- 延期となったフルアルバムに先駆けたEP
- CARCASSらしいおどろおどろしいスタイルは一切不変
- 派手さは無いがジックリ確実に染み渡る...
ゴアグラインドとメロディックデスメタル、二つのジャンルの創始者としてエクストリームメタルの代表格の地位を築いたリヴァプールの残虐王・CARCASSの最新EP。
本来であれば今年に、2013年発表の『Surgical Steel』以来7年ぶりのフルアルバムがリリースされるはずでした。
しかし忌まわしき新型コロナウイルス騒動による都市部のロックダウンに影響され、新作リリースは持ち越し。CARCASS狂の掟ポルシェさんを筆頭に、多くのエクストリームメタルファンを落胆させました。
そしてロックダウンが解除されたあと、アルバムに先駆けて新曲4曲入りの本作を発表。しかも収録曲のうちM3「Under The Scalpel Blad」以外の3曲はアルバム未収録という、ファン要注目の作品です。大変な状況にも関わらず、こうやってファンに新曲を届けてくれたバンドとレーベル関係者にまずは感謝ですね。
わずか4曲とはいえ、CARCASS節の効いたメロデス100%ともいえる内容で、前作や4th『HEARTWORK』が好きなメロデスリスナーであれば、充分に満足のいく作品なのではないでしょうか。
基本線は前作で聴けたようなメロデス路線そのまま。モダンさやド派手なエクストリーム要素には目もくれず、「おどろおどろしい」「生理的嫌悪感をもよおす」「グロい」「汚い」などといった言葉が良く似合う音を出している(褒めてます)
地獄の底から湧き上がってくるような不気味なデスヴォイス、ドロドログチャグチャした生々しさを演出する歪みのギターによる音は「エクストリームメタル」ではなく「デスメタル」と呼びたくなる。そんな邪悪で薄気味悪い音に、合間に悲哀に満ちたメロディーを奏でるリードギターの旋律がねばりつくように絡む。気持ち悪いのに琴線に触れる、そんなCARCASSマジックが短い中にもしっかりと息づいていると言えます。
ブラストビートが炸裂するパートもあるのですが、全体的にそこまで熾烈な疾走感に満ちているという印象はありません。むしろゆっくり確実に、堅実に、ジワジワと脳や臓器に染み渡っていくかのような曲展開。近代エクストリームメタルのような、ストレートに脳天を打ち抜くようなわかりやすい派手さはありません。
しかしCARCASSというバンドの曲はこれで良いのでしょう。やや軽めの音質にグロテスクなサウンド。気味の悪いヴォーカルに浸食されながら、怪しくも叙情的な泣きのリードギターの旋律に心を奪われていく。これぞCARCASS流メロディックデスメタルの神髄なのだと思います。
なお本作の日本盤には、現在マンガと映画で空前のメガヒットを飛ばしている作品のパロディーの邦題がついているのですが、たとえどんなに上手にパロッたとしても、コレ以上に秀逸なタイトルは生まれないだろうなと思います(笑)
※上記リンク先は思いっきりR-18なので注意!
個人的に本作は
"短い中にもCARCASSらしさ満載。グロテスクなのにどこか琴線に触れるオールドスクールメロデス"
という感じです。
CARCASS - The Living Dead At The Manchester Morgue (OFFICIAL MUSIC VIDEO)