- 徹底的に楽しく下品で愉快で痛快
- フォーキッシュなメロディーセンスも垣間見える
- 明確なハイライトとなる大作キラー在り
去年のEvoken Festにて最高に愉快で楽しいライヴを見せてくれた、GLORYHAMMERのクリストファー・ボウズ率いるパイレーツ・メタルバンドの最新作。
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一応フォークメタル/ヴァイキングメタルとして語られるバンドだとは思いますが、あまりクサクサなメロディーをかき鳴らしたり、勇壮な男の世界観を表現したりはせず(無いわけではないが)、かなりコミカルで楽しい雰囲気に振り切ったようなアルバムになっています。
まあライヴパフォーマンスを観た限り明らかに雄々しさを武器とするタイプのバンドではありませんでしたしね。あの時に受けた印象とほぼ同じ空気を本作の音からもヒシヒシと感じます。
個人的にはもっとクサメロを奏でるスタイル、もしくはAMON AMARTHのように拳を握りしめ振り上げたくなるようなスタイルが好みであり、彼らの楽曲が必ずしも刺さるかと言われればそうでもない。
しかし何でしょうね。この聴いたときの満足感は。そういう音楽の好み云々を超越した楽しさ・愉快さが支配的で、自然と気分が高揚してしまいます。酒瓶片手にフラフラした足取りで肩を組みながら踊りたくなってしまうよう(まあ酒ほとんど飲まないけど)
M1「Treasure Chest Party Quest」やM3「Chomp Chomp」は彼らのお祭り騒ぎ感が音に濃縮されており、曲のタイトルを叫ぶシンガロングパートが熱い!ライヴでの盛り上がりが容易に思い浮かびます。
ラップ調のパートが織り交ぜられるも一切パリピの臭いを感じさせない(笑)M4「Tortuga」、全体的にコミカルさが全面的に押し出されたネタ臭満載のM7「Pirate's Scorn」といった楽曲は普通のフォークメタルバンドには出せない彼らの個性。ふざけつつも曲の完成度の高さはしっかりと担保されているのが頼もしいです。
しかしそんな変わり種を見せつつも、M6「Call Of The Waves」のような、フォーク/ヴァイキングメタルバンドとしての強みが活きたメロディーが疾走するキラーチューンをしっかりと収録しているのがニクいですね。
そしてアルバムのハイライトとなるのが8分にも及ぶ大作M10「Wooden Leg Part 2 (The Woodening)」。ブラックメタルかと思うようなブラストビートで幕を開け、デジタル風味のサウンドや攻撃力の高いシャウトの交錯を経て、合唱必至の雄大なサビへと突入していく。テレビゲームのBGMのような機械的な間奏とポップなシンセを乗り越えると、なんとラスボスの語りのような日本語パートが聴ける!どうやら腕に棲まう悪霊の言葉らしいのですが、「ストロングゼロを108缶買ってきたから全部飲み干してやる」という内容はホントにどうしようもないですね(笑) そしてラストの"Wooden head, wooden head wooden head!!!"の高速モッシュパートではオーディエンスの大暴れする様が目に浮かびます。
とにかく楽しさ極まる曲展開、ネタに走っていてもしっかりと保たれた高いクオリティーは、ただのネタバンドには陥らないことを証明していますね。愛すべきおバカな海賊たちの宴にとことん入れ込める作品。とりあえずお酒が飲める人はストロングゼロ片手に聴いてみましょう。
個人的に本作は
"愉快さとおフザけを織り交ぜつつ、フォークメタルとしての矜持も無くさない酒飲みヘヴィメタル"
という感じです。
ALESTORM - Treasure Chest Party Quest (Official Video) | Napalm Records
ALESTORM - Pirate Metal Drinking Crew (Official Video) | Napalm Records