- 汲めども尽きぬグッドメロディーの宝庫
- ヴォーカル全員超実力派(マグナス含む)
- マグナス・カールソンの才能は底無しなんだね
ドイツの正統派ヘヴィメタルバンドPrimal Fearにレコーデイングメンバーとして在籍しつつ、数々のメタル・プロジェクトにギタリストとして参加したり、楽曲提供やプロデュースをするなど、曲作りにおいてのスーパー働き者であるマグナス・カールソン。
そんな彼が(たぶん)メインプロジェクトにしているであろうMAGNUS KARLSSON's FREE FALLの3rdフルアルバム。
本プロジェクトのアルバムとしては5年ぶりとやや期間が開きましたが、これまで散々曲作りをしてきたであろう彼にとっては、久々の作品リリースという感覚は露ほどもないでしょうね。
本作もまたドラム以外の楽器は基本的にマグナス本人がすべて演奏し、そのドラムはアンダース・ケラーフォースなる人物。そして曲ごとに用意されたヴォーカルには、トニー・マーティン、ノーラ・ロウヒモ、ロニー・ロメロといった僕でもよく知る人物から、恥ずかしながら自分の勉強不足により「誰だこの人...？」となってしまう人まで。M3「We Are The Night」、M10「Don't Walk Away」、M14「All The Way To The Stars (Acoustic Version)」の3曲においては、マグナス自身がヴォーカルを担当しています。
どのヴォーカリストも実力はまったく申し分なく、誰もが自身の個性を活かした見事なヴォーカルパフォーマンスを披露してくれており、不満に思う瞬間は一切ない。
そしてマグナスのヴォーカルが「ゲストヴォーカルいらんだろ」とツッコミたくなってしまうほど良いんですよ。ギタリストではなくヴォーカリストとしても十分やっていけるであろう、ウェットな艶に満ちた歌声は、メロディアスな楽曲にバッチリとマッチしています。
しかしなんと言っても本作の美点は楽曲そのものの充実ぶり。当たり前のことを言うようですが、良い演奏で良いメロディーを奏で、そこに良いヴォーカルが入ってくるのだから、悪くなりようがないんですよ。
ややヘヴィさを持ちながら決してモダンにはならないギターリフに、速弾きやメロディアスなリードを取り入れ、アップテンポに展開していくメロディックメタルを主軸に、ときにヴォーカルの実力の高さを活かしたバラード、楽器の織りなす様を楽しむインストを入れた構成はアルバムの出来としてはほぼ完璧。単一のメロディックメタル作品としての質の高さはさすがとしか言えません。
ディノ・ジェルシックによる魂の熱唱がサビを熱く彩り、テクとメロディーが共存したギターソロも冴え渡るM1「Hold Your Fire」から早速強烈な出だし。
ノーラによる女性ならではの柔らかい歌唱と、メタリックに歪んだ力強い声色を使い分けた壮大なM4「Queen Of Fire」、パワーがありながらも非常に伸びやかで気持ちの良いサビがスケール大のM5「Dreams And Scars」、哀愁たっぷりの叙情美メロにマグナスの歌声がこの上なくマッチした前述のM10など、本当に全楽曲粒ぞろいで隙がない。この人の曲作りの才能は底なしだ。
ただ一つ不満(もはや言いがかりの類い)を漏らすなら、全ての曲の質が高く安定しているだけに、際立ったキラーチューンが無いため、明確なアルバムのハイライトが無いように感じられるところか。これはつまり本作に駄曲が無いことの証明でもあるのですが。
中盤から後半にかけて、メタリックなシャウトが炸裂し、キレのあるリフで疾走するインパクト絶大な曲でもあればさらに本作に対する印象が上がったかな〜と。まあマグナスはそういう曲を書くタイプとはあんまり思えませんけどね。
そんな難癖はさておき、メロディアスで正統的なHR/HMを聴く人にとっては、そのものズバリな名曲・佳曲が満載なアルバムなので、聴き逃しはナシでお願いします。
個人的に本作は
"超実力派のヴォーカルを多数従え、正統派メロディックメタルの王道をひた走るハイクオリティーな名盤"
という感じです。
Magnus Karlsson's Free Fall - "Hold Your Fire" feat. Dino Jelusick (Official Music Video)
Magnus Karlsson's Free Fall - "Dreams and Scars" feat. Renan Zonta - Official Music Video
