ここ3回ほどアレキシ・ライホの訃報に関して文章を書いてきましたが、いつまでもメソメソしているわけにもいきませんので、しっかり気分を切り替えて更新していこうではありませんか。
ということでポジティヴなエネルギーに満ちた、溌溂としたアルバムを聴きこんだ感想を書いてみます。海外のHR/HMアーティストとしては日本でトップクラスの人気を誇るHELLOWEEN。日本のメタルヘッズなら知らない人はいないほどの存在ですね。
HELLOWEENといえば何といっても、マイケル・キスクとカイ・ハンセンという守護神伝時代のキーパーソンがサポートに加わり、今年の夏にオリジナルアルバムを発表予定というニュースがメタルシーンを騒がせてますよね。もちろん僕もチェックするつもりですので、来たるべき音源に備えて現時点での最新作をしっかりと聴きこんでおかなくちゃ。
まあ本音を言ってしまうと、僕は守護神伝時代に強い思い入れを持ったリスナーではないので、あまり懐古的になりすぎずに現在進行形のバンドとしての活動をメインにしてほしいという気持ちがありますが...
さて、2015年に発表された最新作の『My God-Given Right』。前作の『Straight Out Of Hell』が最高傑作ではないかと思うほどに素晴らしいアルバムだったので、リリース当時はかなり高い期待値を持っていました。
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当時はCDショップでアルバイトをしており、先輩社員のNさんが僕がレジに立っているときに「○○君のためにHELLOWEENをかけてあげよう」と言って、サンプル盤を店内BGMとしてかけてくれた思い出の品でもあります(笑)
そして最初聴いてみての感想は「良いけどちょっとおとなしくなったかな?」というものでした。前作で聴けたポジティヴで親しみやすいメロディーはしっかりと息づいていますが、弾けるような躍動感と疾走感は控えめで、小さ目な音量も相まってちょっとこざっぱりしすぎな印象がありました。
しかしHELLOWEENはシンプルなメロディックパワーメタルだけではない、様々なスタイルをポップに聴かせてくれるバンド。彼らに期待されるメロディーラインをしかとキープしたうえで、スピード一辺倒にならずにバラエティに富んだ楽曲が収録されている本作は、実にHELLOWEENらしいと言えるのではないでしょうか。
オープニングとしてはやや地味目ながら、重厚なリフとどこか耳に残りやすいサビが特徴なM1「Heroes」で幕を開け、"Happy, Happy, HELLOWEEN"に相応しい明るいリードギターでスタートする、HELLOWEENらしいスピードチューンのM2「Battle's Won」、ポップかつスケールの大きなサビメロがフックとなるM3「My God-Given Right」という、本作を象徴する2連発でしっかりとリスナーを引き込んでくれるのが強い。
中盤はメロスピ/メロパワ風味を落とし、アンディの歌メロのセンスを押し出した、憂いのあるメロディックメタルチューンでテンションを落とさずに進み、劇的な盛り上がりを見せる疾走ナンバーのM9「Creatures In Heaven」、HELLOWEENの奇妙なコミカルさが表出したM10「If God Loves Rock 'n' Roll」、M9にも負けないほどの叙情メロディーで盛り上げるアップテンポのM11「Living On The Edge」、最も馬力と勢いに満ちた疾走パワーメタルM12「Claws」と続く。この4曲の流れが強烈で、一番のハイライトとなっていますね。
アルバム全体として前作ほどのメロスピらしさを抑えて、どこか正統派HR/HMの雰囲気に近づいた印象がありますが、これぞHELLOWEENと言いたくなる叙情的なメロディーはバッチリと健在の良作です。国内盤ボートラを入れれば16曲入り1時間以上というボリュームになりますが、そこまでダレを覚えずに聴き通せるのも、彼らの作曲能力がしかと発揮された証拠だと思います。
個人的に本作は
"過度なスピードや弾けっぷりを抑えつつ、Happy, Happy HELLOWEEN流メロディックメタルを取りそろえた良作"
という感じです。
HELLOWEEN - Battle's Won (OFFICIAL TRACK AND LYRIC VIDEO)