- バンドの光を強調したBright Side Album
- ポップで変態というバンドの個性がより強調
- どんな曲調だろうとドーパらしさはバッチリ
"闇"と"光"という2つの要素に分けたフルアルバムを同時リリースしたAiliph Doepa。前回は闇サイドの『Exormantis』を取り上げたので、今回は光サイドのアルバムについてです。
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本作は彼らのヘヴィで極悪なサウンドの要素を廃した作品で、帯にもわざわざこんな文句が記載されています。
シャウト、デスヴォイス等のラウド、極悪な成分を極限まで削ぎ落し、万人が聴ける状態にまで落とし込んだ実験作!これが本当にAiliph Doepa!?聴きやすすぎてごめんなさい!
元々彼らの音楽というのはビートダウンを取り入れたモダンなメタルに、遊園地的ムードを醸し出すイカれたポップさを取り入れたものですが、そのうちのエクストリームな要素を廃した結果、ポップなフィーリングが前面に出ることとなりました。
このことをして「聴きやすい」としているのでしょうが、ヘヴィ・ラウドなカッコよさが減退した結果、むしろ彼らの変態で怪しい側面が強調され、早い話がより不気味になってしまっており、一般リスナーがこれを聴きやすいと感じるかどうかはわかりません(笑)
M1「Traffic jam」はホーンの音色が積極的に使われ、オシャレなスウィングジャズのような曲調に。しかし歌詞やヴォーカルパートは不穏なムードに満ちているし、最後の最後にバカッ速くなるところにAiliph Doepaらしさが感じられる。
M2「Mexican Pizza」はデスヴォイスこそなけれど、彼ららしい変態的な転調と忙しないヴォーカルワークがバリバリだし、M3「A sailor's dream」は大海原を彷彿させる壮大かつ優雅なムードですが、リフはガッツリヘヴィに刻まれる。M4「Do the HUMAN」は淡々としたリフで進むも急激にハイテンションでゴキゲンなサビが登場するなど、たとえ極悪なエクストリームサウンドが無くても、そこにはしっかりAiliph Doepaとしての音がある。
やっぱりたとえどんな方向性になろうが、コンポーザーとしてもヴォーカルとしても強烈極まりない個性を持つアイガーゴイルさんが主体となり、彼の脳内世界を現実のものとしてしまうレベルの高い楽器陣がいれば、Ailiph Doepaの芯は変わらないのでしょうね。実際インタビューでも「(闇サイドも光サイドも)誤解を恐れずに言えば、そんなに大差ない。」と答えていますし。
そんな感じで「光サイドも変わらずドーパらしい変態加減でいいなあ」と聴き進めていましたが、アルバムの後半に位置するM8「Plasma ~the beginning~」~M9「Plasma ~the world~」には完全にヤラレましたね。
彼らには珍しいほどに優雅で美しいメロディーをゆったりと歌い上げる出だしから、シャウトで一気に爆走パートへと移行。その劇的な哀しさを持つメロディーはそのままに、疾走するドラムと共に絶唱へと繋がる鳥肌モノのサビ!
彼らの中ではトップクラスにシンプルでストレート、変態成分が非常に少ない異色の楽曲ではありますが(ストレートなのが異色ってのもどうなんだろうな)、これはすさまじくエモーショナルな名曲だ。ラストのTHE冠を思わせるハイトーンシャウトも素晴らしい。
Ailiph Doepaというバンドに期待されるカオス度は何ら変わらず、楽曲のアレンジや演奏には幅を広げ、かつ疾走キラーチューンも完備と、実に質の高いアルバムに仕上がっています。これは「ヘヴィなヤツ以外興味ねえ」って言う人も黙らせる作品になったのではないでしょうか。
個人的に本作は
"エクストリームメタル要素をかなぐり捨ててもドーパのまま。彼らの音楽的な多彩っぷりと怪しさが楽しめるエンターテインメントロック"
という感じです。
【MV -Bright Side-】Ailiph Doepa「Traffic jam」Official Music Video