日本のメロディックデスメタルバンド・GYZEが2021年にニューシングルを3ヶ月連続でリリースすることを発表しました。
タイトルはそれぞれ「SAMURAI METAL」「VOYAGE OF THE FUTURE」「ORIENTAL SYMPHONY」。
現時点での最新作である『ASIAN CHAOS』は聴いただけで日本人の作ったメタルであることがわかるということを狙い、和の雰囲気が全編を覆っていました。個人的にはその和風テイストは少々やりすぎに感じていたので(アルバム自体の出来は良かった)、ここからさらに「SAMURAI METAL」と来るのはどうなんだ?という気持ちがないわけではないです(笑)
まあ屈指のクサメロの才能を持つRyojiさんのことなので、確実に琴線に引っかかる旋律を生み出してくれるだろうという期待感はしかとあります。
そんなリリース情報に影響されまして、久々に彼らの1stフルアルバムである『FASCINATING VIOLENCE』を聴き返してみたのですが、改めてこのバンドのメロディーの潤沢っぷりに驚かされましたね。なんでこうも良質なメロディーを垂れ流すことができるのか...
コア系のリズム落ちパートは用いずに、終始疾走しまくるハイスピードなメロデス。そこに絡むリードギターが恐ろしいほどにクサい劇メロを奏でまくる。ちょっと語弊があるかもしれませんが、VOLCANOの屍忌蛇さんのギターソロがほぼずっと鳴り止まないスタイルと言えるかもしれません。日本語であることがわかりやすいシャウトに泣きのギターが被ってくる様は、同じくクサメロを武器とするMYPROOFにも通じるところがあるかも(メタルコア要素はないけど)
Disarmonia Mundiのエットレ・リゴッティがサウンドプロデュースを手掛けており、これがまたギターの音がバカでかい音作りで迫力満載。このサウンドのおかげで最大の武器であるギターがより一層際立っていると言ってもいいですね。終始泣きまくりのメロディアスなリードが響き渡る(そのせいかベースの存在感がかなり薄くなっていますが、まあエクストリームメタルは大抵そんなもんか...)
オープニングトラックのM1「DESIRE」はバンドを代表する名曲で、初っ端から繰り出される美メロの大乱舞には胸を焦がされるばかり。イントロからサビ裏、速弾きを交えたソロにいたるまで全てのギターが泣きまくり喚きまくり。さらに楽曲のテンションを高めんばかりにドラムも凄まじい高速連打をギターの裏で叩きまくる。
また現在の彼らには見られなくなった要素として、M2「DESPERATELY」や、M4「REGAIN」のようなヴィジュアル系を思わせるようなクリーンヴォーカルが取り入れられているのも本作の特徴ですね。次作『BLACK BRIDE』の時点でほぼ消滅してしまっているので。
「ヴィジュアル系みたいな歌唱なんてデスメタルには求めてねえんだよ!」という意見も多いかもしれませんが、個人的には嫌いじゃないです......というかむしろM4のサビのクリーンなんてかなりキャッチーで良い感じじゃないですか。以前ライヴでこの曲を聴いたときは、ほとんどデスヴォイスで歌われていたので、メロディーがダイレクトに伝わらなくてちょっと残念に思ってしまったくらいです。
本作中特にメロディーの泣きが強いのはM9「DAY OF THE FUNERAL」。ストリングスのイントロからもう恐ろしくクサい!そこから強烈な哀愁を放つリードギターが登場し、ヴォーカルパートにおいてもバッキングでずっと泣きまくり。そしてサビにてイントロと同じフレーズが炸裂し、トドメと言わんばかりに嘆くようなRyojiさんの叫びに続く怒涛の泣きのギターソロ!そしてラストの大サビ!クサい。クサすぎる。
疾走一辺倒で起伏が少ないという点も、このクサメロの嵐を浴びるという聴き方おいてはむしろプラスに働いているし、これはもう文句なしの名盤です。1stの段階から、もう完全にクサメロのセンスが花開いていたことがよくわかります。メロディーのクサさという点においては、世界最高レベルのセンスを有してるのではないかと。
エクストリームメタルはひたすらコアな破壊力が欲しいから、メロディアスすぎるのは嫌という人はともかく、メロデスに泣きを求めている人であれば必聴盤でしょうね。そんな人はとっくに聴いているだろうけど。
個人的に本作は
"世界最高峰のクサさを放つギターと、ド迫力の突進力で彩られた激泣きモダンメロデス"
という感じです。