- いかがわしく、泥臭くも魅力的なガレージロック
- ヴォーカルと演奏の変わらない刺激的なカッコよさ
- 爽やかなキャッチーさは少~しだけ減退?
軽い歪みのダンスロックや、SNS映えしやすい曲が幅を利かせる現在の日本の音楽シーンにおいて、古き良き日本のロックンロールを現代に伝えるバンドとして、個人的にかなり注目している存在です。
前作『時の肋骨』はTHEE MICHELLE GUN ELEPHANTに通じる泥臭く骨太な日本的ロックサウンドに、耳を引くキャッチーなメロディーをバランスよく織り交ぜた強烈な作品で、2018年の年間ベストにも選出しました。
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そこから2年の期間を経て、シングルとセルフアコースティックカバーアルバムを挟み、去年の年末にリリースされた3rdフルアルバム。前作フルに続き、合間に発表されたシングル曲がアルバムに収録されないという、売れ線を狙わない姿勢が実に頼もしいですね!
インディーズから一貫して自身のスタイルを崩さない彼らの事、当然ながら本作においてもTHE PINBALLSらしい泥臭いロックンロールは全く変わらず。変に小綺麗にまとまることもなく、チャラくなることもなく、熱く直球でカッコいい。
古川さんによるヴォーカルは、ハードな楽曲ではうさん臭さや荒さを放ち、ソフトな楽曲では柔らかに歌い上げ、それでいて独特なハスキーさは全曲共通と、相変わらず魅力的な歌を披露。このロックンロールなサウンドの親和性が非常に高いことが改めてわかります。
バンドサウンドに関しては、少し音の分離が悪いというか、ややゴチャついている感があって綺麗とは言い難く、特にリードギターの音はちょっと聴きとりにくく感じました。が、変に行儀良くなり、軽くて綺麗になってしまうよりは遥かに良いことは言うまでもありませんね。この豪快な演奏もまたロックならではの美点です。
ただ前作で僕のハートをガッチリと掴んだメロディーのキャッチーさは、多少弱くなったかな?というのが第一印象でした。先行公開されたM2「ニードルノット」が、前作のリードトラックと比べて、ちょっと鬱屈として不愛想な感じ(決して悪いことではないが)だったのも原因でしょうか。なんだかんだ前作は結構爽快な印象も強かったですし。
とはいえもちろん楽曲のクオリティーは依然として高いままです。M1「ミリオンダラーベイビー」は、過去の名曲「片目のウィリー」を彷彿とさせる、切なくも爽やかなメロディーと、エモ的な哀愁を持つサビが実に良い!
M1と同様にポップな中に胸締め付ける哀愁が効いたM4「放浪のマチルダ」、キレのあるカッティングリフと、リズミカルに弾むヴォーカルワークの聴き心地が良いM6「マーダーピールズ」、彼らの真骨頂である毒々しさとキャッチーさの混合具合が完璧に実現されたM9「ブロードウェイ」と、期待を裏切ることのないロックチューンが多数。
前作ほどの鮮烈なインパクトはなかったものの(僕が彼らの音に馴染んだというのもあるけれど)、相変わらず甘さのないジャパニーズロックンロールの秀曲ぞろいでした。
個人的に本作は
"適度に荒く骨太なバンドらしさを堅持した、安定のガレージロックサウンド。いかがわしくも聴きやすいなバンドの強みが活きている"
という感じです。
THE PINBALLS「ミリオンダラーベイビー (Million Dollar Baby)」Official Music Video
THE PINBALLS「ブロードウェイ (Broadway)」Official Music Video (テレビ東京 水ドラ25 「闇芝居(生)」オープニングテーマ)