- アグレッシヴなギターの複雑怪奇な妙
- 壮大なメロディーにさらなる輝きを与えるヴォーカル
- プログレッシヴの小難しさはナシ
僕は基本的にプログレッシヴメタルというジャンルを苦手としています。
ロックという音楽にハマったキッカケがメロディックハードコアという、あまり難しいことを要求されない、シンプルでストレートなジャンルだったから、というのもあるのでしょう。どうも小難しくてお堅くて窮屈な、敷居の高さを感じでしまうんです。ここ日本でも非常に人気の高いDREAM THEATERとかも、今一つピンとくるものがないくらいです。
しかし、そんなわかりやすい音楽大好きリスナーである僕ですら、グイグイと引き込んでしまうほどのプログレメタルももちろん存在します。それがイタリア出身のDGMの最新作。
イタリア出身のメタルというと、Rhapsody Of Fireを始め、くどいほど濃いメロディーにまみれていたり、どうしようもなくB級なパワーメタルだったり...というのも想像してしまうのですが(それはそれで良いもんですが)、本作はそのどちらにも当てはまりません。
極めてタイトにまとまったB級感皆無の演奏、情熱的でありつつクリアな印象も与える実力派ヴォーカル、耳に馴染みやすいキャッチー極まりないメロディーと、メロディアスなヘヴィメタルを好む人なら誰しもが魅力を感じてしまう要素がてんこもり。
ギターがヘヴィかつ非常にテクニカルという点で、Symphony Xにかなり近いものを感じますが、あちらのようなネオクラシカル要素が皆無な代わりに、CIRCUS MAXIMUSにも負けないほどの歌メロの充実度がある。メロディアスでキャッチーなら、特に様式美とかネオクラとかじゃなくても良いと考えている僕からすれば、このバンドはまさに上記2バンドの良いとこどりと言えるかも。
ヴォーカルのマーク・バジルの歌声は、熱さと爽快感を見事に両立した素晴らしいもの。強烈なフックに満ちたメロディーをさらにドラマチックなものに彩っている。M4「Hope」の翳りがありつつも、天まで昇っていくかのような解放感溢れるメロディーは、彼の歌い上げにより一層見事なものに仕上がっています。このヴォーカルワークは感動的ですらあるな...
そしてシモーネ・ムラローニのギタープレイが素晴らしいのなんの!ヘヴィで複雑怪奇にうねりまくるリフからして迫力満点ですが、ここぞというところでガッツリとメロディアスなリードソロ(テクニカルさは失わない)を披露する。さらにはキーボードとも絡みながら交互にソロを弾きまくり、大きな聴きどころを生み出していますね。
M2「Surrender」のようなメロハー並みに爽快なアップテンポナンバーに、M5「Tragic Separation」のようなヴァイオリンを交え、大きなスケール感を描いた楽曲、ヴォーカルメロディーだけでなくリフの時点ですでにキャッチーさ満載でヘッドバンギングを掻き立てられるM6「Stranded」、キレッキレでダークなイントロから、美しいポップなサビへと切り替わるM8「Silence」など、本当にどの楽曲も印象に残るフックがある。
非常に密度の高いインストパートの充実度と、一切小難しさを感じさせずにスッと耳に入ってくるメロディーのコントラストは見事という他ありません。前回取り上げたSinner's Bloodと同様、メロディックメタルファンであれば必ず聴くべし。
個人的に本作は
"キレのあるヘヴィなプログレッシヴサウンド、素晴らしく心地よいメロディー、壮大なスケールのヴォーカルが三位一体となった名盤"
という感じです。
DGM - "Flesh and Blood" - Official Music Video