ライヴ......それはあるときは薄汚いライヴハウスで、あるときは大規模なホールで、またあるときはアリーナやスタジアム、野外ステージで行われる狂乱の宴。僕も今まで邦洋問わず、規模の大小問わず、様々なライヴを体験してきました。
モッシュにサークルピット、フィストハングにヘッドバンギング、クラウドサーファーをその身に受けながら汗だくになって盛り上がるその非日常の時間は、何物にも代えがたいひとときです。
そしてこの日もまたライヴ!!......なのですが、今まで経験してきたライヴとはまったく毛色の異なるものです。
会場はBillboard Live TOKYO。六本木という都内有数の高級繁華街に居を構える東京ミッドタウン内に存在するライヴレストランです。
六本木、ミッドタウン、そしてライヴレストラン......。
片田舎に住んでいて、洋服を買うのはユニクロとGU以外だとRAGEBLUEやcoen、ご飯は松屋にゴーゴーカレー、ちょっと贅沢したいときはやよい軒という僕にとってはあまりにも縁のなさすぎる、さながらブルジョアジーの合成獣のような場所。
しかしそんな場所だからこそ興味を持ったというか、好きなバンドのライヴでも無い限り一生来ることのない場所ですから。ここでOAUのライヴが行われるとあれば、行かないわけには行きません。飯食いながらライヴを観るなんてフェス以外では経験がないですし。
高いレストランなんか社会人一年目の時に、配属された事業部の部長におごってもらった展望レストランとか、事業部の忘年会とかでしか経験したことがない。自主的に、自分の金で飲み食いするなんて初めての経験。一応持っている私服のなかでも割かしスタイリッシュで違和感のないトップス(ZARAで割引されてたヤツ)を選びましたが、はたしてどれだけ庶民オーラを消せているのかは、自分では判断できません。
期待と不安を抱えながら、東京メトロで六本木へと向かう。駅構内を抜けるとすぐそこに会場となるBillboard Live TOKYOがあるミッドタウンに直結している。
おおおお~~~...な、なんて立派な建物なんだ...
イオンモールですら「スッゲ~!豪華~~!!」となってしまう僕。ミッドタウンが醸し出すブルジョワオーラにのっけから気圧されてしまった。何この空間?俺居ていいの?
もう値札を見るまでもない。陳列されているアイテムのすべてがバカ高いことが、ひしひしと伝わってくる。実際にチラッと横目で商品を見てみると(店員さんに声をかけられて買う流れになってしまったら終わりなので店には入らずに)、洒落たグラスが12000円くらいでした。カフェやファーストフード店も、ドトールとかマックのような庶民感は皆無で、恐らくセットで1000円くらいはするのでしょう。
セブンイレブンですらオシャレで格式高く感じる。
まあ見てる分には楽しめなくはないけど、こりゃのんびりウインドウショッピングを楽しむような環境ではないわな...と外に出る。ライヴまでまだ時間はあるので、すぐ近くにあったFUJIFILM SQUAREという無料で入れるギャラリースペースを見てみることに。
※スマホの静止画は写真撮影可でした。
この日は『ハッブル宇宙望遠鏡 宇宙の神秘を紐解く30年』という企画をやっており、ハッブル望遠鏡が映し出した天体画像が多数展示されている。ガーディアンズ・オブ・ギャラクシーに出てくるかのような銀河や天体ガスの写真がわんさかで、天体にはとんと興味のない僕でもなかなか男心をくすぐられますなあ。
その後は近くのスタバでChromebookを開きブログをいじり、ミッドタウンのすぐ近くにある檜町公園をプラプラ歩いて時間を潰し、頃合いを見計らって会場となるミッドタウン4階へ。スーツをビシッと着こなしたホテルのコンシェルジュみたいなスタッフにお出迎えされ、速攻で恐縮の極みに。青白く光る廊下を抜け、自分の席である5階のカジュアルフロアへ。
高い位置にあるため、ステージからはやや角度がついているものの、一応ステージ全域を見渡せる。距離もさほど遠くない。小さなカウンターとはいえ、こりゃなかなか快適に観られそう。
とりあえずバーカウンターへ行って、ワンドリンクをもらいに行く。当初は値段の高いメインディッシュやらデザートやらを頼めるのかと思っていましたが、カジュアルフロアはテーブル席と違ってフードメニューは安め(あくまで「比較的に」ですが)の軽食しかない様子。財布に優しいのはありがたいけど、ちょっと拍子抜け。とりあえずカシスオレンジと一番僕の舌に合いそうなポテトフライと唐揚げをオーダーする。
暗い店内でフラッシュをたかないようにしてたからか、全然良い写真が撮れなかった...
