現在はもう解散してしまっている、東京出身の4人組メタルコアバンドの最後の作品となってしまった3rdフルアルバム。
ヴォーカルのThorさんとギタリストのShimpeiさんは、現在はほぼ同ジャンルの楽曲をプレイするALPHOENIXを結成しており、フルアルバムも発表済み。まあこちらも今どれだけ活発に動けているかはわかりませんが...
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なお彼らのことをメタルコアバンドと書きましたが、音を聴いてみるとメロディックデスメタルとしての要素も多分に含んでいるバンドであることがわかると思います。音作りだけ聴くとメタルコアっぽいのですが、単純な力押しのメタルコアにはない、メロデスとしての音楽的な美点が備わっているのです。
彼らの最大の武器と言えるのが、歌謡曲にも影響を受けたという哀愁に満ちたクサいリードギターのメロディー。この日本的な哀愁が、ヴォーカル裏やギターソロのパートでバンバンと繰り出される。
メロデスらしさはあくまでリードギターのみで、リフは正統派寄りの重厚さがあり、メロデス由来の慟哭はあまりない。ヘヴィなビートダウンが顔を出すところも、メタルコアらしいと感じられるところですね。メロデスファンにとってはメタルコアの要素はどう映るかはわかりませんが、少なくとも個人的には楽曲の骨格が強い印象になっているので、まったくマイナスにはなりません。
また日本的なエッセンスを出す工夫は、メロディーだけでなく歌詞の面でも表れており、ヴォーカルパートは基本的に日本語詞。「野蛮さを感じさせるような喚き散らすタイプのデスヴォイスで、日本語詞を割とハッキリ聴きとりやすく歌う」というスタイルはなかなか他になく、これに違和感を覚えてしまう人はいるかもしれませんね...。
しかしそんなワイルドなデスヴォイスに反して、クリーンヴォイスはメッチャ爽やかなのも特徴の一つ。唐突にこんなクリアな声が飛び出すもんですから、かなり印象強い。こちらはこちらで、ちょっと青臭すぎて受け付けないという人も多いかも。僕は好きだけど。
本作はそんな彼らの個性がシンプルかつ100%に示されたアルバム。無駄な装飾を施さないヘヴィリフ主体のメタルコアサウンド、サビにあたる箇所で強烈に泣きまくるリードギターが合体した、一点の曇りもないMYPROOF流メタル。男らしく硬派で、たくましいのに泣ける。
RPGゲームのような勇壮さを見せるイントロから開始するM2「Earthbound」は、実質アルバムのオープニングながら、疾走はせずどっしりとしたリフで進むミドルテンポメタルコア。リフ自体のカッコよさもさることながら、やはりヴォーカルの裏で咽び泣くリードギターがたまらん。
キレのあるリフで疾走し、さらにスケールを増し飛翔感を生み出すリードギターの旋律が哀しく美しいM4「The Guidance」、メロディアスな正統派リフで進み、珍しく速弾きを駆使したギターソロが飛び出すも、その後のリードフレーズは相変わらずクサいM7「Limited Reality」、疾走部のギターリフの突進力、クリーンによる爽やかなサビ、さらにメロディアスさを増したツインリードが一緒くたになったM9「Sepia Wind」など、武骨さと泣きの折衷具合が見事な楽曲に溢れています。
そしてラストを飾るM11「Lightning Storm」は、まさにこのバンドを象徴するかのようなキラーチューン。緊迫感あるギターフレーズで幕を開け、その緊張を保ったまま、重厚なヴォーカルパートへ。そしてサビにて繰り広げられるリードギターのドラマチックな泣きの旋律!ビートダウンから切り込まれ、歌謡的な泣きをとめどなく発散するギターソロ!スローテンポになりクライマックスらしい劇的さを演出するアウトロ!これぞ本作一の名曲です!
デスヴォイスによる日本語や、爽やかすぎるクリーンヴォイスなど、やや聴き手を選ぶ要素があるのは確かですが、武骨で硬派なリフで攻め立てるストロングスタイルのメタルコアは、単純に音作りだけでカッコいい。そして全曲に注入されたドラマチックなリードギターは素晴らしいの一言。メタルに泣きを求める人は是非。
個人的に本作は
"強固でたくましいサウンドに、歌謡曲に通じるメロディアスなギターを堂々とブチ込んだ、日本ならではのクサメタルコア"
という感じです。
MYPROOF "Lost Destination" Official Video