- 30分に満たない激烈轟音
- ヘヴィさ重視ではない昔ながらのデスメタルらしい音作り
- クドすぎなくて割と聴きやすいかも?
30分に満たない収録時間で、疾走に次ぐ疾走を繰り出すエクストリームメタルの名盤と言えば?
......はい、そうですね。SLAYERの『Reign In Blood』です。MEGADETH『Peace Sells...But Who's Buying?』、METALLICA『Master Of Puppets』といった名盤と共に、1986年をスラッシュメタル最高の年とした、今なお鮮烈なインパクトを放つエクストリームメタル界きっての大名盤です。
メロディアスなメタルが好きな身としては、『Reign In Blood』は必ずしも好きな作品というわけではないのですが、短い時間で一気に駆け抜ける邪悪な疾走による快感は筆舌に尽くしがたい。またあまりに長い作品は好まないため、アルバムの短さは結構ありがたかったりします。
そしてこのVADERの最新作『Solitude In Madness』も、そんなSLAYERの激烈名作に匹敵するかのような快感を味わえる一品。
メロディックデスメタルはともかく、純粋なデスメタルに関してはあまり手が伸びない僕。正直このバンドについても「好みの音ではないはずだよなあ」と特に聴きもしないでスルーしていました。
しかしタワーレコードで陳列されているのをたまたま見かけた際、「アルバム全体通して29分」「速い曲ばかり」という宣伝文句を見て、「なんかSLAYERみたいだな。速くて短いなら自分でも聴けるかも」と、試聴もせずに購入。
そして聴いてみて「こりゃあ確かに快作だな!」と思いましたね。『Reign In Blood』ほど全曲全パート爆走しまくりというわけではありませんが、それでもこの忙しない高速ドラムの突進力はすさまじい。特に速いパートのバスドラなんか機関銃のようなブッ飛びっぷり!
デスメタルとしてはあまりズンズンとした低音は強調しておらず、シャープな高音ギターリフが目立ち、音質もさほど良くはない。デスコアなどの近代エクストリームメタルと比べて、オールドスクールなデスメタルらしい音といえば良いのか。ちょっと語弊があるかもしれませんが、音の熾烈さは充分なれど密度はさほどでもなく、割と耳に優しい音作りと言えるかも。
それでいて要所にメロディアスというほどでもないけど、リードギターによるソロが組み込まれているため、実は結構リスナーの事を考えて作ってくれているのかな~と思ってしまったり。純デスメタルに慣れてない僕でも聴きやすい、そしてカッコいいサウンドを展開しています。
まあ正直似たり寄ったりに聴こえないこともなく、ここまで暴力的に突っ走られれば、どれか一曲抜き出してオススメしたり、気に入った曲を選んであーだこーだコメントしたりといった行為は無意味でしょう。アルバムを爆音で通して聴いて、その破壊力と暴虐さに陶酔するのが良い聴き方なんだと思います(ホンマモンのデスメタラーであれば各曲の個性を明確に聴き分けたりするのかもしれません)
デスメタルとしては結構聴きやすい部類なんじゃないかなと思うので、ここ最近自由に行動できない日々で悶々としている人は、本作をリピートしてストレスをブッ壊してしまうのが吉です。
個人的に本作は
"純然たるデスメタルの攻撃性・暴力性をそのまま鼓膜にブチ込む、速く、激しく、そして短い激音集"
という感じです。
VADER - Shock And Awe (OFFICIAL LYRIC VIDEO)