ひとりごと ~Music & Life-Style~

HR/HMを中心としたCD感想、足を運んだライヴの感想をメインにひとりごとをブツブツつぶやくブログです。

V.A. 『CHAOSMOLOGY』

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  • ヴォーカル有りとインストゥルメンタルの二枚構成
  • Disc1は割かし原曲に忠実ながら個性はバッチリ
  • Disc2は各アーティストならではのアレンジがより強く光る

 

日本のメタリックオルタナティヴロックバンド・9mm Parabellum Bulletが、自身と交流のあるミュージシャンを中心に集めた、キャリア初のトリビュートアルバム。

 

正直に言うと、本作で演奏しているミュージシャンの大半は興味ない or 知らないという体たらくだったので(スイマセン)、わざわざ買ってまで聴く必要あるかな?と当初思っていました。

 

ただまがりなりにもメジャーシーンで実績のあるミュージシャンたちだし、何より原曲が良いので、9mmファンを自認する者であれば楽しめるだろうという期待感はありました。

 

本作は2枚組仕様となっており、1枚目は歌入りのカバーで、2枚目はインストゥルメンタルバージョンとなっています。カバーしたアーティストと曲目はこんな感じ。

 

[Disc 1]
1. UNISON SQUARE GARDEN「Vampiregirl」
2. BLUE ENCOUNT「Supernova」
3. BiSH「Discommunication」
4. THE BACK HORN「キャンドルの灯を」
5. FLOWER FLOWER「名もなきヒーロー」
6. a flood of circle「Black Market Blues」
7. cinema staff「Talking Machine」
8. チャラン・ポ・ランタン「ハートに火をつけて」
9. ストレイテナー「カモメ」

 

[Disc 2(instrumental)]
1. SPECIAL OTHERS「Wanderland」
2. fox capture plan「ガラスの街のアリス」
3. mudy on the 昨晩「Punishment」
4. LITE「次の駅まで」
5. DEPAPEPE「スタンドバイミー」
6. Ryu Matsuyama「The World」
7. アルカラ「Living Dying Message」
8. キツネツキ feat.タブゾンビ(SOIL&“PIMP”SESSIONS)&栗原健「黒い森の旅人」
9. →Pia-no-jaC←「ハートに火をつけて」

 

歌入りのDisc1の方は、一部かなり大胆なアレンジが施された例があるものの、おおむね原曲の雰囲気を損ねないカバーばかり。各アーティストの個性や音作りも、なかなかいい塩梅でにじみ出ているのではないかと思います。

 

Supernova」、「名もなきヒーロー」、「Talking Machine」あたりは、ちょっと原曲の勢いや個性が薄味になってしまった感があるのが残念。とはいえ元々のメロディーが良いのでしっかりと聴けることは聴けるけど。

 

特に良いと思ったのはUNISON SQUARE GARDENによる「Vampiregirl」と、チャラン・ポ・ランタンによる「ハートに火をつけて」、そしてa flood of circleの「Black Market Blues」でした。

 

「Vampiregirl」は何を思ったか、7拍子のリズムに合わせて高密度な演奏が乱舞するダイナミックな楽曲に様変わり。歌詞も微妙に異なっているアレンジで、演者の個性がダイレクトに伝わる造りになっています。「ハートに火をつけて」はメロディーや展開は原曲と全く同じなれど、歌とアコーディオンのみで進行していく。官能的な響きは薄れた代わりに、どこか怪しげなムードが増強されて、個性の表現に一役買っている感じですね。歌謡的なメロディーとアコーディオンの相性がかなり良い。

 

そして何といっても「Black Market Blues」。a flood of circleがこの曲をやると聞いた時点で「絶対にサマになるだろう」と確信を持っていましたが......いやはや、さすがのカッコよさ!

 

原曲のダサさが薄れたのは否めませんが、鋭いギターリフと荒々しいヴォーカルで彩られる、afocらしいスピーディーなロックンロールに変貌。元々のアングラっぽいうさん臭さはそのままに、研ぎ澄まされたロックとしての衝動がバリバリで、原曲とは異なる新たな魅力を大いに発揮することに成功しています。文句なしに本作のベストチューンですね!

 

インストゥルメンタルナンバーを集めたDisc2は、Disc1と比べると、よりアーティスト各々が自由にアレンジをしている印象が強いですね。

 

9mm屈指の爆速曲である「Punshiment」がかなりゆったりとして、ノイジーな楽曲になっていたり、「Living Dying Message」のヴォーカルメロディーが全編バイオリンで彩られ、歌謡曲の野暮ったさが消えうせた優雅な曲になっていたり、「黒い森の旅人」がスローで艶やかなモダンジャズになっていたり...。ボーっと聴いているだけでは、果たして今自分が何の曲を聴いているのかわからなくなってしまうかも。

 

Disc1に比べるとインパクト重視ではなく、楽曲全体のムードと演奏の妙を大切にしている感じを受けます。特にfox capture planの美しくも躍動感あるジャズピアノが舞う「ガラスの街のアリス」、DEPAPEPEのアコースティックの調べが、瑞々しくポップなメロディーに完璧にマッチした「スタンドバイミー」は珠玉の仕上がり。この記事に触発されて買った間接照明をつけて聴くと、部屋のムードが一気にシャレオツになるな。

 

全体を通して原曲の持つ歌謡的な哀愁はキープされつつ、それぞれの楽曲で各アーティストの強みがしっかりと息づいた好カバーが多く収録されており、トリビュートとしてはかなり完成度の高いアルバムになっているのではないでしょうか。

 

あえて気になるところを挙げるなら、ほとんどの曲がシングル表題曲、もしくはMVが作られた有名どころの楽曲ばかりで、「そのチョイスでくるか!」と思える曲がほとんどないところくらいかな(せいぜい「次の駅まで」くらい?)

 

もう少し選曲に意外性を持たせてもいいんじゃないかと思うのですが、まあマニアックにしすぎて敷居が高くなってしまうのもアレですし、良い物は良いってことですね。

 

 

個人的に本作は

"各アーテイストの個性と、9mmならではの魅力がうまく化学反応を起こしたトリビュートの秀作"

という感じです。

 


【9mm Parabellum Bullet】Tribute Album「CHAOSMOLOGY」New Teaser