聖飢魔Ⅱの創始者でありながらデビュー前にバンドを脱退し、世を偲ぶ仮の姿で高校の数学教師を務めていた地獄の大魔王ダミアン浜田陛下。
そんな彼が再び人間界へと姿を現し、選ばれし6人を改臓人間へと変え、自らのしもべとして結成したヘヴィメタルバンドの記念すべき最初の大教典。本作のリリースの1ヶ月後にはもう二枚目の大教典である『旧約魔界聖書 第Ⅱ章』の発表が決定しています。
本作に参加している改臓人間たちは、ヴォーカルにかつてテレビ番組『歌唱王』にてGALNERYUSを歌ったことで、一部のメタルファンの中でも話題になったさくら"シエル"伊舎堂さんに、楽器隊はプログレッシヴロックバンド・金属恵比須のメンバー。ダミアン浜田陛下本人は作詞作曲・プロデュースなどに専念しており、音源への参加は無し。
もちろん、プロデュース(制作全般)にも関わらせてもらうが、演奏には関わるまいと考えておった。そうすることによって作詞・作曲・編曲に費やせる時間が圧倒的に増やせるというメリットも生まれ、演奏面だけでなく楽曲のクオリティも確実に上がるのだ。まあ、魔界における秋元康氏みたいなものだな。
— ダミアン浜田 (@Damian_Hamada) November 23, 2020
先月の「旧約魔界聖書」の制作発表を見て、私が演奏に関わっていないことに落胆したというツイートをいくつか見かけた。
— ダミアン浜田 (@Damian_Hamada) November 23, 2020
それはそれで大変嬉しいのだが、やはり前述の目標のためには、今回の手法がベストの選択であったに違いないと思う。
諸君も間もなく聖典を手に入れ聴けば、そう実感するであろう。
実は最初に悪魔寺に今回の話をした時、私は表には一切出ず、前述のとおり裏方のみに徹するつもりだったのだが、侍従長から「やはり制作者の近影がないと…」と言われ、重い腰を上げて21年ぶりに変身したのだ。それが、いつの間にかジャケットやミュージックビデオにまで登場することになっていた。(笑)
— ダミアン浜田 (@Damian_Hamada) November 23, 2020
言ってしまえばAKB48のMVやジャケットにメガネのオッサンがいるみたいな状況だと思いますが(笑)、彼が裏方に徹するのではなくちゃんと存在感を前面に出した方が、聖飢魔Ⅱ信者の興味・関心を強く引き付けられるはずなので、このプロモーションは正解だと思います。
楽曲は聖飢魔Ⅱでも持ち前の様式美センスを活かした楽曲を作ってきたダミアン浜田陛下の本領発揮という感じで、ジャパニーズメタルらしい野暮ったさに、様式美HR/HMらしさ満載のメロディーが織りなす楽曲の連続で、彼の名に期待されるスタイルは順当に表現されています。
音質がややチープな印象があるものの、様式美の世界観をしっかり描き出すシンセ、オルガンの音色もふんだんに使われ、ギターソロも軽快でドラマチックな速弾きを披露する。この辺はもちろんダミアン浜田陛下の曲作りのセンスはもちろん、70年代ブリティッシュハードロック路線を志向しているという金属恵比寿のメンバーによる演奏も大きいのかもしれません。
さくら"シエル"伊舎堂さんによるヴォーカルは、完全に洗練されているというほどではなく、多少の甘さがあるような感じですが、パワーと熱量はバッチリで、気合の入ったハイトーンシャウトがよく映える。発音がかなりハキハキしているため、日本語による歌唱は非常に通りやすい反面、英語詞はカタカナ英語っぽさが強いかな。
楽曲のクオリティーは基本的に文句なしといえるものですが、疾走曲と呼べるのはM2「Babel」のみで、残りはどちらかというと厳かなムード重視なのがちょっと寂しかったかも。とはいえのっけから神聖なムードのクワイアが登場し、優美なシンセが楽曲を引っ張るM3「Heaven to Hell」や、様式美臭満載のキラキラシンセで幕を開ける王道HRのM5「三枚の照魔鏡」、変拍子多用のプログレ展開を見せつつ鋭いギターソロも聴きどころなM6「Lady into Devil」などジャパメタらしい魅力を備えた楽曲に、これといった不満点は見当たらない。
80年代のジャパニーズメタルらしさに、ダミアン浜田陛下の作曲能力がしっかりと絡んだ、近代メタルの要素がカケラもない正統派の一作。聖飢魔Ⅱ信者はもちろん、ジャパメタ愛好家や様式美HRのファンであれば、必ず響くものがあると思います。
ただ収録曲の半数がカラオケ音源という構成はさすがにちょっとね...。これを削って値段を安くするか、来月のアルバム曲も一緒くたにして、普通に一枚の大教典としてリリースしてほしいな...
個人的に本作は
"ダミアン浜田陛下の手腕が活きた、正統派/様式美ジャパメタの秀曲ぞろい"
という感じです。