- デスメタルとは思えぬほどに垢抜けたキャッチーさ
- イェスパーの才覚が完全に発揮されたリードフレーズ満載
- 突出した要素は薄いが安定感は抜群
IN FLAMESが20年前に発表した5thフルアルバム『Clayman』が全曲リマスタリングされ、さらにはインストメドレー、現在のバンド編成でリレコーディングされた楽曲が収録された20周年記念盤が今月28日に発売されます。
IN FLAMES - Clayman (Re-Recorded) (OFFICIAL LYRIC VIDEO)
良くも悪くも「綺麗になった」印象で、ヴォーカルや演奏のタイトさは当然向上しているものの、やはり当時ならではの生々しい勢いみたいなものは削がれている感じですかね。
メロディックデスメタルというスタイルからすっかり脱却して久しい彼らが、今になってかつてのメロデス楽曲をプレイするということで、気になっている人も多いのではないでしょうか。僕はと言えば......買うかどうかはまだちょっと未定かな?
さて、そんな20周年というタイミングで感想文を書こうと、久方ぶりに本作を聴き通してみたのですが、やはりこの頃のIN FLAMESは良いなと。素直にそう思えます。
いや、近年のIN FLAMESの作品も十分に良いと思えるので、「あの頃は良かった」的なことはあまり言いたくありませんが、やはりこの頃のIN FLAMESには現在の彼らには薄くなってしまったメロディックなヘヴィメタルとしての迫力が色濃い。
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メロデス界にその名を残す傑作となった前作『Colony』と比較すると、ダイナミックなスケール感、派手さはやや控えめになり、全体的に落ち着いたような印象ですが、その分非常にコンパクトかつキャッチーになった感じ。とてもデスメタルの一種とは思えないほどに聴きやすい。
アンダース・フリーデンのダミ声混じりのデスヴォイスを除けば、普通のヘヴィメタルといっても良いくらいにアングラ臭は払拭されているので、エクストリームメタルは苦手という人でも満足に聴けるのではないでしょうか(その分デスメタル愛好家にはソッポ向かれそうですが)
しかしアンダースのヴォーカル...。この頃はギャウギャウと喚くようなデスヴォイスに、つぶやくようなしわがれ声と、あまりヴォーカルの実力は高くはありませんね。いかに近年の彼がヴォーカリストとして成長しているのかが実感できます。
しかし何といってもイェスパー・ストロムブラードのリードギターですよね、この作品のキモは。ほぼ全曲にわたって哀しみの感情を載せた慟哭の旋律がつんざく。M1「Bullet Ride」から早速サビ裏で唸りまくるリードギターが響き渡ります。
うねりまくる轟音リフに、アンダースのサビでのヴォーカルが非常に印象にのこるM2「Pinball Map」、メロパワにも通じるアグレッシヴな疾走感に伴いリードギターも乱舞するM6「Clay Man」、さらにダメ押しとばかりにギターの慟哭が一層冴えわたるM9「Swim」~M10「Suburban Me」の二連発と、イェスパーのリードギタリストとしての才覚が存分に幅を利かせている。
結果としてやや似通った曲が多くなってしまっていたり、アルバムとしてのメリハリはさほどついていないように感じられる向きもあります。前作収録の「Embody The Invisible」のような超キラーチューンも欲しかったし(しいて言えばM6とM10がそれにあたるか)、MVが作られたM3「Only For The Weak」のようなミドル曲も「Stand Ablaze」並みに泣いてほしかった。
しかしそれでも彼らの強みである慟哭のメロディーは十二分に詰まっており、何よりも聴きやすくまとまっているのが良いですね。演奏技術を誇示するプレイには目もくれず、ひたすらに叙情性を発散することにのみ注力した、泣きメロに酔いしれたい人のマストアイテムです。
個人的に本作は
"派手さは薄いが、泣きのギターを全編にまとわせながらキャッチーにまとめ上げた泣きのメロデス代表作"
という感じです。