で音楽的な色味が一気に増し、唯一無二のモダン・メロディックメタルを提示。ドラマーのザ・レヴが亡くなってからは、ややダークでシリアス、かつシンプルなHR/HMへと切り替わり、最新作の『The Stage』ではシリアスなムードは不変ながら、スピード感とメロディックメタルのダイナミズムが再び目立つ...
時代のトレンドに押し流されて音楽的に迷走するバンドはたくさんいますが、ファンの支持をしっかりと確保し、バンドらしさの軸を大きくブレさせない範囲において、こうもアルバムごとにカラーを変えるバンドというのはなかなかいないのではないでしょうか。
彼らのようにスタンスを頻繁に変えながらヒットを維持していられるバンドって、METALLICAあたりの大物を除けば、少なくとも僕ではパッと思いつかないです。大抵路線変更して、コケて、元の状態におさまるってな塩梅のバンドばかりだし。基本的にメタルって「変化すること」があまり肯定的に思われないジャンルですしね。
とまあそんな希有なメタルバンド・AVENGED SEVENFOLDですが、今回取り上げるのは前述したように、出世作となった3rdからさらに音楽的なバリエーションが増えたセルフタイトルの4thアルバム。
本作は彼らの音楽性の一つの到達点とも言える作品であり、個人的にはAVENGED SEVENFOLDというバンドの最高傑作だと思っています。
3rdアルバムにて劇的なツインリードやメロスピに通じる疾走パート、メロディアスな歌メロを大幅増量した彼ら。本作はそんなメロディアスな要素はそのままに、アメリカのバンドらしいモダンメタルのヘヴィリフ、ピアノやストリングス、果ては女性や子供のコーラスまで取り入れて、ドラマチックさに一層磨きをかけることに。
特筆すべきはその多彩さで、チャーチオルガンからの劇的極まるリードギターで壮大さを演出するM1「Critical Acclaim」、ヘヴィリフと粘着質のベースでニューメタルっぽさを出しつつ、メランコリックなピアノとコーラスを活かしたサビも飛び出すM2「Almost Easy」、ツインリードと優雅なピアノ、速弾きギターを織り交ぜ、さらにシメには不気味な子供コーラスまで加えたメロスピナンバーM6「Unbound (The Wild Ride)」、カントリー風味のアコギが心地よく、メロディーも非常に美しいM10「Dear God」など、多岐にわたる音楽的要素を導入し、破綻なく自分たちのスタイルにまとめあげている。
さらに驚くべきはM9「A Little Piece Of Heaven」。クラシカルとも、ゴシックとも言えそうなメロディーをコーラスやホーンを交えて表現した、8分にも及ぶ大作シアトリカルナンバー。とてもアメリカのメタルコア畑から出てきたバンドが作り出した音とは思えない楽曲。
そして本作を象徴する名曲がM4「Afterlife」でしょう。メランコリックなストリングスからツインリードで疾走し、モダンヘヴィリフとM・シャドウズによるキャッチーな歌メロに導かれながら、開放感あふれるメロウなサビへと到達。見事な疾走ツインギターソロで最高潮に盛り上がったあと、トドメのサビへと切り込む様はいつ聴いても痺れてしまいます。
全10曲というコンパクトさも功を奏して、決して中だるみすることなく聴き通せる点も含めて、彼らの作品の中では一番好きですね。アメリカンメタルとヨーロピアンメタルの融合ぶりは本作が最高峰だと確信しています。
個人的に本作は
"前作で確立させたメロディックメタルバンドとしてのスタイルを、さらに豊かな音楽性でもって突き詰め、一皮むけた彼らの最高傑作"
という感じです。
M4「Afterlife」 MV
M9「A Little Piece Of Heaven」 MV