- ヴォーカルチェンジ前の楽曲のリレコーディング
- 国内トップクラスの極悪重低音
- ほのかに挿入されるクリアな叙情性にも注目
AUGUST BURNS REDのアメリカツアーに同行したり、RESURRECTION FEST 2019のメインステージのアクトで大規模なモッシュピットを生み出すほどの成功を収めるなど、今最も世界を舞台に活躍している日本のメタルバンド・CRYSTAL LAKE。
そんな彼らが、現在入手困難になっている初期の音源『Freewill』『Dimension』『Into The Great Beyond』の3枚から楽曲をセレクトし、ファンからのクラウドファウンディングで募った資金で(ブックレットのSpecial Thanksには、協力してくれた人たちの名前がビッシリと並んでいます)レコーディングを行った再録アルバム。
初期のCRYSTAL LAKEはヴォーカルも現在のRyoさんではなかったし、ジャンルも今のようなモダンなメタルコアではなく、もっとHATEBREEDあたりの流れを汲むハードコア寄りの音だったんだとか。
僕はこのバンドの音源を本格的に聴きだしたのは2016年の『True North』アルバムからなので、初期の楽曲にはまったくと言っていいほど触れてきていません。よって僕にとっては、リレコーディングアルバムというより、普通に新曲群として聴けます。原曲からどの程度様変わりしてるのかといったことはわかりません。
まあそんな本作なんですが、ここ最近の彼らの楽曲を聴いてきている者からすれば、ある意味非常に予想通りの仕上がりですね。
そう、エグすぎです(笑)
本作リリースの前にシングル『WATCH ME BURN』をリリースし、カップリングに「Aeon」にも負けないほどのバケモノみたいな曲を収録してた彼らの事、軟弱さやヒヨりとは一切無縁。徹底的に歪み狂った極悪の重低音を全曲でかき鳴らしています。一体どんだけ弦をダルンダルンにしてるんだこのバンドは(笑)
M1「Fabricated Refuge」から、地下深くまで沈みこんでしまうほど低くうなるギターリフがブチかまされ、Ryoさんの魔王じみた狂気の咆哮が木霊する。これまた低音を強調したCRYSTAL LAKEらしいシンガロングもバッチリ。
ド迫力のヘヴィさはそのままに、ややノリの良さを強めたリフで駆けるM2「Twisted Fate」、田浦楽さんの壮絶なドラムテクが本領を発揮する疾走感に、メロディアスな(あくまで本作の中では)ギターが乗るM3「Open Water」、ブレイクダウンと低音グロウル極悪っぷりがもはや地獄からの音になっているM6「Freewill」など、彼らの"ヘヴィであること"のこだわりが全方位に渡って炸裂。こいつらMANOWARよりもLOUDER THAN HELLしてるぜマジで。
ただヘヴィでゴリゴリに押し通すだけでなく、クリーンギターによる静かなパート、叙情性を湛えた美麗なコーラスで透明感を演出する瞬間もあり、こういったアプローチも今のCRYSTAL LAKEらしいところですね。特にM10「Into The Great Beyond」はクライマックスを飾る曲だけに、より彼らのエモーショナルな面がしっかりと映し出されています。
少し惜しい点としては、既存の楽曲をまとめた造りによるところもあるのか、ヘヴィなメタルコアという路線で固められ、似通った印象が強く、アルバム通しての起伏がやや小さいことでしょうか。
最新のオリジナルアルバムである『HELIX』は、ヘヴィでカオスを極めたキラーに、メロディックな疾走感を持った曲、ハードコアとしての勢いを強めた曲、ラップ・ヒップホップの要素を取り入れた曲など、ある程度曲調に幅があったので、本作はそれと比してちと単調な感じかも。
とはいえアルバム通して40分に満たない長さなので、特にダレることなく聴き通せるため、さほど気になる訳ではありませんけどね。
日本の音楽シーンで、ある程度一般のロックリスナーに知られているメジャーなバンドの中では、恐らく最もヘヴィな音を出しているバンドだということを、改めて再認識させられた一枚。今のCRYSTAL LAKEが奏でる音が100%詰まっている充実作でした。ヘヴィな轟音に鼓膜をヤられたいなら、このバンドを無視することはもう不可能でしょう。
個人的に本作は
"国内最重のサウンド、怪物じみたヴォーカル、少しの叙情美で生まれ変わった、全リスナーを潰しにかかってくる楽曲群"
という感じです。
