- とにかく熱い!男臭い!
- キャッチーなギターとキーボードのソロが光る
- 速さに頼り切らない正統派としての強み
一昨年に行われたEvoken Fest 2018での、ヴォーカルがバーカウンターの上で立ち上がるという驚きのパフォーマンスも記憶に新しい、情熱の国スペイン出身の正統派パワーメタルバンド。前作『Against All Kings』から3年ぶりとなるニューアルバム。
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前作は情熱の国出身であることに納得感のある、暑苦しさ全開のメタルバカっぷりが頼もしい快作でしたが、本作においてもその方向性には何らブレがない。
ヘヴィメタルは多種多様なサブジャンルがあり、男らしい勇壮さも、女々しいまでの泣きも、無機質なインテリ感も、非人間的な極悪さも、様々な表現が可能である音楽。その中でも彼らは「力強さ」「男らしさ」「暑苦しさ」のステータスのみにパラメーターを振ったような音楽性を追求しています。さすがだぜ。
熱量の増したカイ・ハンセンと言えそうなひしゃげた声質のヴォーカルも相変わらずですが、この声だからこそVHÄLDEMARと実感できますね。ひたすらに熱い楽曲にさらなる熱情を加えているのは、間違いなくこの余裕のないヴォーカルパフォーマンス。
ただ楽曲のスタンス自体は不変ながら、前作ほどスピードチューンのインパクトは小さく(そもそも曲数自体が少ない)、パワーメタルとしての突進力は若干控えめになった感じ。その分正統派メタルとしての重厚さが目立っている印象を受けました。とはいえ力強いリフでガンガン進みゆくパワーは十分以上に滾っているので、勢い不足を感じることはありません。
M1「Death To The Wizard!」からして、ナヨっちさとは無縁の剛直なリフ、バキバキのベースで幕を開ける正統派メタルを展開。M2「My Spirit」や、M4「Straight To Hell」といったミドル〜アップテンポの楽曲が正統派メタルらしい勇ましさ満載で、メタル魂を鼓舞されますね。黙ってメロイックサインを突き上げ、頭を振らせるパワーがある。さらにメロディアスな色を強くしたM7「Hell Is On Fire」はまさにメロディックメタルの秀曲とも呼べる出来栄えで、速弾きテクに頼らないキャッチーなギターソロが素晴らしい。
ここぞとばかりに繰り出されるスピードチューンのM5「Damnation's Here」は待ってましたのキラーチューン。サビの爆発力と間奏部におけるギター&キーボードソロがカッコいい。
ライヴで見せてくれた熱をそのまま封じ込めたかのような、燃えに燃えるピュアメタル一辺倒で嫌でも熱くさせられる一作。寒さが本格化してくる今の時期に、体感温度を上げるのに重宝しそうです(笑)
とりあえずメタルに熱さを求めている鋼鉄野郎なら、チェックして間違いないアルバムなんじゃないでしょうか。サウンドの熱量だけなら今年のアルバムの中でもトップクラスですよ。
個人的に本作は
"ヘヴィメタルの「熱さ」に焦点を当てた、一点の曇りもない男の中の男の正統派"
という感じです。