開演まであと30分以上ある段階でドリンクとフードが揃う。飯を食いながらゆったりと音楽に浸るつもりでしたが、朝昼兼用の軽い飯しか食ってなかったため、開演前にちょっとだけつまみ食い。
美味い。
僕は特にグルメでも何でもありませんが、そんな僕でもわかるくらい美味い。日頃は会社に併設されたコンビニの弁当が昼食のメインとなっており、それも充分に美味しいのですが、これはちょっとレベルが違う(あたりめーだ)
ポテトはカリカリしてて塩気もしっかり。唐揚げは外の衣はカリっとした触感ながら、一度嚙むとホロホロと口の中でとろけていってしまうように柔らかい。これは手が止まらなくなるぞ!うめえ!うめえ!米がたっぷり入ったどんぶりにこの唐揚げをのせて、マヨネーズと七味をぶっかけて食いてえ!!
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開演する前にこのザマよ。
美味しい食べ物は一度手に付けると、満腹にならない限り止められないから注意しましょう。
そして開演時間の16時半に暗転。拍手と共にOAUのメンバーがステージへと上がる。前回の渋谷公会堂とは違い、メンバーの表情まではっきりと見える。上から見下ろすような視点のため、ドラムのRONZIさんやパーカッションのKAKUEIさんの動きもバッチリ視認できました。
「世の中が大変になっている中、今日は来てくれてありがとう。何が正解なのか、どこの国が正しいのか、わからない状況だけど、ホントは俺たちは何が一番正しいのかを知ってて。それは"良く生きる"ということ」とTOSHI-LOWさんのMCから始まるのは「A Better Life」。柔らかなTOSHI-LOWさんの歌声と、KAKUEIさんの楽し気なスチールパンが非常に心地よい。
予想はしていましたが、やはりここまでキレイで行き届いた会場なので音が良い。ときには弾むように楽しく、ときには切なく響き渡るギターに、全ての音を優しくしっかりと支えこむベース、軽やかに弾むドラムに、主要なメロディーをよどみなく伝えるヴァイオリン。そのどれもが確かな存在感を持って耳に届いてくるのがわかる。
「Midnight Sun」ではMARTINさんの張りのあるまっすぐなヴォーカルと、それと絡むヴァイオリンの響きが美しい。翻ってのどかで牧歌的な印象のある「Traveler」では、ヴォーカルもヴァイオリンもさらに親しみやすい優しさを見せる。TOSHI-LOWさんもKAKUEIさんに並んでパーカッションに参加し、のどかな印象を一層強めていました。
「KAKUEIさんの頭につけたベルがリハーサルのとき鳴らなくて喧嘩になった」「大阪公演ではアルコールが禁止されてたから、みんな手についた消毒用アルコールをベロベロ舐めてた」というMCで笑いをとりつつも、今回特に語られていたのは、2020年という混沌の世の中で気づけた自分の生き方や考え方、家族への愛について。それがOAUの温かい楽曲、彼らがとってきた行動とマッチして強く説得力を帯びてくる。
「こころの花」から間髪入れずに演奏された「Maiking Time」で本日一番の開放感と躍動感を演出したあとのアンコール。MARTINさんが「生活が大きく変わった一年になったけど、そんな中でも唯一変わらないのは家族の愛。家に帰れば愛する人がいるし、たとえいなくても親は必ずいた。誰しもがこの気持ちが心の中にあると思う」語ったあとは「I Love You」を披露。
そのタイミングでバンドのバックにあった幕がゆっくりと開き、すっかり暗くなった外の景色が広がる。家族連れで賑わうスケートリンクと、イルミネーションが煌めく様子が窓からよく見える。
先程のMARTINさんのMCに、何度も"I love you"と歌われる曲を聴いているからか、今イルミネーションの中を歩くカップルや、手をつなぎながらアイススケートに興じる親子の姿を見て「あそこにいる人達みんなにピッタリな曲だな...」と柄にもなく思ってしまった。
そして最後は「帰り道」。この曲は何度聴いても胸の中の目頭が熱くなりますね。先程の「I Love You」と合わせて、アコースティックの優しく寄り添うような音の魅力に、最大限感動できた瞬間でした。
1時間半弱というやや短いステージではありましたが、会場のムードと良い音響も作用して、非常に心地良い時間を過ごせましたね。ただこんな機会でもなけりゃまず来ることのない、お高めのレストランですからね。もう少し料理に舌鼓を打ちたかったのは心残りかな。まあ僕のお財布事情を考えるとメインとなるメニューには手出しできなさそうですが。
そんなことを考えながら会場をあとにして帰路につきました。
うめぇ〜〜〜〜!!キムカル丼うめぇ〜〜〜〜〜!!
あのポテトと唐揚げじゃ量が圧倒的に足りねえんだよな!!やっぱこのくらいガッツリと食いたいんだよ飯は!!!!
僕は富裕層にはなれない。